■ MaSaNa's OUT DRIVER ■
『奈良・和歌山』その2
 上赤坂城の標識に従って左折し、しばらく行くと城の入り口があった。徒歩1kmと書い
てある。数台の車が停まっている先に車を置いて畑の中の道を歩いて行くと城山のふもと
の石碑にたどりついた。ここで写真を撮っているうちに中年の夫婦が上ってきて、先に行
った。ここからV字状の登山道やドロドロの坂を延々と上がって行くと、やがて左側に二
の丸が見えて来た。更に『そろばん橋』と名付けられた橋を渡って行くと本丸に出た。
 木々の間から山また山の景観がのぞめる。

 上赤坂城を転がるように下りる。往復の間の40分程の間に車内には熱気がこもっている
。Uターンして標識に従い左折。楠公生誕地には資料館があったが連休中にも関わらず、
火曜日の為、休館日。館の前には『太平記スタンプラリー』の看板がある。このスタンプ
ラリーの締めきりは12月末と言う事だ。この看板はその後もあちこちで見る事になる。
 楠公生誕地の石碑は明治になって大久保利通が立てたものという。
  次に下赤坂城を見にいくが、そこは小学校の敷地内にあり、今日は平日で生徒がウヨウ
ヨいたので退散する。
  ここには建水分神社というのもあったのだが今回は通り過ぎてしまった。

  川沿いの県道をグイグイ上って行く。あちこちに『太平記の里』の旗が立っている。道
の両脇に駐車場が現れる。いずれの駐車場も有料だ。人はいないもののお金を入れる木箱
が置いてある。最初は釣り客目当ての駐車場かと思ったが、それだけでなく、金剛山や千
早城への登山者目当てのものらしい。
  千早城へと登る階段の入り口は見事に観光地化されている。有料の駐車場とみやげ物屋
が並ぶ。
  上赤坂城への往復で疲れていたので入り口を横目でながめつつ通り過ぎる。

 快適な山道を上りつめると道は大きく左にカーブし、有料駐車場の入り口へと吸い込ま
れている。そのままゲートでお金を払って中に置いた。
  山道の最後のカーブの右側から金剛山ロープウェイ乗り場まで細い道が続いている。そ
の入り口にまず、2〜3軒の店が並んでいた。そのうちの一番手前の店が山荘風の食堂に
なっていたのでメニューを見て、そこに入った。かわち宴というその店は鴨料理がメイン
だった。一番手頃な鴨丼を頼む。しばらくして出てきた鴨丼は見た目はまるで親子丼だっ
た。鶏肉の替わりに鴨肉が入っている。この鴨肉、歯ごたえがコキコキして脂肪質な感じ
。そこを出て簡易舗装の歩道をとことこ上っていくと5分程でロープウェイ乗り場につく
。見ると次の発車まで20分もある上に値段も高いのでパスする。ここは山頂に金剛山寺と
いう寺があり、楠木正成が戦った所なので見るべきだったかも知れないが往復一時間以上
かかりそうなのであきらめる。さっきの上赤坂城往復で疲れ切っていて、今日は何だか覇
気がない。
  金剛山からの下り道沿いにWoody HOUSE という木工細工&喫茶の店があるというのを、
かわち宴でもらって来たパンフで見ていたので探しながら行く。
 再び、千早城入り口を通り過ぎ、しばらく行った所で千早城を遠景からビデオとカメラ
に納める。
 Woddy HOUSE は金剛山へ上ってくる途中で見たログハウス風の建物だった。正面の扉は
開いていて、一台のオフロードバイクが止まっていたが駐車場にはチェーンがかかったま
まだ。これからノンビリ開店するのだろうか?もうお昼だ。
  千早城を過ぎ、Woody HOUSE を過ぎて間もなく左折して県道のトンネルをくぐるとR310
に出る。R310を五条へと向かう。金剛トンネルで峠を過ぎると道は一気に高度を下げる。
  JR和歌山線を陸橋で越えると五条市街だ。五条の町は軒の低い平屋や二階建ての低い
家屋ばかり並んでいる。古い宿場町の雰囲気がある。R24に出て五条駅に向かう。
  五条駅前には殺風景な広場があり、大きな自転車置き場と古びたタクシーの車庫がある
。タクシーの車庫のそばに車を停めておくと、車庫の係員がやってきて「もうすぐバスが
来るからどいて」と言う。少し車の位置を変えたが「そこに置いたんじゃ何も変わらん」
と言う。車を自転車置き場の脇に寄せて駅横断用の跨線橋へ行って町並みをながめる。
  やはり、町並みは平坦だ。高い建物が本当に少ない。駅からそう遠くない所に煙突が見
える。酒造会社の名前が書いてある。
  駅の構内には蒸気時代の名残りで給水塔がある。係留線に使われているレールもかなり
細い。昔、五条から新宮へ五新線という計画があったそうだが、つぶれてしまったという
。もし、開通していたなら五条の町ももっと活気のある町になっていただろう。現在では
五新線予定地の跡を利用してJRがバスを走らせている。
 跨線橋の上から町をながめている内に駅前広場にバスが二台やってきた。全長の短い小
型のバスだが、いずれも奈良交通のサイケなカラーに塗られている。さっき僕らが車を停
めていたスペースを利用してUターンして停まった。
 車を出す。先程見えた酒造会社に向かうがそこは古い造りの門があるだけで酒屋にはな
っていなかった。大久保氏は実はおみやげに地酒を手に入れたかったのだ。
 R24を御所に向かい途中でR370に右折して吉野をめざす。R24に並行して流れる紀ノ川
はこの五条より上流では吉野川と呼ばれる。
  吉野地区の中心地、大淀の町で久し振りに渋滞にぶつかった。町を回り込み、踏切を過
ぎR169に合流した所で、渋滞は解消した。
  吉野町自体の中心は近鉄大和上市駅あたりだ。吉野山を控えているとは言え、門前町と
いう感じではなくあくまでも吉野川に沿った宿場町だ。
  その旧宿場通りも今では国道より一本裏道になってしまっている。近鉄大和上市駅は、
その通りの更に奥にあった。駅前に車を停めた。田舎の観光地らしい駅だ。バスは駅前に
は入れず、駅前の一段上にバス回転所を設け、そちらに乗り入れている。
  髪を赤く染めた少年達が駅から出てきて駅前の雑貨屋の前でダベッている。やがて下か
ら軽トラがやって来て、後輪を鳴らしながら駅前を通り過ぎて行く。少年達が「ヒュー」
と歓声を上げる。
  大久保氏は地酒を買う為、テクテクと街道筋に下りて行った。
  少年達はどこからかバイクやスクーターを引っ張り出して来るとメットもかぶらず走り
出して行った。
  大久保氏を待つ間、駅の回りをウロウロする。しばらくすると大久保氏が戻って来た。
ちょうど電車がやって来る所だったので大急ぎで、それぞれカメラとビデオを担いで踏切
の所で撮影する。
  駅を出て、地酒の置いてあるという別の酒屋に向かう。街道は昔の馬防ぎの名残りなの
か、町外れで一度クランク状に曲がっている。そのクランクを過ぎた右側に落ち着いた店
構えの地酒の店があった。街道の幅も昔のままなのか路上駐車するスペースも無いので、
ちょうどその先にあったスーパーの数台入れば一杯になってしまう様な駐車場にmuを詰
め込んだ。
  スーパーで買い物を終えた頃に地酒を抱えた大久保氏が戻ってきた。
  一旦、R169に戻り、吉野川を渡る。吉野川を渡り切った先は製材所になっている。吉野
といえば吉野山以上に吉野杉の方が有名なくらいだから仕方がない。余談になるが吉野山
は桜の名所だが、桜のソメイヨシノは当地とは関係ないそうだ。
  吉野神宮への案内に従って行くと近鉄の終着であり、ロープウェイ乗り場でもある近鉄
吉野駅に出る。吉野駅を通り過ぎた所で車を寄せ、ルートを確認した。センターラインの
ある快適な二車線を上って行くと、両側に大きな駐車場が現れた。有料と書いてあって片
隅に『如意輪寺近道』の看板が出ている。しかし、看板の先にはずっと下りの階段が続い
ているので寺はまだ先だという事がわかる。
  車を先に進めると右下に下りて行く道が現れた。これが如意輪寺の入り口だ。下りて行
くと山門の前に狭いながらも無料の駐車場がある。さっきの駐車場は観光バスや混雑時に
しか使わないのだろう。
  山門をくぐって砂利の上を歩いて行く。境内には宝物館なるものがあった。後醍醐天皇
にまつわる様々なものが展示してあると言うが今回はパス。もう疲れが出ている。宝物館
の裏手の階段を上って行くと林の中にひっそりと後醍醐天皇陵がある。天皇を無念を示す
べく北向きの墓だ。後日談だが、後醍醐天皇陵の写真には右側にモヤモヤと光が入ってし
まっている事に気がついた。これは後醍醐天皇陵の次に大塔皇子陵を撮った時にカメラの
シャッターが落ちなくなるトラブルが発生したので、その影響なのだろうが、偶然とはい
え不気味である。

  如意輪寺を後にして更に上る。道が狭くなってしばらく走ると吉野山の門前町へ出る。
左へ曲がり再び山中に分け入って行く。
  左折した直後にバスの事務所がある。ここから先が吉野大峰ドライブウェイだ。名前の
割りには普通の林道クラスの道だ。カーブの向こうから突然OL風の旅行者二人連れが歩
いて来た。多分、金峰神社までバスで行って帰りは歩いて来たのだろう。3km程の道のり
だから歩いて歩けない事はない。
  杉木立の中を抜けてT字路に出た。そこが金峰神社の入り口だった。車で神社の境内ま
で行ける事を知らない僕達はT字路の片隅に車を置いて数百mの坂道を登った。
 正面にはガランドウの拝殿がある。拝殿の裏から更に山上に階段が続いているが、そち
らには行けない様になっている。
 境内の左端から坂を下り義経隠れ塔を見に行く。「本当にこれが?」というくらい質素
な塔だ。杉木立の間から吉野周辺の山が彼方まで見通せる。空気の厚さだけ遠くの稜線が
霞んでいるのさえ見える。
 車に戻り、奥駈け道に沿って山奥に進む林道に乗り入れるが金峰神社よりはずっと低い
所を走っている為、見通しが悪いのでビューポイントを探すのはやめにしてチターンした
。
 帰りは吉野大峰ドライブウェイでなく旧道を行く。
 途中で止まっている間に後ろから二台の車が抜いて行った。一台は若葉マークのキャロ
ルだ。いかにもゴールデンウィークらしい。奈ナンで女の子四人だから初めてのドライブ
と行った所だろう。
 吉野水分神社は車二台しか止まれない。先程の二台が駐車しているので、そのまま先の
見晴らし台まで行った。吉野の門前町が一望できる。
 ここから道は急勾配で一気に駈け下りて門前町になだれこむ。
 門前町からこの旧道の入り口を見ると、まるで行き止まりの脇道にしか見えない。それ
で先程は見過ごしてしまったのだ。
 門前町は狭い通りの両側に宿やみやげ物屋が軒を連ねている。そこに観光客や対向車が
くるので一層、大変だ。
 竹林院、勝手神社、吉水神社、蔵王堂などが並んでいるが走りながらでは見る間もない
。なかば押し出されるように門前町を抜け出し、麓に近い吉野神宮の前まで来て、ようや
く一息ついた。

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