【解法】Phistomefel's Theorem

 Phistomefel's Theorem は、2組の16マスに関する性質から生まれた解法です。
 2組の位置関係が意外に見えるので、ナンプレを数多く解いてきた方々でもこの性質は初耳かもしれません。
 この解法を使わせる問題はかなりの難問になることでしょう。
 (難易度:★★★★★)

1.この16マス達に秘密あり!

図 1-1

 図1-1 を見てみましょう。
 まぁ普通の完成図です😅
 これでもかと言うほど皆さんが見てきたヤツです。

 ここで、緑色と青色、2つの領域に注目しましょう。
 両者の位置関係は以下の通り。
 正確な説明は 図1-3 で補足しますが、今は 図1-1 の形で説明しましょう。

  • 緑色領域は4ブロックに分かれ、四隅の位置に4個ずつ矩形状に並んでいる。
  • 青色領域は上下左右端から3列目に存在し、5×5サイズで「□」を描くように並んでいる。
  • 緑色マスの属する列に青色マスは1つも存在しない。逆も同様。
  • 緑色領域の属する4つのブロックには青色マスが1個ずつ存在する。
  • どちらの領域も16マスでできている。

 実は、図1-1 の緑色&青色の領域には大きな秘密があるんです。
 その秘密とは一体何でしょう?
 中の数字達を調べると、何かに気付くかもしれない……。

図 1-2

 実は、こういう関係があるんです。

  • 緑色領域青色領域、中に入っている数字は完全に同じである。

 なんと、メンバーがピッタリ同じだという!
 これ、本当です。
 数字1〜9それぞれ数え上げてみるとわかります。
 2つの領域のメンバー16人は完全に一致しているんです。

 しかも、これは 前図1-1 だけの話ではありません。
 すべての完成図に言えることなんです。
 ナンプレアプリや専門誌など、完成図を見たら確認してみてください。
 マジで完全に同じメンバーよ!?

 ちなみに、これは証明できます。
 証明は別のページに譲るとしましょう。

 緑色と青色の位置関係からして、どう見ても数字に関係性がありそうには思えない。
 だから、この関係性は逆に意外かもしれませんね。
 いやはや、ナンプレにはまだまだ面白い性質があるものです☺️

この性質はあちこちに存在する
図 1-3

 ナンプレは、タテ列やヨコ列などを多少入れ替えても本質的には変わりません。
 だから、図1-1 のような形だけではなく、図1-3 などの形でも同じことが言えます。

 「同じメンバー16人」という関係は盤面のそこかしこに存在する。
 驚きの性質です。

2.実際に使ってみよう!

 前セクションで示した性質、これが解法 Phistomefel's Theorem の核となって話は進んでいきます。
 領域2つとメンバー16人、これが大事です。

 ……が、実は残念なお話がありまして。
 この性質、役に立ちにくいんです。
 なぜなら、単に「どっちの領域もメンバーは同じだよ〜😃」と言ってるだけだから。
 メンバーの具体的な内訳を教えてくれるわけではないし、領域内のどのマスにどのメンバーが入るのかも教えてくれない。
 マスに数字が確定しないし、候補数字も削れない。
 解いてる最中の方々にとって、有益な情報にならないんですね。

 ただ、2つの領域が数字で埋まるたびにメンバーの一部が露わになっていくことは確か。
 そして、数字が埋まれば埋まるほど、メンバー達の全容が明らかになっていく。
 そうなれば、この性質の使いどころがやって来そうだ。
 例えば、こ〜んな盤面はどうだろう?

図 2-1

 図2-1 を見てみましょう。
 2つの領域に入っているメンバーは……、

  • 緑色領域には8個の偶数が入っている。
  • 青色領域には8個の奇数が入っている。

 こういう状況です。
 これを見て、皆さんは大きな事実に気が付いたでしょうか?

……あれ?
メンバー16人、もぅ全員揃ってるじゃん!

 そうです。勢揃いしたんです。
 緑色領域にある偶数8個 + 青色領域にある奇数8個。
 この16個が全メンバーだ!

図 2-2

 というわけで、結論はこうなりました。

  • 残りすべての緑色マスに奇数が確定する。
  • 残りすべての青色マスに偶数が確定する。

 図2-2 のように、両方の領域から候補数字がボロボロ除去される。
 メンバー以外はサヨウナラ〜、というわけです。
 もぅもぅ盤面がバツだらけ!

 2つの領域が協力してメンバー達の正体を明かし、展開が大きく進んでいきました。
 あとは簡単に解き進められます。
 領域達が見事に連携して大成功を収めちゃいましたね😄

 一方の領域に入った数字は必ず他方の領域にも入る。
 この2つの領域の合わせ技が解法 Phistomefel's Theorem の大きな武器です。

 この解法の使い方がちょっと見えてきた。
 うまく領域を2つ選んで、なんとかメンバー16人を捕まえたいね!
 16人とまでは言わずとも、なるべく多く捕まえたいものです。
 まだ見ぬメンバーについては、2つの領域内の候補数字を照らし合わせれば正体を絞り込めそう!

3.サムナンプレで輝く解法だった !?

 ここからは余談です。

 解法 Phistomefel's Theorem は、2つの領域が相互に協力して話を進めていきました。
 意外な位置関係というのも相まってか、「ナンプレを解く」という視点では非常に面白い解法です。
 実際、『Logic Masters』というドイツのナンプレサイトでは、傑作 Classic Sudoku(001) が2020年8月に発表されています。
 前セクションの実例は、私がこの傑作のロジックを真似て作った物です。

 しかし、逆に「ナンプレを作る」という視点になるとこれが一変してしまう。
 この解法を仕込むのは非常に難しいんです。
 盤面を見ると、緑色領域が4つのブロックを半分くらい占拠しちゃってる。
 これが裏目に出ているのか、せっかくの仕込みがすぐに壊れてしまうんです。

図 3-1

 解法 Phistomefel's Theorem を使わせる問題を作る時、真っ先に思い付くロジックはおそらく「緑色に入った数字は青色にも入るよ〜!」でしょう。

 例えば、図3-1。
 緑色領域に数字8を全部置いて「さぁ青色領域に数字8が4つも入るぞ〜!」と解き手に促す。
 で、その数字8を解き手に見つけてもらうために、青色領域をテキトーに埋めて盤面中央にも数字8を置く。
 さぁ青色領域では★マスにしか8が入らんようになったぞ!
 Phistomefel's Theorem で数字8を見つけてね〜😃😃😃

 ところが!
 この仕込みは空振りに終わるんです。
 なぜなら、緑色青色に関係なく初歩的解法 Hidden Single で数字8が全部判明しちゃうから。

 トホホな結末だ🥺
 こういうふうに、安直な仕込みでは解き手に気付いてもらえない。
 この解法、なかなか仕込みどころが難しいんです。

 スタンダードなナンプレだと、Phistomefel's Theorem の上手な使い方はなかなか見つかりません。
 そこで、バラエティナンプレに目を向けてみる。
 サムナンプレや足し算アローナンプレなどでは、合計値を利用して数字を制限することができますね。
 これを利用して相手の領域にも制限を伝播させよう!
 そういう仕込み方があるんです。
 詳しくは 図3-2 にて。

 解法 Phistomefel's Theorem は、『Logic Masters Forum』というナンプレフォーラムの Neuer (?) Fund über Sudoku-Geometrie というスレッドから生まれました。
 名前の通り、発案者は Phistomefel 氏。
 氏はナンプレ盤面を考察していたところ、緑色&青色領域の関係性を発見したそうです。
 最初は両領域に入るメンバーの合計が等しいことに気付き、後にメンバーそのものが同じだと気付いた。
 その話をしたところ「この解法はサムナンプレでは有望に見える」といったコメントが返ってきたようで、後に氏は自作のサムナンプレを投稿しています。

 スレッドの後半になると、緑色&青色領域の関係を一般化させた話も現れた。
 ナンプレ盤面をラテン方陣とみなして、数学の「合同式」を交えた難しめの話が展開されています。
 その投稿では、その一般論を利用して X-Wing や Swordfish にも触れていました。
 Phistomefel's Theorem と Fish 系解法は意外なところで繋がっていた !?
 またひとつ、ナンプレの面白さが見つかった🥰

図 3-2

 いや〜、そのスレッドに私も感化されちゃいましてね。
 Phistomefel's Theorem をサムナンプレに仕込んでみたくなったので、ちょいと作ってみましたよ😃
 わかりやすく四隅に合計枠をあしらって、いかにも「使え」と言わんばかりの問題です。

 この問題のキモは、もちろん緑色領域にある合計枠。
 緑色領域にはすべて6以下の数字しか入れられないことがわかり、青色領域もすべて6以下の数字に制限される。
 となると、合計値15の枠が最初のカギになる。
 次は合計値9の枠と4国同盟。
 また、四隅緑色のどの小領域にも数字1と2が必ずどこかに入ることが後にわかります。だから、中央ブロック以外の白色マスには1も2も入らなくなります。
 他にもいろいろ仕込んでみました😊

 あっ。
 あくまで例題として作ったので、面白さは保証しません。
 難易度は上級レベルで、地道にゴリゴリ進む解き味。少なくとも軽やかには解けません(……と逃げを打つ😅)。

 たしかに、解法 Phistomefel's Theorem は数字に制限を強いるナンプレで輝けると思いました。
 サムナンプレはもちろん、1つ違いナンプレ、足し算アローナンプレ、偶数奇数ナンプレ、サーモナンプレなどもいけそう!
 アウトサイドナンプレだと緑色領域にヒントが集中しそうだから、工夫の余地アリか。

 なんだか面白い解法になりそうだ。
 もしバラエティナンプレの超上級問題を作る機会が来たら、この解法を取り入れてみようかな😃

参考・参照

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