1.どういう解法?
Turbot Fish の舞台は、3つの列やブロックです。
その3つの小舞台に4マスが散らばっている。その4マスが織りなす解法です。
数珠つなぎになった4マスの両端が威力を発揮します。
このセクションでは、一般の解説サイトでよく見る形の Turbot Fish を解説します。
サイトによっては6マス以上の Turbot Fish を解説していることがありますが、当ページでは4マスに限定して解説します。
図1-1、●○▲△の4マスが次の状況だとしましょう。
- ●と○の属するヨコ列において、数字1は2マス●○にしか入らない。
- ▲と△の属するブロックにおいて、数字1は2マス▲△にしか入らない。
- ●と▲の属するタテ列において、数字1は2マス●▲には入り得る(●▲以外のマスに数字1が入るかどうかは問わない)。
上記には2種類の状況がありますね。
「2マスにしか入らない」と「2マスには入り得る」です。
この2種類の状況を線で表します。2マスを2色の線で結んでみましょう。
前者を赤色の線で、後者を青色の線で結ぶことにします。
そうしてできあがったのが 図1-1 です。
前図1-1 からはどういう結論になるんでしょう?
こうなるんです。
- 2マス○, △と列を共有しているマスがある。そのマスに数字1は入らない。
図1-2 だと×印の1マスが該当します。
そのマスは○と同じタテ列に属し、同時に、△と同じヨコ列に属しています。
このマスに数字1は入らないというわけです。
なぜこういう結論になるんでしょう?
それは、○と△の少なくとも一方に必ず数字1が入るからなんです。
それを解説しましょう。
●と▲に数字1の入る可能性はありますが、両者は同じタテ列に属しています。
だから、●と▲の両方に数字1を入れるというわけにはいきません。
つまり、●と▲のうち少なくとも一方には数字1が入らないことになりますね。
●に1が入らない場合、○に必ず1が入ります。
▲に1が入らない場合、△に必ず1が入ります。
というわけで、次のことが成り立つんです。
- ○と△の少なくとも一方に必ず数字1が入る。
そうなると、★マスに影響が出てきます。
なんと、前図1-3 の★マスに数字1を入れられなくなる!
なぜでしょう?
○は★と同じタテ列に属しています。
△は★と同じヨコ列に属しています。
だから、○と△のどちらに数字1が入ったとしても、★マスには数字1を入れることができないわけなんです。
図1-2 の結論通りですね😊
これが Turbot Fish という解法です。
上記の例では、4マスは ○-●-▲-△ の順に線でつながりました。
Turbot Fish は必ずこの順番につながります。そして、つなぐ線は必ず 赤線-青線-赤線 の順です。
マスの順番と線色の順番はこの通りでなければいけません。
ただし、どの列やブロックを対象に赤線や青線を引くかは自由です。
上記の例では、ヨコ列-タテ列-ブロック の順でした。
対象によっては別名が付いていることがあるので、3つ紹介しましょう。
図1-5 です。
まずは例を2つ。
左側の盤面では、4マスが ヨコ列-タテ列-ヨコ列 の順に線で結ばれています。
これは Skyscraper と呼ばれています。
右側の盤面では、4マスが ヨコ列-ブロック-タテ列 の順に線で結ばれています。
これは 2-String Kite と呼ばれています。
両者は Turbot Fish の一種なんですね。
実は、図1-1 は Empty Rectangle の形をしているとも言えます。
L字型のパターンですね。
だから、Empty Rectangle の一部は Turbot Fish でもあるんですね。
2.実際に使ってみよう!
次は、実際の盤面で Turbot Fish を使ってみましょう。
図2-1 では、とあるマスに数字が判明します。
それを Turbot Fish で突き止めてみます。
ここでは数字3に注目して、3の入り得るマスを探してみます。
4マス●○▲△に注目しましょう。
次の状況になっています。
- ●と○の属するヨコ列において、数字3は2マス●○にしか入らない。
- ▲と△の属するタテ列において、数字3は2マス▲△にしか入らない。
- ●と▲の属するブロックにおいて、数字3は2マス●▲には入り得る(数字3の入り得るマスは●▲以外にもある)。
状況の通りに赤線&青線が引かれていますね。
さぁ、舞台は整いました。
あとは Turbot Fish を使うだけ!
では早速使ってみましょう。
こうなります。
- 図2-3、×印のマスに数字3は入らない。
理由を簡単に説明しましょう。
●と▲に同時に数字3を入れられない。
そのため、○と△のどちらかには数字3が入る。
よって、上記の結論に至るわけですね。
というわけで、×印のマスに数字3を入れることができなくなりました(図2-3)。
うまく Turbot Fish が使えましたね!
もぅちょっと解き進めてみましょう。
前図2-3、×マスの属する列やブロック全域に目を通してみましょう。
×印マスには3と5しか入れられないことがわかります。
しかし、数字3が入らないことも 図2-3 で判明した。
というわけで、そのマスに数字5が確定しちゃいました😄
3.五角形で見る Turbot Fish
Turbot Fish という解法は、フォーラムサイト『The New Sudoku Players' Forum』の New pattern: the Turbot Fish というトピックで紹介されました。
このセクションでは、そのトピックを基に別の視点で Turbot Fish を解説します。
今までのセクションでは、数珠つなぎの4マスに解法 Turbot Fish を適用して1マスに結果が反映されました。
登場したマスをすべて考慮すると、Turbot Fish は5マスを使う解法であると言えるわけなんですね。
というわけで、ここからは5マスに対して Turbot Fish を考察していきます。
この5マス、実は、各マスを頂点とする五角形を形成します。
具体的には 図3-1 のような形です。
- 2辺はタテ列に沿っている。
- 2辺はヨコ列に沿っている。
- 1辺は斜めであり、辺の両端は同じブロックに属している。
今までのセクションで使った赤線と青線は五角形の辺をなしていました。
図3-1 ではまだ辺に色が付いていませんが、赤色&青色の組み合わせに応じて Turbot Fish はいろんな顔を持つようになります。
顔は全部で4つ。
それぞれ解説していきましょう。
まず1つめ。
赤線が4本ある場合です。
例えば 図3-2 のような形ですね。
斜めの辺が青線ですが、どこが青線でも以下で述べる理屈は本質的に同じです。
- マスA, Bの属するヨコ列では、数字nはA, Bにしか入らない。
- マスB, Cの属するタテ列では、数字nはB, Cにしか入らない。
- マスC, Dの属するヨコ列では、数字nはC, Dにしか入らない。
- マスD, Eの属するタテ列では、数字nはD, Eにしか入らない。
- マスE, Aの属するブロックでは、数字nはE, Aには入り得る(E, A以外に数字nが入るかどうかは問わない)。
図3-2 からはどういう結論が待っているんでしょう?
今、「マスAに数字nが入る」と仮定してみましょう。
すると、赤線を順にたどってマスEまで行き着きます。
- (仮定)マスAに数字nが入る。
- マスBに数字nは入らない。
- マスCに数字nが入る。
- マスDに数字nは入らない。
- マスEに数字nが入る。
あっ。矛盾が起きてもぅた😣
中央ブロックに数字nが2つも入ってしまったんです。
仮定は間違いだということがわかった。
マスAに数字nを入れてはいけません。
というわけで、こういう結論になるんです。
- マスA, C, Eに数字nは入らず、マスB, Dに数字nが確定する。
図3-3 の4マスB, A, E, Dを見てみると、セクション2と同じ形をしてるんですね。
つまり、2-String Kite と同じ形。
だから、同じ理屈を適用すると「マスCに数字nは入らない」という結果を得ます。
あとは、赤線をたどれば 図3-3 と同じ結論に至る。
こういう見方もできますね。
次は、赤線が3本の場合です。
この場合は2種類あります。
青線が連続で並んでいる場合、そして、青線が連続していない場合。
まずは、青線が連続している場合です。
図3-4 のような形です。
3本の赤線も連続していますね。
実は、この3連続の赤線のおかげで、ある結論が得られます。
どういう結論なんでしょう?
3連続の赤線のおかげで、次のどちらかが必ず成り立つんです。
これは、マスAに数字nが入った場合/入らなかった場合、それぞれを考えるとわかります。
図3-5 は後者の場合です。
- マスA, Cに数字nが入る。
- マスB, Dに数字nが入る。
となると、2マスA, Dのどちらかに必ず数字nが入ることになりますね。
というわけで、次の結論になるんです。
- マスEに数字nは入らない。
次に、青線が連続していない場合。
図3-6 のような形です。
1本の赤線が孤立していますね。
中央ブロックの赤線です。
ここからうまいこと論理展開して、ある結論が出せるんです。
どういう結論でしょう?
中央ブロックでは、2マスA, Eのどちらかに必ず数字nが入ります。
では、Aに入った場合はどうなるか?
その場合は、マスBに数字nは入らず、マスCに数字nが入ります。
図3-7 の通りです。
一方、Eに入った場合はどうなるか?
その場合は、マスDに数字nは入らず、マスCに数字nが入ります。
あ、どちらの場合でも同じ結果になりましたね!
というわけで、次の結論が得られるんです。
- マスCに数字nが確定し、マスB, Dに数字nは入らない。
図3-7 の4マスC, B, A, Eを見ると、セクション1と同じ形をしてるんです。
だから、同じ理屈を適用すると「マスDに数字nは入らない」という結果を得ます。
あとは、赤線をたどれば 図3-7 と同じ結論に至ります。
こういう見方もできますね。
最後は、赤線が2本の場合です。
この場合は、赤線が連続していない場合に限り結論が得られます。
例えば 図3-8 のような形です。
この場合はどういう結論になるんでしょう?
中央ブロックでは、2マスA, E両方に数字nを入れるということはできません。
つまり、A, Eの少なくとも一方に数字nは入らない。
ということは、マスB, Dのうち最低1つには数字nが入ります。
というわけで、次の結論が得られるんです。
- マスCに数字nは入らない。
図3-9 の4マスB, A, E, Dを見ると、2-String Kite とまったく同じ!
2-String Kite は Turbot Fish の一種だということがわかるんですね。
4.turbot fish な Turbot Fish
ここからは余談です。
これまでのセクションでは、解法 Turbot Fish を解説していきました。
赤線と青線、列とブロック、さまざまな要素が連携して1マスに結論が行き着きましたね。
ところで。
そういえば、何で「Turbot」なんでしょう?
このセクションでは、名前「Turbot Fish」の由来を話してみようと思います。
セクション3では、5マスに対する Turbot Fish を考察しました。
図4-1 のように、五角形の形をしていましたね。
この5マスの位置関係だと、こういうわかりやすい五角形ができました。
しかし、位置関係が変わると別の形もできそうな気がします。
果たして、他にも形はあるんだろうか?
あるとしたらどんな形なんだろう……?
実は、他に2つあるんです。
図4-2 のような形です。
パターンAのように凹んだ五角形だったり。
パターンBのようにタテヨコの線が交差していたり。
……さぁ、ここです!
このパターンB。
なんとな〜くあの形に見えてきませんか?
あの形。
アレです、アレ!
そう。
海を泳ぐアレ。
そうです。
ヒラメです!
実は、これが名前「Turbot Fish」の由来なんです。
ただ、厳密にはヒラメに限らないようですね。
goo辞書(英和・和英)によると、turbot は「ヒラメやカレイなどの扁平な魚」なのだそうです。
Turbot Fish という名前の由来は前セクションで紹介したトピック New pattern: the Turbot Fish に一言で述べられてますが、おそらく投稿者さんは「平べったい魚」というイメージで名付けたのでしょう。
たしかに、図4-3 は平たい魚に見えますよね。
Skyscraper や 2-String Kite の由来もそうだけど、見た目そのまんまな名前は実にわかりやすい😊
ここからは駄文です。
最初、web辞書を見た時、ひっかかりを感じたんです。
先述したように goo辞書には「ヒラメやカレイなどの扁平な魚」と書かれてあった。
つまり、「ヒラメ」「カレイ」と断言していないんです。
「〜などの扁平な魚」と少し言葉を濁している。
そこが気になった。
web辞書を見ても私は「turbot」のイメージがつかめなかったんですね。
ヒラメなのか、カレイなのか、はたまた両方をひっくるめた物なのか。
あるいは、ヒラメやカレイに限らず、エイなどを含めた平べったい魚全般を指すのか。
「扁平な魚」の範囲も境界線もいまいち見えず、ずっと頭がモヤモヤしたままだった。
なので、ちょいと「turbot」を検索してみたんです。
すると、カレイの一種だとかイシビラメだとか、果ては「テュルボ」なんてワードも出てきよった!
ますます頭が混乱していく😵
検索結果を見てもどうにもモヤモヤが晴れず、英語版の Wikipedia に助けを求めてみました。
とりあえず「Turbot」のページが見つかったので読んでみる。
ところが、本文を読んでいると「Turbot War」なるワードを見つけてしまい、今度は「カレイ戦争」を検索してしまう。
そしたら今度は「グランドバンク」なるワードを見つけてしまい、それを検索してしまう。
どんどん本題からズレまくる😅
まぁ、右も左も知らん世界に足を踏み入れると、これでもかと言わんばかりに未知のワードが押し寄せてきますよね。
「検索地獄」が必ず待っている。
英語版 Wikipedia によると、turbot は「スコプタルムス科に属する扁平魚の比較的大きな種である。北東大西洋・バルト海・地中海の海域や汽水域固有の底魚で、重要な食用魚である」と書かれていました。
黒海に生息する turbot はしばしばこの種に含まれていたようですが、現在では Black Sea turbot や kalkan という独立した種とみなすのが一般的だそうです。
また、北西大西洋では真の turbot は見つかりません。その海域の turbot(Turbot War の対象となった魚です)は Greenland halibut とか Greenland turbot という物だそうです。
カレイ戦争(カラスガレイ戦争, Turbot War)は 1995年にカナダと EU の間で起こった漁業紛争です。
カナダ沖280海里の公海水域で操業していたスペイン船がカナダ当局に拿捕される、という事件があった。
これをキッカケにカラスガレイ戦争が勃発し、カナダ vs. EU 間の対立は激化したそうです。
カラスガレイ戦争については、たまたま学位論文を見つけてそれを読んでました。
「turbot の正確な意味を知りたい」から始まって、まさか学位論文にまで行き着くとは思いもしなんだ😅
一応、和英辞典でも調べてみました。
どうやらヒラメは flounder とか flatfish とか言うらしい。
面白いのは、カレイも flounder や flatfish と言うらしい!
へぇ〜、英語ではどうやらヒラメとカレイを区別していないのかもしれませんね。
ってぇことは、アレかな?
「左ヒラメに右カレイ」って、英語だと「Left flounder に right flounder」になっちゃうってこと!?
なんだよ、これじゃぁどっちがヒラメだかカレイだか区別つかねーじゃねーか!!
……と一瞬でも本気で考えてしまった私って、アホでしょうか😅
そんなことわざ、(たぶん)英語にあるわきゃないのに😅
さらに調べたら、ヒラメ・カレイの英語表現は結構多かった。
left-eyed flounder や right-eyed flounder とか。
plaice, fluke, sole なんて単語も見つかった。
他にもまだまだありそうな気がしますが、とりあえずここまで。
この駄文を書くにあたって未知の英単語が寄ってたかって私に襲いかかり、検索地獄を渡り歩いている間に私の思考回路はショート寸前になり、ヒットポイントも1しか残っていないのです😅
だらだらと中身のない駄文で失礼しました。
参考・参照
- The New Sudoku Players' Forum, 『New pattern: the Turbot Fish』,
http://forum.enjoysudoku.com/new-pattern-the-turbot-fish-t833.html - Wikipedia(英語版), 『Turbot』,
https://en.wikipedia.org/wiki/Turbot - 東村玲子『地域漁業管理機関に関する研究』pp.145-148,
国立国会図書館デジタルコレクション, https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3168781
更新履歴
- 2022. 2. 5.
- 新規公開。
- 2023. 3.31.
- ページ冒頭に難易度表記を追加。