from 2016-03-20


木工 自作 工作 手作り

自作糸鋸盤、その2


糸鋸盤をいつまでも中途半端にしておけないので、少し本気を出して、糸鋸盤を完成させることにしました。

今のところ、最後に作った物が一番振動も少なく、ストロークも大きく、さらにブレードが前後に動くなどの欠点もなく一番使いやすいのですが、どう調節してもブレードが頻繁に切れるのが直りませんでした。

これについては、原因は今では突き止めたつもりですが、要するにアームや機械全体の剛性が足りず、完全に上下が同期して動くのが却って禍して、時にブレードに異常な張力がかかる為だと思っています。まあ、ブレードをスプリングで支える等をすれば多少良くなりますが、するとこの方式の長所が急速に失われるようです。解決策は結局アームの剛性を高める事に尽きるようです。


この機械を根本的に直すのは時間がかかりそうで、しかし糸鋸盤は必要なので、とりあえず、以前に作っていたパラレルアーム式を作り直そうと考え、ばらして置いた部品をいくつかの改良を加えた上で組み立ててみました。しかし、前以上にとんでもない振動で到底使い物になりません。ブレードが前後に動くのは構造上やむを得ないとして、左右にもぶれるのです。

下記が今回作った糸鋸盤です。この方式、すなわちパラレルアーム式の糸鋸盤は、作りやすさもあって、自作している人の殆どがこの方式です。shop made scroll saw, homemade scroll saw 等でググると、youtubeなどでは沢山ヒットします。殆どがこの方式であり、しかもそれぞれ全くスムースに動いています。むろん成功した陰には沢山の失敗もあり、それが動画には出てこないのでしょうが、それにしても私の作った物はひどすぎるし、到底使い物になりません。




実際に動かしてみましたが、全く駄目です。

これについてはいくつか原因がはっきりしているので、これらを改良することにしました。

まず、この糸鋸盤の構造をご覧下さい。



今回の問題の原因と対策は:

1) モーターが速すぎる。今回は糸鋸盤の本体だけ作り、それを工作台にボルトで木製万力を取り付けるボルト穴に固定して、モーターユニットは木工旋盤で使っている物を流用します。あり合わせのプーリーを使ったので、そのプーリーが小さすぎ、結果としてアーム、つまりブレードの上下運動が速すぎます。そこで、プーリーを大きくします。

2) ブレードのストロークが大きすぎる。アームをクランクシャフトで上下運動させていますが、クランクの回転半径が大きすぎました。そこで、これをおよそ半分にします。

3) アームにシャフトを通し、クランクアームで動かしていますが、このシャフト穴がちょっと大きすぎたためにがたが生じているようです。此処を単なる穴ではなくアーム側でベアリングで支え、シャフトはアームに固定するようにします。

4) クランクアームとクランクシャフトの連結部が唯の穴で此処でもがたができています。此処をベアリングに替えます。

5) クランクシャフトも唯の穴に通してプーリーで駆動していましたが、此処もきちんとベアリングに替えます。

6) クランクシャフト、クランクアーム、クランクピンなどは全て完全に平行でなくてはなりませんが、此処が狂っているようです。これは元々それらを加工したボール盤が安物で、力をかけるとワーク台がたわむような代物だからです。此処を工夫して必要な軸受け穴が完全に平行になるようにします。

7) クランクシャフトスタンドのアームに対しての位置が狂っていて、上記の狂いを拡大しているようです。クランクシャフトスタンドの上下、前後、左右の平行度を精密に調整できる様にして必要な平行度を確保します。





改良した糸鋸盤です。あまり見かけは変わっていませんが、劇的に振動が無くなり、これなら十分に使えそうです。下記の動画でも分かるように、きちんと切れます。



具体的な改良点は、上記の全部ですが、プーリーをほぼ2倍の大きさにして、回転数を半分にし、ブレードのストロークをほぼ3分の2にし、クランクシャフトスタンドの軸受け部が単なる穴だったのを、ベアリング支持方式にしガタがない状態にしました。更にクランクアームが木製だったのを鉄にしてゆるみが生じないようにしました。クランクアームとクランクシャフトの連結部にはこれもベアリングを使い、此処もガタの無いようにして、クランクピンにはベアリングを使いませんでした。

あとは、クランクシャフトスタンドを頑丈で厚いものにし、しっかりとベースに取り付け、面ぶれが出ないようにしました。

これらの結果、ブレードの横ぶれが無くなり、きちんと使えるようになりました。ただし、構造上大きなアームが2本高速で上下するのですから本質的な振動が無くなるわけではなく、やはりこの方式は使いにくい様です。

もし、改良するとすれば、ベースをもっと頑丈な物にして、さらにアームを支える柱や全体の構造をしっかりと頑丈にして、また工作台にきっちりと取り付けて使うようにした方がよいと思います。

各種自作動画では実に見事に使っていますが、私の物は、使えるけれど早く本格的な物を改良して使えるようにしたいと思う、その位のレベルです。




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