■ MaSaNa's OUT DRIVER ■
『加波山林道・北筑波稜線林道・裏筑波林道』
 その日、学園都市のゼロヨンを見ようと学園都市に向かった僕達だったが、ゼロヨンが
始まるまでにはまだ時間があるようなので、地図を見て加波山を越える山道に行ってみる
事にした。89年の12月30日の事である。その年の夏、沼津で4WD に魅せられて年末にジム
ニーを購入したばかりだったがその日は弟のジェミニZZ/Rによるドライブだった。それが
あんなに困難なものになるなんて誰が想像しただろう?
  筑波鉄道廃線跡に沿った県道を北上して行って長岡の集落を右折して山に入って行った
。道は集落の間を蛇行しながら、どんどん高度を上げていく。道なりに進んで行くとやが
て舗装が切れ、ダートに変わる。雨があがって間もないので所々に水溜まりが残っている
。しばらく上っていくと正面にブルドーザが見えて来た。どうも石切り場らしい。道は石
切りば手前を左に上がっていく。さらに登ると左に作業小屋があって広場のようになって
いた。車を下りて懐中電灯で道を捜す。広場の正面に道は続いていた。それはガレ場続き
の登山道で車が走れるような道ではなかった。いつの間にか幹線をはずれて加波山山頂へ
の登山道口に向かっていたようだった。Uターンしてしばらく戻るとさっきは余り気にも
止めなかったY字路が現れた。国有林の看板にある地図を見るともう一方の道が山を越え
て行く道らしい。なるほど、そっちの道の方がフラットダートで幅も広い。
 こちらの道もしばらく行くと幅が狭くなり、坂も急になって来た。いくつかのカーブを
越えたところでまたY字路が現れた。車を置いて歩いていって見ると右は作業場のようで
道自体は左に続いていた。道は粘土質の路面が直前の雨でヌタヌタになっているという状
態だった。左に曲がった直後、路面はヌタヌタになっていた。ここでアクセルを抜いたら
はまってしまうので斜めになりつつ路面のしまった部分を目指す。ハンドルを握る弟も必
至である。また車を置いて先の状況を見る為に歩き続ける。しばらくは普通の林道が続く
ようなので車を先に進める。林道はやがてT字路にぶつかった。右も左も上に向かってい
る。歩いて少しずつ行ってみたがどちらも狭いながらも先まで続いていそうな気配だった
。地図上のどこにいるのかはっきりしなかったが多分、左へ行くと加波山山頂、右へ行く
と目指す一本杉峠だろうという事で右の道に向かった。急な坂を上っていくと左側の視界
が開け夜景が広がった。きつい右カーブを上っていくとその先で流水による溝が林道を横
切っているのを見つけた。車をとめて溝の角を足で削る。溝に直角に突っ込むとカメにな
ってしまうので少し斜めに進入させる。僕とスケさんは車の最低地上高をかせぐ為、車を
おりたまま指示を出す方に回った。両側から迫る雑草の中を進んでいく。上りつめたとこ
ろで路面に埋めたセメント溝の横が雨水で掘れており道幅が半分程になっていた。左側を
いけば車の幅くらいはあるが懐中電灯で照らすとその先、左側に倒木がある。仕方なく僕
とスケさんはまた車を下りて木を片付ける。そろり、そろりとその場を通りぬけるとあと
は尾根沿いのなだらかな林道だった。しばらく走ると上り坂になり、上りつめた所で路面
は舗装に戻った。やがて一本杉のある交差点に出た。結局、1km程の距離に一時間もかか
ってしまった訳だ。南北に抜ける林道は北筑波稜線林道、今上ってきた道は一本杉を越え
て東側の広域農道フルーツラインへと続いている。北の山頂駐車場まで走った後、フルー
ツラインに向かい久し振りに自動販売機をみつけたところで一息ついた。
  この後、学園都市のゼロヨン会場に行ってから帰路についた。

 そして91年の 4月 7日、僕は再び加波山へと向かった。車はJIMNY からMUに変わった。
笠間から長岡を目指す。前回、行き止まりだった作業場へとまっすぐ進む。作業場の中を
通り過ぎて行く。今回は作業車がいたのでゆっくりと横を通り過ぎていくと最後に急な坂
があって、そこを上りきるとT字路にぶつかった。前回より林道が延長されたのだろうか
?左への道は登山道レベルの道だったので右折して作業場の土手を回りこむように坂を下
りていった。しばらく下りるとまた、別のT字路に出た。これは前回、どちらに行ったら
よいか迷ったT字路だった。直進すれば一本杉峠、右折すれば国有林の看板のあるY字路
に戻る事になる。
 とりあえず左折してY字路まで戻ってみた。前回はヌタヌタ路面に苦労したが、今回は
デコボコは残っているものの楽勝であった。Y字路のところには白石トライアルコースな
るものがあってバイクを積んだバンが一台止まっていた。
 Uターンして山頂を目指す。上のT字路で地図を見ているとバババという音とともに数
台のオフバイクがやってきて、出会い頭の衝突をしそうになってしまった。対向車、飛び
出しの無い山中とはいえオフばやりの昨今、油断は禁物である。
 右折して、一本杉峠に向かう。道はダートだがmuにとってはどうという事はない。
 途中、前回は夜景が見えた場所と思われる作業場を見つけた。斜面に粘土質の赤土を投
機して作った作業場という感じで車を乗り入れるとゆっくりと沈み込んだ。車は手前の方
において写真を撮るためにガケっぷちまで歩いて行ってみたが、泥でどろどろになってし
まった。それでも真壁方面の風景を眺める事ができた。
 さらに上りつづけると間もなく一本杉峠に出た。前回は一時間程かけ登ったところだが
今回も雨上がりだったとはいえ4WDで昼間だったという事もあり、特に問題なく上って
しまった。まぁ、4WDで簡単に上ってしまうというのは面白くない。2WDでドライビ
ングテクを駆使しながら上っていくのが楽しいというのも一理あるが、一人で山中に入る
場合リスクの少ない4WDで上る方が得策であろうと思う。また、4WDとはいっても、
実際に4WDを使うのは緊急時のみで、例え林道であろうと通常は2WDで走っている。
むしろ最低地上高が高いという点が有利なのである。
4WDに乗るようになってから景色を見る余裕が出来、ちょっとしたガレ場に入っていく
事も可能になったせいか林道走行は極力、昼間に行くようになった。
一本杉峠から加波山山頂に向かう。加波山山頂登山口の一端に林道が口を開いていた。ほ
とんど廃道化している。ちょっと先には道路全体を覆うような水溜まりが出来ている。こ
こはさすがに遠慮した。登山口から先、地図上では北筑波稜線林道は岩瀬町の方へ伸びて
いる様に書いてあるが、途中工事中になっておりUターンしてきた。
 加波山より北の行き止まり地点までの林道は全面砂利が入っており、工事中になってい
たので舗装化されるのは時間の問題だろう。この後、北筑波稜線林道の一本杉峠より南側
、すなわち筑波山方面にも行ってみたが全面舗装化を終了している上、あちこちにハイキ
ング者用の看板が立っていたのでそれ以上進むのをやめUターンして一本杉峠からフルー
ツラインにむけて下りた。

 山岳ドライブ好きにとってハイキング者というのはつきあいにくい存在だ。林道での擦
れ違いではどうしてもハイキング者側が道旗に足をとめ、車をやり過ごさなくてはいけな
いし、また通り過ぎていく車のあげるホコリにも抗議すべく手がない。したがって山中を
ドライブ中にハイキング者に出会うと極力スピードを落とし、会釈するように心掛けてい
るがそれでもハイキング者には後ろめたい思いを避け得ない。
 89年5月の事だ。僕と弟は譲り受けて間もない117クーペでドライブに出掛けた。当
初は筑波サーキットで開かれているレースを見に行く予定だったが出発が遅れた事もあっ
て単に筑波周辺のドライブをする事に変えた。
 50号からフルーツラインに入り、筑波山北側の県道から風返峠にアクセスする。ここ
は何回か初日の出を見にいった所であり、見晴らしがよい。有料の山頂駐車場方面へはい
かず、県道を逆戻りしたところで筑波山YHの看板に従って狭い山道に左折した。
 ここからYHまでは狭いながらも全面舗装であり、じきYHの下に出た。そのまま道な
りにいけば筑波山の北斜面を回り込んで筑波山の西側におりるのだがウロウロしているう
ちにYHの駐車場の奥に林道が伸びているのを見つけ、行ってみる事にした。
 この道はダート路だった。あちこちの路面が雨水で削られて溝が出来ている。場所によ
っては僕が下りて誘導などしつつ進んだ。しばらく進むとカーブの先に2〜3人のハイキ
ング姿のおばさんの姿が見えた。まぁ、タイヤの跡もほとんど無かったし、こんな所を通
るのはハイカーくらいのものだろうと納得しつつカーブをゆっくりと回りこんだ。
 弟はあわててブレーキを踏んだ。何しろカーブを回りこんだ先には、いかにも地元子供
会ハイキング大会御一行という感じの団体が道路全体を広場よろしくアチコチに分かれて
お弁当タイムしていたのである。当然、車が通る場所などないし、あちらは何でこんなと
ころに車が入って来るの?といった態でこちらをみている。それでもしぶしぶ中央付近の
人達が場所をあけてくれたのでそろりそろりと通り抜けるがあちらはお弁当箱を開けたま
まなのでホコリひとつたてただけでもにらまれそうな安配だ。
 目が会う人毎に会釈をしつつ、その場を通りすぎるとあとはほこりが届かなくなるまで
ゆっくり走って後は一気にふもとの集落まで走り抜けた。
 おそらく、林道で弁当を食べていた集団の方が非常識なのだろうが、日頃ああいった林
道を車で走る機会のない人間にとってはああいった道で車に出会うという事を予想だにし
なかったのであろう。
 最近は4WDを非難する声も多いようだが、4WDというレジャーを認知しないまま、
非難している声が多いのではなかろうかと不安である。

以上

[OutDriver]