はじめに

MJ『無線と実験』の写真で,佐久間アンプの配線をご覧になったことがある人はおわかりと思いますが,他の筆者やメーカー製のアンプの配線はきれいにまとめられているのに,佐久間さんの配線は,コードがのたうちまわって,どれがどの配線かもはっきりしないことに気づいていると思います。
これはトラブルをさける配線をおこなった結果で,けっしていい加減に配線しているわけではありません。
これから,順次,この見た目は悪いが,ノントラブルの佐久間流の配線の考えたかについて説明していきます。配線については,まず,概略を説明します。
次いで,佐久間アンプを製作をしたものの,ノイズに悩まされているアンプのレストアについて紹介します。これらの説明で,すべきこと,してはいけないことがわかると思います。
これらを理解していただけると,見た目に悪いと思っていた佐久間さんの配線が,みごとな力強い配線に見えてくると思います。
なお,高圧の配線方法については,別の章で説明をすることにします。

概略

佐久間アンプを作るうえで,絶対に守って欲しい点をあげていきます。

線はシャーシにくっつけて配線

配線コードはシャーシにくっつけるように,また,ヒーター配線などはシャーシのすみをはわせるように配線します。 しかし,イコライザー素子は,シャーシのなかで,立ち上げるように配線します。

最短距離で配線

どの配線も最短距離で配線するのが原則です。配線は綺麗にと言って,束ねたりしているアンプもありますが,佐久間アンプは,最短距離で配線を行います。
特にTKSやSTU-001のように,100KΩのインペーダンスと持っているトランスの2次側が最短でグリッドと接続することが重要です。

近づけてもよい線と悪い線

どの配線も最短距離で配線しますが,他の配線と近づけてはいけない配線があります。最短距離での配線がベストですが,近づけてはいけない線からは離さないといけないので,わざと遠回りの配線をしなくてはいけないこともあります。
たとえば,信号が流れる配線コードとヒーターの交流点火の配線コードがくっついたときには,スピーカーから強烈なノイズがでる場合があります。
ですので,配線をするには,まず,近づけてはいけない線を知る必要があります。そして,どちらの線を最短で配線し,どちらの線を遠回りで配線するか,という優先順位も知っておかなくてはいけません。

近づけてはいけない線を理解するために,アンプの中の配線を,いくつかに分けて考えます。

まず,信号が流れる配線と電源が流れる配線のふたつはすでに説明をしています。この二つは近づけてはいけません。

このほかにも,流れている電流の性質から三種類に分類して考えます。

・DC(直流)が流れる配線
・AC(交流)(DCでない電流)が流れる配線
・高圧(1000V以上)の交流が流れる配線

この3種類の線は別の種類の線と近づけてはいけません。それぞれの配線の注意点は次のようになります。

交流が流れる線はよくねじって配線する。 交流が流れる線と,直流が流れている線とは極力離す。

交流が流れる線とは

1)100V電源線
2)電源トランスからヒューズボックス,電源スイッチまで配線
3)電源トランスから整流管までの配線
4)直熱管のヒーターの整流用ダイオードまでの線
5)真空管の交流点火のヒーター
6)出力トランスからスピーカー端子までの配線

などです。
1)から5)までの線は,信号が流れる線からは,できるだけ遠ざけ,捻って配線することが必要です。

1)から4)は電源の配線ですので,アンプのすみの方にまとまるはずです。
100V電源線も電源トランスからヒューズボックス,電源スイッチまでの間はよくねじってください。

4)と5)はアンプのヒーター配線はシャーシのすみをはわすことで,他の線への影響を減らすことができます。
4)の真空管の交流点火のヒーターや整流用ダイオードまでの配線は適度にねじってください。ねじることでハムが減ります。
ただし,整流管のヒーターの線はねじらないほうがよい場合があります。
高電圧を整流するような場合は,電源トランスから整流管へのヒーター配線はねじってはいけません。

6)のアウトトランスからスピーカー端子までの配線ははどこを通そうがまったく関係がありません。インピーダンスが低いからです。
実際のアンプでは,最後に配線することになります。この配線はすでにスピーカーケーブルになっていますので,極端な話,アンプのそこから垂れ下がっていでもまったく問題ありません。
出力トランスから出力トランスまで,浮かして配線してください。途中,アース母線を横切るはずですので,アース母線に結束バンドなどで止めてください。


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