■ MaSaNa's OUT DRIVER ■
『大久保林道など』
 一ヵ月程前に日立市多賀で模型店を探している内に林道に迷い込んだ事があった。その
時は軽自動車に乗っていたので深く入り込まなかったが、どうも気になって今日再び出掛
けて見る事にした。国道6号を北上し、多賀の電鉄プラザで左折し、さらに消防署の手前
を左折する。しばらく道なりに進み大久保中の手前を右折、中学校の前を通ってその先を
左折する。しばらくするとY字路が現れるので正面の小さな橋を渡る方の道を行く。両側
の鉄工所が大きな雑音をあげているのを聞きつつ森の中に入っていくと道はだんだんと狭
くなっていきやがてダート路があらわれる。森を抜けた所で道は二手に分かれる。右手の
道はちょっと行ったところでチェーンがかかっていて入れなかった。左手の道は新しい砂
利が入っているが両側からかぶさる草と雑木でうっそうとしている狭い道だ。
 しばらく行くと道端に『大久保林道全長2600m 』の表示が現れた。川を渡るとすぐに右
後ろから合流してくる道があった。どうやらさっき封鎖されていた道がここに続いている
らしい。
  林道の左側を流れる小川は桜川の源流だ。ちょうど湧き水があったので車をとめると、
『大久保風穴鍾乳洞』という看板が出ていた。水がきれいだ。
  さらにしばらく進むと頭上を上り下り二本の常磐道が横切っていく。ちいさな渓谷と巨
大な構造物の対比が異様だ。
  道はだんだん状態が悪くなってきた。カーブの所で雨水で大きな溝が路面を横切ってい
る。車をとめて坂を歩いて上ってみる。右側に溝がある。しばらく登ると太いタイヤがス
リップした跡があった。どうやら溝を避けながら左寄りに走っていったのについに溝にタ
イヤを落としながら走り抜けて行った前走車がいたらしい。ただ溝の右側は岩があるので
跨いで行く訳には行かないようなので、念の為4WDにして、目一杯左に寄りながら上っ
ていって事なきを得た。
 桜川と少し離れた所で景色が開けた。正面の山が大きく削られている。発破使用の為通
行禁止の表示があるが作業している風でもないので気にしない。
 道は作業場に沿って左右に分かれている。もう一本右後ろに上っていく道があるがこち
らはゲートで封鎖されている。既に地図上のどこにいるか分からなくなってしまったので
取り敢えず右の道を選んだ。
 道は石ころが多くなって来た。アチコチに溝もあるので4WDに入れたままだ。溝にハ
ンドルをとられない様に注意深く進んでいく。アチコチに通行止めの作業道がある。しば
らく行くと『多賀サムライクラブ専用飛行場』の入口なんかもあって封鎖されていた。お
そらくグライダー等の飛行場なのだろう。道はだんだんと下りになって来た。やがてまた
視界には山肌を削られた作業場が広がった。一瞬、作業場の回りをグルリと回って元の場
所に戻って来たのではなかろうかと不安に思いつつ下っていくと道はどうもさっきとは雰
囲気が違う。最初の作業場は全体に柵がしてあって中央には雨水が溜まって池になってい
たがここにはそれがない。ここは作業場の底の方までダンプやショベルが入っている。
 作業場の淵をぐるりと回っていくとトンネルの入口があり、『大平田鉱山専用道に付き
通行止め』と表示され、やはり柵が掛かっている。どうやらこれが地図にある大久保トン
ネルらしい。だとするとこのトンネルは一直線に最初に見た作業場に続いているのだろう
。あの柵がもうトンネルのもう一方に続いていたのだ。
 トンネルを後にし、しばらく下りていくとちらりと青いトラックが見えた。作業中なの
かと気をつけて見ていると今度はマークIIが通っていった。どうやら県道に出たらしい。
作業場をどんどん下りていくとプレハブ建ての事務所やダンプの泥を落とす為の洗車槽が
あって県道に出た。諏訪梅林から常陸太田へ抜ける県道だった。
 日立から一歩踏み込んだだけでこの様な林道があるのは嬉しいが、人の目に触れない所
で大規模に山が削りとられ自然破壊されている事に憤りを感じずにはいれなかった。
 走り慣れた県道を常陸太田へ向けて走った。上りでも踏めばスピードは出るのだが、燃
費がガタ落ちする為ひたすら我慢する。その代わり下りではワイドトレッドと強力なエン
ブレを利用してガンガン下っていく。常陸太田から国道349 号を北上し、すぐ旧道に入っ
た。先日十国峠から下ってきた林道の出口を通過し、そのまま県道を北上する。
  この県道はセンターラインもある快適な道だ。センターラインがなくなり、道が細くな
り、坂を上りはじめたあたりにバスの転回場があり、バスが止まっていた。そのまま上り
続けると間もなくT字路にぶつかった。左折してしばらく行くとこの間の十国峠にでた。
峠をおりて水府村の県道をちょっと北に向かう。山方町の案内に従って左折し、川沿いの
山道をしばらく進む。しばらく行くと県道に合流した。この交差点に雑貨屋があるのだが
ふとデジャブを感じ記憶を漁ってみるとそれは武生林道を抜けた所の雑貨屋に酷似してい
るものの別物だった。県道を山方町へ向かう。一度ミスコースしたが間もなく『西金砂神
社』の看板を見つけ右折した。そこから5kmだというが2km程で鳥居があり、そこからは
狭い山道になった。ウネウネと上っていくとようやく山頂に出た。山頂には予想に反して
金砂郷村民俗伝承館という大きな建物が出来ていた。その正面には樹齢数百年にはなろう
かという大きな樹が立っている。また、伝承館の脇には金砂城跡がある。ただの跡にすぎ
ないが説明の看板によれば、佐竹氏が篭城した城で南北朝時代にも拠点になったという。
日が沈もうとしていた。人一人おらず蝉の鳴き声だけが響く西金砂神社は不気味である。
  急いでトントンと階段を上がっていくと薄暗い境内に古びた神社が建っていた。下にあ
った伝承館や樹にいた時の神秘的な雰囲気ではなく、そこにはただ時間とともにさびれて
いった物悲しさだけが漂っていた。
  駐車場にとってかえす。駐車場の端の看板を見ると道はまだ続いていて赤土という所ま
で続いているらしい。とりあえず先に進んでみる。道はしばらく舗装されている。尾根に
出たところで右側の視界が開け、遠くに続く穏やかな山並みが見えるようになった。
  やがて道はダートに変わり、T字路にでた。左の道が新しいようだったので入って行く
とほんの2,300mで終わっていた。Uターンしてもう一方の道を行くと右手に畑と民家が見
えて来た。ここで畑が見えて来たのでどこかに抜ける事を期待しつつ進んでいくと、案の
定、道は舗装になり、右・中沢、左・赤土という標識が現れた。地図を見ると確かに赤土
も中沢も載っていた。西金砂を過ぎた林道はそのまま東へ下りるのかと思っていたが、ど
うもグルリと山頂を回りこんで南の方へ下りて来たようだ。しばらくすると農家が見えて
きた。赤土から県道に出るまでの間は狭いながらも快適な道で小川に沿ってひたすら下っ
て行くといつの間にか来る時、気になった雑貨屋の交差点に出ていた。
 時計は6時を指していた。そろそろ林道を走るにはタイムアウトかなと思って帰路に着
く事にした。ここから勝田までは一時間とかからない筈だ。

以上

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