■ MaSaNa's OUT DRIVER ■
『奈良・和歌山』その6
 五月二日は四時頃に目覚めるとすぐに走り始めた。
 朝モヤの中、尾鷲、松坂と快調に80kmで飛ばして行く。松坂で駅に寄って少し休み、ま
たスタートした。
  R23と合流し、鈴鹿、四日市と朝の通勤ラッシュに巻きこまれる。
  それでも何とか朝のR23で名古屋をパスし、浜松では中田島砂丘で遊び、R150であたら
しめのレストランで遅い昼食にありつき、御殿場で東名に乗り、東名新ルートを走って、
大井松田そして厚木についた時は17:20 になっていた。

  海老名からの往復で約1800km、大久保氏にとって見れば慌ただしいばかりの旅行であっ
たろうが僕にとってはこれで一応、日本全体を回ったと言ってしまえる、意味のある旅行
であった。

  林道に関しては予定していた分のほんのわずかしか走っていない。その代わり今、注目
されている太平記の舞台をつぶさに見る事が出来たし歴史を軸にした旅行というのもいい
なと思わせるのに充分なものであった。

  能登半島の付け根にある高岡、伊那の高遠、自然にあふれ、歴史にあふれた街は何度言
っても飽きる事がない。一日ボーッと、その景色に包まれている事の心地好さ、四季おり
おりに変化を見せる景色、街の色。そして何よりそういう街でのんびりと暮らす人達。

  今回はそういった街を二つ得る事ができた。吉野と天川だ。十津川や伊賀上野のように
観光という洗礼を受ける前の純粋な歴史をとどめる街だ。

  歴史というのは過去から現在そして未来までも延々と続くものであって、観光化という
のは過去から続いてきたその街の歴史をそこで切り落としてしまう様なものである。
  歴史の積み重ねの上に現代の生活がうまくとけこんでいる。それが高岡であり、高遠で
あり、今回の吉野、天川である。
  結局、高岡に五回も行ってしまった様にここもまた何度か訪れることになるだろう。行
くたびに少しずつは変わっていくだろうけど、吉野や天川のあの濃密な空気には変わらな
いでいて貰いたいものだ。

  そして、今回は夜のキラメキとしてしか見られなかった南紀の海岸線。かつて、三陸を
一日かけてのんびり見て回った様に南紀もそれだけを目的に来る価値があるだろう。

  奈良・和歌山、次に行く時はここからあそこへ抜けて・・・と既に僕の頭の中では構想
が始まっている。
                                                1991.06.10 AM 3:00  原稿作成
                        1991.08.30 PM 9:00  ワープロ

[OutDriver]