■ MaSaNa's OUT DRIVER ■
天竜スーパー林道              1990.09.02 writes 
  JIMNY を買ってからというものあまり遠乗りもしていない。そろそろあの特異な乗り心
地やハンドリングにもなれてきたしちょっと遠くへ行ってみようかと計画した。
  当初は浜松から天竜スーパー林道を経て白山スーパー林道をぬけて日本海を北上し・・
という壮大な計画だったが・・・

7/26
   7月26日、目覚めるとすでに8 時を過ぎていた。早朝にJIMNY で沼津に向かい、仕事を
終えてから出発しようという予定は既に崩れてしまっていた。今日はそう重要な試験作業
もないので沼津はパスして旅行に出る事に決めてしまった。沼津工場にいる先輩にTEL し
て用意を済ませると時計はもう10:48 だった。JIMNY のトリップメータは 59912.5km。
  満タンで綱島を出発した。R246を使いまずは沼津を目指す。午後1 時半に山北のヤマサ
キについた。昼飯のイナリ寿司と軍手を手にいれる。ここの広い駐車場でオイルを入れ、
幌をはずした。OPENはいいというが実際にOPENに出来る時間なんて実に限られている。
雨はもちろんのこと炎天下の渋滞、肌寒い夕暮れ以降、ホコリのたつ未舗装路などでの苦
痛を考えると幌を外せるチャンスというのは地方の国道で雲一つない青空で10時から4 時
位の間でしかない。実際この時も小山から御殿場に登る坂道の途中で段々雲行きが怪しく
なり通り雨にやられてしまった。幌をつけるのも面倒なのでウインドブレーカーと帽子で
走りきったがシートや地図は濡れてしまった。
  御殿場でトリップは60000 kmを越えた。
  沼津市街に入ったのは3 時過ぎだった。いつものBOOKS 吉野屋でトイレをかりる。丁度
G.BENFORD の光の潮流( 上下巻) が出ていたので買った。
沼津港から千本浜へ抜け旧道から国道一号線をくぐりしばらく走って踏切を越えた交差点
を左折した。去年何度かきた田子の浦だ。田子の浦から富士川河口へとつづく堤防に登り
砂浜におりた。去年GEMINIで苦労した辺りをJIMNY は4WD で楽々と走りきってしまう。
  途中まっさらの砂地を見つけのりいれたがまるで砂を掻くようにして前に進んでしまう
。2WD に戻すと前が埋まって動かなくなる。最初は面白かったが段々飽きてきて砂浜をも
っと河口の方に向かって走ったがどこまでも同じような砂利道が続いているばかりなので
Uターンする事にした。
  新富士バイパスをぬけ清水バイパスをぬけ静岡駅前で6 時になった。ここから国道一号
を離れ海ぞいのR150を行く事にする。・・・というのも静岡ー浜松間の国道一号は山肌を
切り通したバイパスが多くお金がかかる上JIMNY ではハイペースなトラックの群れについ
ていけないからだ。R150は多少遠回りだが気が楽だ。
  R150は焼津までは新日本坂トンネルができたのであっという間。そこからしばらくはバ
イパスが未完成なため町中を走らなければならず多少渋滞気味。
  静波では夏祭りが始まろうとしていた。相良でいよいよ左手に海が広がった。すでに日
がおち水平線と夜空の区別もつかないが気分は格別だ。
  OPENのJIMNY は夜の風をまともに巻き込んで走る。
浜辺にサークルKを見つけた。特に空腹感はなかったが今までなくJIMNY を長距離運転し
たので体がしびれたような状態になっていた。体がスタミナを欲しがっていた。
  フライドチキンをかじりながら運転をつづける。寒くなりはじめたが幌はつけない。
ジャンパーと帽子で走りつづける。
  御前崎は以前きたのでパスし、R150を西へ向かう。
  R150は途中で右折するのだが回りの車につられてまっすぐ県道にはいってしまった。
結局、道がわからなくなりそのままR1バイパスを横断し浜名湖のそばの舞坂までいってR2
57を浜松まで戻ってきた。
  浜松をぬけR152を北上して天竜に向かう。しばらくして左側にサークルKを見つけ、休
む事にする。時間は9 時を回っている。その先でガソリンもいれた。25.4l しか入らない
。燃費はすこぶる良い。12km台だ。
  天竜の少し手前で大きな本屋が目にはいった。広い駐車場があって街灯もついている。
ここで幌をつける事にした。幌をあけたままで眠りたいのはやまやまだが眠っている間に
雨が降ってきたらシャレにならない。立ち読みしたり幌をつけたりしているうちにあっと
いう間の30分がすぎてしまう。
  もうちょっといったところでまたサークルKをみつけたので車をとめた。多分このへん
が最終補給地になるだろうと思っての事だ。今夜と明朝の分の食料をかって車にもどって
くると遮断機のカンカンという音がひびいてきた。鉄チンの血がさわいで脇道を入ってい
くと踏切と駅があった。遠州鉄道の芝本駅だった。
 朝からフライドチキンしか食べていないがさっき本屋をでた所で犬のむごいのを見てし
まったのでちょっと今すぐ食べるという気にはなれない。
 橋をわたりトンネルをすぎれば天竜市街、R152に左折しそこねちょっと回り道。
天竜市街をぬけるとR125もただの山道になってしまう。スーパー林道に行くにはまず対岸
に渡らないといけない。目印の秋葉橋をさがしながらとことことR125を進む。
  やがて右手に真新しい鉄橋が見えてきた。秋葉橋らしい。そこを渡ってさらに川をのぼ
る。しばらく走れば右手に秋葉神社方面への看板が出るはずなのだが見つからない。
左側にちょうどいいスペースをみつけたのでここへ車を乗り入れた。今夜はここまでとす
る。11時だった。とうとう12時間も走ってしまった。トリップは 60249km、今日は337 km
走った事になる。ライトを消すとあたりは一瞬真っ暗になってしまった。虫の立体感のあ
る鳴き声と風でざわめく草木の音が聞こえるばかりとなってしまった。外に出てみるとほ
とんど雲はなくたくさんの星がでていた。きっと明日もはれるだろう。さっき買ったオニ
ギリをほうばる。
  JIMNY の中でどうやって寝ようかあれこれ考えた末に助手席を倒して荷台に寝る事にし
た。それでも狭い。下に敷いたジャンパー越しに感じる鉄板のゴツゴツが気になってなか
なか眠れない。結局、サイドブレーキが腰にあたるのをがまんして助手席側を頭に、運転
席側で足をたたんで寝る事にした。時折対岸の林の中を抜けていく自動車の明かりが岩肌
や樹木を不思議に照らし出し幻想的でさえある。
  いつのまにか眠りについたようだった。
7/27
  翌朝は4 時半に目覚めた。車の中ではいつも夜明けとともに目をさます。自然だ。
昨日は真っ暗になってからついたので目の前に広がる景色はまだ新鮮だ。コンクリ堤防の
先に広い河原がつづき、その先に水量の少ない天竜川が流れていた。
  車をおりて体をのばす。左後輪の所に小便の後のようなものがある。なんか小動物が来
たのかもしれない。サンドイッチを食べる。はみがきは水筒に入れてきた水ですませる。
飲み水のつもりで持ってきたけどこういう役の立ち方ってのもある。今日は林道を走るの
でサンダルから靴へ履きかえた。そろそろ出発しようとして助手席を片付けていると後ろ
から『つれんかえー?』と声をかけてきた。ふりむくと犬の散歩をしているじいさんだっ
た。『これから山いくんですよ』『ほー』って感じ。
  じいさんを後に川沿いの道を上流に向かう。しばらく走ったが昨日捜していた秋葉神社
の看板がみつからない。とうとう雲名の集落が見つからないまま戸倉の集落に出てしまっ
た。仕方なくここから戸倉谷経由で登る林道に入っていったが途中舗装の切れたところで
『車通れません』の看板とチェーンがありアウトになってしまった。
  もう一度、雲名の集落を捜しながら今来た道をもどる。さっきのじいさんとすれちがう
。まもなく昨夜渡った橋に出てしまった。不思議に思いその橋を調べてみると63年3 月に
できた雲名橋という橋で秋葉橋とは別物だった。橋を渡ってすぐに左折してしまったので
雲名の集落を見落としていたのだ。もちろんこの橋はまだ地図にでていない。ただ、明る
くなって標識や看板をみれば秋葉神社への道は一目瞭然だ。地図を信用しすぎた。
  雲名橋をスタートしたのが6 時。20分後には秋葉神社の本宮前にでた。参道が工事中だ
った。里から離れている事や観光ルートから外れているせいか人はいなかった。
 しばらく走ると戸倉方面に下りる道と分岐する。朝登ろうとして行きどまりにあった道
にくらべると整備されているから別ルートがあるのかもしれない。
  ここからゲートをくぐるといよいよ天竜スーパー林道だ。道は石が多くなってくる。
春野町にはいったあたりから右側にきれいな山並みを見下ろす事ができるようになった。
道は一定の高度で尾根を切り開いている。3rd 30kmという状態が続く。送信所が見えてき
たところでY字路を右に分岐。秋葉神社から20分程も走ったところで久保田線と分岐。地
図にはダートと書いてあるが舗装されてしまったようだ。
  阿字山林道との分岐点には『一本杉』という茶店があったようだが今は潰れてしまった
ようだ。ペースは40kmにあがっている。いしころやギャップを気にせずガンガンつっこん
で行けるのはとても楽しい。時々コーナーで思わずワダチをかけのぼってしまってあせっ
たりする。
  気温が下がって来るとともにふもとがガスでかすんで見えなくなってきた。竜頭山の方
もガスってきたようだ。ちょっと先が心配。
  林道の脇にいきなり階段ができてて『竜頭山山頂入口』の看板がたっていた。山頂まで
は徒歩でたった15分という。標高は1352m 。ここをすぎるといきなり道が悪くなった。大
きなギャップと尖った石がつづく。やっと林道らしくなってきたなとほくそえんだのも束
の間。竜頭山をまわりこむと舗装路が出現。そして『天竜の森』の看板。キレイなトイレ
と駐車場が完備されている。少しだけ休んで再スタート。道がよかったのは福山林道分岐
点までだった。そこをすぎるとまた道は悪くなる。おそらくもともと竜頭山へ行く場合、
秋葉神社方面からアプローチしていたので『山頂入口』から先はあまり整備されていなか
ったのだろう。それが『天竜の森』ができたため福山林道と天竜の森の間だけ整備したの
だろう。結果として竜頭山を囲むほんの一部の区間のみが整備から取り残されてしまった
のではなかろうか?
  道は相変わらずわるい。JIMNY はまるで水を得た魚かのように走っていく。ハンドルの
遊びは適度に路面のショックを吸収してくれるしトルクの太い2ストエンジンは40km以下
ではスポーツエンジンのようにまわる。かろう峠をこえ山住神社の交差点にでる。ここで
標高は1107m にもなる。ここを過ぎて久し振りの対抗車に出会う。それも子連れのJA71V 
ダ。上り坂になって道は舗装化の為に盛った砂利のせいで走りにくくなっていた。途中で
は林業作業中の場面にも出会った。右側に『かえでの道』という看板があった。きっと秋
には山が真っ赤になるのだろう。
  しばらくの間、砂利が深くて4WD にしているにも関わらず後ろが出るような走りが続く
。広くなっている所があり道が2つに分かれていた。タイヤの跡は左にのびている。正面
の道は『コガネ沢林道』といって新設中だった。ここは門桁山を囲む『野鳥の森』の入口
にもなっていた。
 8:10に水窪 (みさくぼ)ダムについた。崖の下の方にダムの湖面が見えてきたかと思う
と一気に高度をおとしてダムの湖畔に出た感じだ。湖岸では絵を描いている人が一人いる
だけだ。ダムの中心に浮かぶ島が湖面に映りキレイだ。
  R152は長野との県境ではまだ開通していない。そのために林道で迂回するようになって
いる。灰の沢でその林道に合流する。ここはバスも通っているようだ。バス停があった。
ここで曲がった時にフロントから異音がしたのでちょっと休む。
  異音の原因は結局わからずじまいだった。ふと気がつくとシガーライターにつけたマッ
プランプが悪路の振動で根本から外れてしまっていた。
  地元ナンバーのブルーバードに続いて走り始める。草木川の沢にそった林道だが長野方
面へ抜けるための生活林道であるため全面舗装されており対向車も多い。
  白倉林道を正面に見つつ左折する。しばらく走ると山の斜面を利用して巧妙に建てたと
思われる山の学校がみえた。フェンスで囲まれた猫の額程の校庭、斜面に張り出した2階
建ての校舎。
  兵越峠を越す。茶店で先に行ったブルーバードが休んでいるのが見えた。南信濃村に入
ってからは林の底を走っているような感じ。
  やがて眼下に牧歌的な風景が広がる。南信濃の小嵐だ。ここでR125と合流する。R125は
ここから先、県境の青崩峠まで細く伸びているが鬱蒼とした沢を走っていくだけのような
のでパスする。R125を北上しはじめる。しばらく走るとT字路にぶつかった。R125は右に
のびている。久し振りの集落だ。町はずれで車をとめて休む。静かだ。
  ここから川沿いに走るR125は景色も明るく気持ちいい。ずっとのどかな山村の風景が続
く。
  途中、下中郷では猪、鹿、熊などの肉が手に入るという話だったがいつのまにか通りす
ぎてしまった。国道の名前もいつのまにかR256に変わっている。
  R256はこの先にまた未開通部分が残っている。迂回路は蛇洞林道という林道だ。林道の
途中からしらびそ峠への林道が分岐している。分岐点からしらびそ高原までは8kmの看板
が出ていた。途中数台のダンプと擦れ違った。ダンプが走ってくるくらいだから道はそこ
そこよい。しらびそまで3kmとなったあたりで工事中の看板が現れた。看板を見ると、発
破作業のため時間制限で通行止めとなっている。通り過ぎるだけならともかくどうせまた
戻ってくるのだから無理を言って通してもらう訳にもいかない。また山にガスがかかり始
めていた事もあってしらびそからの眺めも期待できそうに無いのでUターンする事にした
。しらびそ峠への分岐点をすぎると蛇洞林道は急に道が悪くなる。道は悪いがサンサンと
日がそそぐ谷沿いの道は御機嫌だ。道端に車をとめる。ちかくの沢を清流が流れている。
水筒の水を飲みOUT RIDER を広げる。ジャンパーを地面に広げて少し横になる。静寂。
  その静寂を一台の車がやぶっていった。エンジン音と石をはねる音が近付いてきたかと
思うと間もなくホコリを巻き上げて通りすぎていった。ゴホッゴホッって感じ。
  R256は北側からの工事を進めていない。蛇洞林道を走っているうちいつの間にかR256に
なっているのだ。
  R256をしばらく北上。左折して小渋湖の道路で松川町へむかう。松川は殺風景な町。
駅名も松川ではない。飯田線の駅は伊那大島という。松川を出てR153を南下し高森で給油
。今回も22.2l 程度しか入らない。まぁ今日はまだ距離があまりのびていないのだけれど
も・・・。
  飯田市街に入る。去年ゆっくりと町中を歩いたので地図はいらない。まっすぐ町の中心
の長野銀行をめざす。
  飯田でこれより先にいくのをやめる事にした。R20 で素直に帰る。
R153を伊那まで北上。ここで殿島橋を渡り町道に入る。貝沼から城下・上組にかけて右側
を疏水のようなものが流れているのだがこれが道路とほぼ同じ高さの水面で不思議だ。
天竜スーパー林道2
 高遠の町でR256に再び合流する。ここから先R256はセンターラインのある快適な道。
杖突峠をすぎると急に諏訪盆地の眺望がひろがる。ここからJIMNY にはちょっとつらいワ
インディングロードをかけおりると茅野だ。前にプレイドライブのスタート地点で通った
っけと思いつつR20 にでる。時間は午後3時、距離は60529 kmだ。さあ時間はたっぷりあ
る。一気に帰ろうか?

  午後9時、綱島帰着。距離は60720.5 kmとなっていた。

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