1 回路図をもとにして,必要なパーツの割り出す

品名,型番と数値

回路図から必要な部品が読み取れるようになったと思いますが,実際パーツを購入するときには,品名,型番などが必要です。
真空管屋で,「『MJ無線と実験』何月号の佐久間アンプに使われている真空管をください」といっても相手にされないかもしれません。店の主人が親切で『MJ無線と実験』を見てくれたとしても,「RCAの5691はないが,フィリップス製ならあります」といわれるようなことがあります。このアンプの場合フィリップス製の5691でも使用可能なのでしょうか? 以下,そういった個々のパーツについて説明します。そして,そのあと,回路図4−1を見て,最終的に「具体的に」購入するパーツを決める作業に入ります。

パーツについて  

● 真空管

メーカー名と型番

真空管は,回路図の記号の上に,メーカー名と型番が表示されています。
ですので,801Aのイコライザーアンプには
RCA社製の5691が1本
RCA社製の42が1本
RCA社製の801Aが2本
RCA社製の83が一本必要であることがわかります。

型番がおなじで会社名が違うというのは,同じ設計図で複数の会社が作ったわけです。とうぜん,内部構造は一緒で電気特性も同じはずです。
じつは型番が同じでも,内部構造が全然違う真空管もありますし,電気特性も,まあ,同じかな?ということが多いですが,ここでは,何も考えずに差し換え可能,ぐらいにとっておいてください。
ですので,RCA5691もフィリップスの5691も電気特性は同じですので,差し換えが可能です。
では,なぜ単に5691と書かずにRCAと記載しているのかというと,電気特性は同じでも音色が異なるからです。
製作記事の中でアンプの音色についての記載もありますが,その音色はRCA社製の5691を使用した音ですよ,ということです。

同等管と高信頼管

同等管,高信頼管というものがあります。
同等管は,差し換えて使えます,という真空管のことです。
差し替え可能ですが,電極の作りなどが異なっていますので,当然,音色も違ってきます。
。 801Aの同等管でVT-62という真空管があります。もちろん差し換え可能ですが,先にも述べましたが音色はまるで別物です。
また,300Bと名の付けられた真空管がたくさん出回っていますが,ほとんどの場合WE300B との差し換えは不可能です。
名前の付け方に決まりはないようで,なんでもかんでも300Bと付ければ売れるだろうということではないでしょうか。
高信頼管は軍用などに作られた,簡単に言えば,ある真空管と同じ電気特性をもち,さらに丈夫でなかなか壊れない真空管のことです。
5691は6SL7という真空管の高信頼管です。一般に高信頼管は,その原型の真空管より音色がよくない,とされています。
もちろん,この801Aイコライザーアンプに,5691の代わりに6SL7をさしても問題ありません。

このように説明してくると,真空管アンプはどの真空管をさすのか,ずいぶんとややこしい,と思われるかも知れませんが,ひとつのアンプで,いろんな真空管の音色を楽しむこともできるわけです。電気特性が同じでも,真空管が違えば音色がまるで違うことが多々あります。真空管アンプのおもしろいところでもあり,奥の深いところでもあります。

ペア管

真空管をプッシュプルで使用する場合は,電気特性のそろった2本の真空管を使います。
特に,この801Aイコライザーアンプのように終段に801Aがプッシュプルで使われている場合は,正確にペアを選び出すか,DCバランス回路をつけないとハムが出やすいです。
しかし,現実には,ペア管を揃えることは,無理と考えた方がよいでしょう。
真空管屋によっては正確に測定して,ペアとして売っている良心的な店もごくまれにありますが,ペア管というのは,あくまで目安と考えてください。
また,使用しているうちに,特性がずれてくることもあります。 ペアを選ぶ際にロットナンバーなどにこだわる人もいますが,生産される事情を考えると,無意味なことです。
というのは,真空管は,製造は電極を作る職人,チューブに封印する職人など,数人の職人の手を経て1本の完成品が生まれます。続き番号でも特性はバラバラ,程度が同じくらいの意味しかありません。

新品と中古

真空管の製造は複数の職人による協同製作だと説明しました。ですので,最高の品というのは,その真空管に関わった人がすべてベストの仕事をした場合ですから,本数も少なくなります,だいたい100本作って,最高品は1〜2本,良品は10本程度,普通は,メーカーの基準にもよるでしょうが20〜30本くらいだそうです。
また,たとえ新品で売られていても,作られた当時は性能が社内規格などで不合格となって売られなかった真空管だった可能性もあるわけです。
さらに,最近生産されている真空管は選別が厳密ではない物も多いので,新しいのに古い真空管より壊れやすい,というケースもあります。

真空管は何本買えばよいのか

たいていのお店では真空管は2本セットで売られています。
プッシュプルの場合は2本の真空管の特性がそろったペアを購入したいのですが,ペアとして売られていても,たんに二本あわせてあるだけのことも多いようです。
真空管は,原理的にはテレビのブラウン管のようなものです。
真空管はすぐ切れる,というのは,昔の粗悪な真空管や真空管以外の部品の不具合で真空管が切れてしまったということから生じた,誤ったイメージです。現在のパーツを使って組み立てたアンプにさした真空管はそう滅多にきれるものではありません。買い占めても仕方がありません。
ただ真空管は寿命になると,高域が不足し始めるそうです。しかし,この高域が不足しはじめた真空管の音色が,柔らかいと表現され,高い値段になっていたりすることもあるので,なかなか不思議な世界です。
整流管の寿命は短いのですが,毎日聴いていても,数年ではへたらないでしょう。

偽ブランドにご注意を

新品と称して中古が売られていることはよくありますが,真空管には,偽ブランドも多いので要注意です。
オリジナルのメーカーの箱(元箱)の偽物を作る業者や刻印を打つ業者もいます。
私もRCAとプリントされたチャイナの845を持っています。偽ブランドですが,音は気に入っています。
偽物は,made in USAなどの文字が入っていない,本物とマイカ(電極をささえている透明な板)の形状異なるなどの点で見分けますが,本物を見ていないと中々難しいかもしれません。

佐久間アンプによく使われる真空管

5691

5691はRCAのものがベストです。ベースが赤いものを買ってください。シルバニアの5691も良い真空管です。
RCAの茶褐色のものは音のヌケが数段おちます。
フィリップス製はベースが黒色が違う色の物も存在するかもしれません。音の抜けと分解能は,RCA製の茶褐色より優れていますが,人によってはRCAのほうは音色に陰影があるというかもしれません。
RCAの赤ベースとフィリップスは,いずれも高性能ですので,音色の好みの問題だけです。

801A

801AはRCAの801Aを買ってください。 801Aはハムも出さず,とてもよい真空管です。しかし,最近は値段が高くなりすぎました。お金が余っている人以外は,買わない法が無難かもしれません。また,良品でも以外と短命なこともあります。

211,845

アメリカのRCAなどは高価になりました。チャイナや他の国で製造された新品で十分です。

300B

300Bと名の付く真空管は非常に多いようです。新製品も出ている反面,佐久間さんが使った真空管はすでに絶版になっているものもあります。
なお,電気的な特性はWE300Bとはまったく違うものが多く,WE300Bとの差し替えは不可能です。


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