暁星山岳部のあゆみ 年代
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三ツ岳頂上
●夏山縦走を顧みて 1957年 泉可彦(部報より転載)
初秋の風が窓辺に吹き始めると、夏山のことがひとしお懐かしく感ぜられます。私が幾度となく暁星山岳会と共に歩いた夏山は、どれも限りない思い出で一杯ですが、そのすべてを述懐してみると、おそらく今年の夏山縦走は、その中でも質的に秀でていたものの一つであったと言う事は否めぬ事だと思います。私が初めて、あのブナ立尾根を登ったときは10時間あまりを費やし、然もブナ立尾根の途中でビバークのやむなきに至ったというのに反し、今夏山は6時間半という好タイムで踏破したと言うことは素晴らしいことでもあり、またその因となる以下のことがありました。
  1.5週間のトレーニング  2.前日の充分な休養
  3.団結力の強さ  4.雨が返って闘志を湧かせた
この他にも種々の要因があって成果を収めたのではありましょうが、兎も角、悪条件に好成績で烏帽子岳を踏破したことは喜ばねばなりません。4番目に挙げた雨のことは、今後のために付言しておかなければならない種々の問題を含んでいます。通常の山行において退却の時期というものは非常に難しいものです。進むことより、退くことの方が大きな勇気と決断が必要なのです。ブナ立尾根を登り始めて数時間後に降りだした時に、私はリーダーと会議をして踏破の決断をしましたが、それは次の理由によってなのです。
  イ.前日の休養で全員の健康状態が良好であった。
  ロ.樹林帯の危険の無いコースであった。
  ハ.非常用具が完備してあった。  ニ.充分な闘志が全員にあった。
もし、これらの一つでも欠けていたら、当然退却すべきで、進むことは危険です。烏帽子岳に出て尾根筋の冷たい風と激しい雨に濡れて設営した時、おそらく全ての諸君が、夏とはいえ山の天気は危険な要素を充分に含んでいることを熟知されたことと思います。今回の縦走は、初日より雨にたたられ、天候には決して恵まれなかったといえましょう。然し、そうした悪条件下の行動というものを学んだ事は、これから諸君が山を歩く上でとっても大きな教訓となったはずです。そうした意味において今回が、一概に恵まれなかった山行とは言えないでしょう。さらに、初めて北アに入った人たちにとって、今夏の縦走は非常に印象的な山行であったと思います。裏銀座といわれる烏帽子〜槍の縦走の景観は、おそらく生涯山を忘れ得ぬものとした事でしょう。どうか今後も、正しい山歩きを身に付けて、楽しい山行を続けていかれること望んでやみません。

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