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XPS対策にフィルムを採用する場合の注意


 
XPS等の光線過敏症障害は、非常に珍しい障害で個人差もかなりあります。
 専門的な解説は、皮膚科の専門医などにお任せしたいと思いますが、フィルムの選定については、私達専門家の方が、その特性について熟知していますので、医師に相談しても適切な回答は得られにくいでしょう。

 窓用フィルムは、大きく3種類に分けられます。

 1. 透明な無着色フィルム

 透明フィルムは、基本的に可視光線のほとんどを透過します。 このためXPSの患者さんの保護対策として使用するには、その患者さんが、波長が短く紫外線に近い性質をもつ可視光線に影響されないかを確かめないといけません。
 設備の整った医療機関にかかっている場合は、本人がどの波長まで許容されるかを教えてもらっていますが、そうでない場合は情報をもっていないケースも考えられます。 そのため、安易にメーカーの「UVカット」の宣伝を真に受けて採用すると、とんでもない事態を引き起こしかねません。

 2. 染色加工を施した着色フィルム

 染色フィルムは、濃度が35%程度あれば、可視光線の短波長域は確実にカットしますが、数年でいわゆる「色飛び」を起こして、徐々にその性能が変化します。

 3. 金属皮膜を持つ高機能フィルムや染色とのハイブリッドフィルム

 高機能フィルムは、ナノメートルの厚さの金属皮膜をもち、可視光線の一部を反射・吸収させて遮断します。 また、この金属皮膜は、ソーラーガードの場合、二層のフィルムの間にサンドイッチされていて、粘着剤などの酸による影響を受けない構造になっているため、長期にわたってその性能を維持できます。
 コスト的には割高ですが、長期的に見ればトータルコストでは決して高いものではなく、このような用途には最も適しています。

 例えば、米国のXPSクライアント専用の送迎バスの場合、可視光線透過率6%のハイブリッドチタニウムという高機能フィルムが採用されています。 このフィルムは外観的には真っ黒になってしまいますが、僅かな可視光線にも影響される患者まで全てのケースに対応するためには、この濃度が必要なのです。

 しかし、日本の公共施設などで、このような濃色フィルムを採用するのは、一般利用者との共存という観点から抵抗があると考えられます。 また、内部の照明にも配慮が必要で、開放された施設で完全に対応することは難しいでしょう。
  幸運なことに、最近のXPS患者の皆さんは、知識もかなりあり、自己防衛の方法も心得ているので、フィルム施工は施設をより快適に利用してもらうための補助的な位置付けでの採用でも効果をあげることが可能です。 ただし、この場合に過度の期待で利用者が間違った判断をしないよう、データなどの情報をきちんと公開することが重要なファクターになります。

 選定に際しては、

 1. 健康なのだが単に「肌が弱く紫外線をさけたい」人と、XPSの人を混同しないこと。
 → こういう人は、各自の判断でサンスクリーンなどのローションで肌を保護すればよく、積極的な投資は無用。

 2. XPSの人は、短時間でも紫外線に被曝すれば重大な影響を受けるため、フィルムを施工して保護したい場合は、単なる紫外線カットではなく、可視光線の短波長域もカットしなければならない。 当然、僅かな隙間から差し込む光にも影響され透明なフィルムでは保護の目的を達成できません。

 3. ニュートラルカラーやハイブリッドタイプで金属皮膜をもつフィルムは、強力に太陽光線をカットします。 視界も良いので、内部からの景観を犠牲にせず、紫外線や有害な可視光線の一部を遮断できます。 当然、濃度の濃いものほど性能は良くなります。
 きちんとしたメーカーなら、フィルムのスペクトル分光特性をお知らせできますので、施設の条件や施工しようとしているガラスの種類などを伝えて、得られる環境条件を知った上で、その情報を利用者に公開するのが、もっとも安全で利用者も安心できる方法です。

 4. 施工依頼をされる場合、その目的と耐用年数をはっきりと業者に伝え、例えば小さな隙間も許されないケースや要求する耐用年数など、仕様をきちんと文書化して契約することをお勧めします。

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