個々の配線の注意点

トランスの配線

トランスは端子同士の結線を変えることで,違うインピーダンスを得ることができます。
結線の仕方には,直列(シリーズ)と並列(パラレル)の二種類があります。

TN-6を例に説明します。

TN-6のケースには,下図のような図が書かれています。

もし,トランスのケースにこのような図が描かれていなければ,カタログやDHのホームページで調べてください。
電源トランスや出力トランス,新しいドライバートランスなどは,端子の近くに値が書かれています。

図Aを見ると,TN-6は1次側が600Ωですが,これは,1-3の巻線と3-4の巻線を直列に繋げば,600Ωになるといい意味です。
つまり,1-3の巻線のインピーダンスは300Ω,3-4の巻線のインピーダンスも300Ωということです。
第6章のオームの法則で説明したとおり,300+300=600と計算できます。また,300Ωと300Ωを並列に繋げば150Ωになります。

2次側は20KΩとなっています。5-6の巻線のインピーダンスは10KΩ,7-8の巻線のインピーダンスも10KΩということです。
なお,TN-6の場合1次側の300Ωだけを使用する,あるいは,2次側の20KΩの10KΩだけを使用する,という使い方は出来ません。つまり,TN-6を600Ω:10KΩのトランスの代用として使用することは出来ません。TN-6だけでなく,ほとんどのトランスは,このような一部の巻き線のみを使用するということはできません。注意してください。

図ーBは,左が回路図で,1次側が直列接続,2次側が並列接続の例です。
図ーBの右側が実際の配線方法になります。
並列にする場合は,ひとつの端子に線が2本同時に接続する必要があります。 うまくハンダ付けできないようでしたら,二つの線をよじってからいっしょにハンダ付けしてもかまいません。
なお,TN-6のE端子は,ピン状のものですから,前に説明したように,そのままにして配線などはおこないません。

グリッドの配線

入力トランスやドライバートランスから真空管のグリッドまでの配線は最短距離で配線します。そして,他の全ての配線は,このグリッド配線から少しでも遠ざけるように配線します。
真空管はグリッドの信号を増幅して,プレートから出力します。ですので,グリッドが他の線から影響を受けてノイズが乗ってしまうと真空管はそのノイズも何倍にも増幅してしまいます。
トラブルをさけるためには,グリッドの配線を最短でおこない,他の配線を極力グリッドの配線から遠ざけることです。 佐久間さんの配線では,ほとんどのアンプのグリッドの配線は3センチから7センチ位の間に収まっています。
佐久間アンプの配線は一見,ごちゃごちゃですが,グリッドとイコライザー素子のまわりだけは広場のようにスペースが空いています。

実際の配線では,グリッドの配線を他の配線からは遠ざけるために,アンプの配線の最初にグリッドの配線をおこないます。他の線はこのグリッドの配線から遠ざけて配線します。

グリッドの配線の例を見てみましょう。 下図はRCA50シングルアンプのグリッドです。

STU-5Kの2次側は10KΩ4-5を繋いで使用します。このような,配線はトランスをシャーシに付ける前に終えておくことも可能です。また,4-5を繋ぐ配線は,最短である必要はありません。
しかし,端子3とグリッドを結ぶ線は,最短である必要があります。この配線はシャーシにははわせるようにしてください。あまりぴんぴんに配線すると気温の変化で配線コードの長さが変化した場合はたいへんです。
なお,グリッドの配線はシャーシから浮かせて配線する,と書いた本もありますが,佐久間アンプではシャーシにはわせています。
くどいほど説明しますが,この配線には,他のいかなる線も近づけてはいけません!

図中の小さな回路図のグレーになった部分の面積が小さくなるように配線すると雑音の少ないアンプができるとされていますが,佐久間アンプでは,どの程度差があるかは,不明です。また,アース母線によって,この面積は非常に大きくなってしまいますので,気にしなくてもかまいません。
6番の端子とグリッド抵抗はアース母線に繋がります。図ではわかりやすいようにアース母線を離して描いていますが,実際のアース母線は,ドライバートランスすぐ上あたりに張ることが多いと思います。

実際の配線では,ハンダ付けの順番にも工夫が必要です。
グリッドの配線ですが,ソケットの方へのハンダ付けとトランスの方へのハンダ付けはどちらを先にする方が良いでしょうか。
500KΩの抵抗と配線コードがソケットに付くので,もしかしたら,うまくハンダ付けできずやり直しになる可能性が高いのでソケットのほうを先にやってしまいましょう。
失敗してやり直しているうちに,コードが焦げたり,熱で溶けてしまったら,その部分を切って捨てて,新しく剥いてください。
真空管側が無事に付けられたら,トランスの5ピンまでのばし,適当な長さに,ニッパで切ってください。

グリッド抵抗

グリッド抵抗は,真空管の動作を安定させるために,できる限り真空管に近いほうに取り付けてください。
抵抗のリード線もソケットにつくほうは短い方がよいとされていますが,佐久間アンプの場合は,グリッド抵抗の値も一般的なアンプとことなりますし,ほとんどの真空管はトランスでドライブされていますので,神経質にならなくてもけっこうです。一般的にそのようにされている,ということだけ覚えて置いてください。
トランスとソケットの間が5センチくらいなら,トランス側に付けても問題はないでしょう。
なお,佐久間アンプはグリッド抵抗なしでも,問題なく動作しますので,付け忘れていても分からないので,注意が必要です。

イコライザー素子

イコライザーアンプの場合はイコライザー素子を取り付ける場所を広くとって,他の配線,トランスから遠ざけてください。実際の配線では,イコライザー素子はアース母線を貼った後で取り付けるので,グリッド配線のように最初にハンダ付けすることができません。「ここはイコライザーの広場」とイメージしながら,イコライザー素子が設置される場所を避けて他の配線をおこなってください。

下図はイコライザー素子の配線の様子です。コンデンサーと抵抗がたよりなくシャシーからアース母線まで立ちあげて配線します。
完成後,抵抗とコンデンサーの位置を調整して,ノイズが一番小さくなるところを探します。
写真も参考にしてください。なお,この写真のアンプでは,30KΩの抵抗の変わりにVL208を使用しています。

ソケットへとヒーター配線

RCA-50のソケットは,ヒーターがシャーシの前面に向かうように取り付けています。ヒーターの配線をする場合,交流点火なら,電源トランスからの配線は,よく捻りながらシャーシのすみをはわしながらソケットへハンダ付けしてください。
また,AC点火,DC点火とも,ソケットのグリッドに近い方の端子には,ヒーターの0V側をハンダ付けしてください。

トランスのE端子

前にも書きましたが,ドライバー,アウトトランスとも,「E端子」がついているので,圧着端子やラグ板を使ってシャーシに落としてください。


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