1.Mutant Fish って何ぞや?
Swordfish では「ヨコ3列において数字1の入り得るマスを見ると、それらがタテ3列にも並んでいる!」というようなところから論理展開が始まりました。
ヨコ3列に対してタテ3列ということで、こういう言い方ができます。
Swordfish はヨコ3列 vs. タテ3列という構図になっている。
ノーマルな Fish は完全な「ヨコvs.タテ」なんですね。
そして、両者の片方にブロックが割り込んでできた解法が Franken Swordfish というものでした。
例えば、こんな感じです。
Franken Swordfish はヨコ2列+ブロック1個 vs. タテ3列というような構図になっている。
Franken Fish は「ほぼ ヨコvs.タテ」と言えるでしょう。
それに対して、Mutant Fish には「ヨコvs.タテ」という構図自体がありません。
タテ列・ヨコ列・ブロック、何でもアリ!
この3種類が自由に絡み合っているんです。
例えば、Mutant Jellyfish だとこんな組み合わせなんかがあったりする!
Mutant Jellyfish はタテ2列+ブロック2個 vs. タテ1列+ヨコ2列+ブロック1個というような構図。
んも〜めっちゃ複雑でしょう!
Mutant Fish は本当に複雑な解法です。実際のナンプレ盤面で Mutant Fish に出会える確率はほぼありません。
Mutant Fish は総称で、具体的には Mutant Swordfish や Mutant Jellyfish などと呼ばれます。
このページでは、Mutant Swordfish と Mutant Jellyfish を解説していきます。
2.Mutant Swordfish
Fish 系の解法を理解するにあたって、基礎となる概念があります。
それは、ベースセットとカバーセットの2つです。
この2つが協力し合って論理展開されていき、候補数字の大量除去が起こります。
このページでは、その2つも説明しながら Mutant Fish の解法を解説していきます。
……とその前に、用語を1つ紹介しましょう。
タテ列・ヨコ列・ブロックをひっくるめた総称があります。それを house と言います。
これは英語のナンプレ解説サイトでも使われている用語で、英語の解説を読むと house というワードがやたらと現れます。
いちいち「タテ列・ヨコ列・ブロック」と区別して書かなくていいから、めっちゃラクなんよ〜😊
2-1.どういう解法?
図2-1、3個の青色 house(ヨコ2列&タテ1列)を見てみましょう。
それぞれ数字1の入り得るマスを探したら、★の10カ所しかなかったとします。
この10個の★マスはすべて青色 house 内部に存在しています。
それはもちろん当たり前😊
しかし、これらの★マス達にはもうひとつ特徴があるんです。
どんな特徴かわかりますか?
実は、3個の house が10個の★をすべて含んでいるんです。
タテ1列とブロック2個で見事スッポリ!
というわけで、前図2-1 からはこういう状況になりました。
- 3個の青色 house において、数字1は★マスにしか入らない。
- そして、その★マスすべてを3個の黄色 house で覆い尽くせた!
元々、10個の★マスはすべて青色 house に属しています。
しかし、それと同時に黄色 house にも属している。
こういうわけです。
青色と黄色、2つのセットが出てきましたね。
この2つがキーとなって、論理展開が繰り広げられていくことになります。
ここで、ベースセットとカバーセットの説明をしましょう。
図2-2 の状況になった時、最初の青色 house を全部まとめて ベースセット と呼びます。
そして、★マスを覆い尽くした黄色 house を全部まとめて カバーセット と呼びます。
図2-2 ではベースセットもカバーセットも3個の house で構成されていますが、実は、これはすごく重要です。
ベースセットとカバーセット、両者の house の個数は必ず同じでなければいけません。
一方が3個なら他方も3個です。
さて、前図2-2 からはどういう結論が得られるんでしょう?
こういう結論になるんです。
- カバーセットにおいて、★以外のマスに数字1は入らない。
つまり、★以外のすべての黄色マスに数字1は入らない。
図2-3 だと×印のマスが該当します。
すっごくバツバツしまくってます。★以外の黄色マス、全滅!
Fish 系ではカバーセットがとにかく全滅しまくるんですが、Mutant Fish とて例外ではありません。
なぜ、こういう結論になるんでしょう?
それを解説しましょう。
今、カバーセット(黄色 house)を一旦忘れて、3個の青色 house に試しに数字1を1個ずつ入れてみることにします。
さて、数字1の入れ方は何通りあるでしょう?
答えは8通りです。
全パターンをこのページに挙げてみました。図2-4 はその一例です。
この8通りには大きな共通点があるんです。
それは……
- どの黄色 house を見ても、数字1は必ず★マスに入っている。
なんと!
★以外の黄色マスに数字1が入っていないのです。
青色 house に数字1を入れていっただけなのに、どうしても黄色 house はこの状態になってしまう。
黄色 house において★以外のマスに数字1が入る可能性はないんですね。
図2-3 の結論通りになりましたね😄
これが Mutant Swordfish です。
上記の例では10個の★が青色 house 内部に並んでいました。
しかし、本当は★が少なくてもかまいません(図2-5)。
それでも 前図2-4 と同じ論理展開ができます。
大事なのは、ベースセット内部にあるすべての★マスがカバーセット内部にも存在するということです。
それさえ満たしていれば、★の個数は関係ありません。
ベースセットにおいて、house 同士が交わることがあります。
例えば、タテヨコの列が交差したり、列とブロックが重なったり。
ベース house が交わっている場合、満たさなければいけない条件があります。
それは次の条件です。
- 交差箇所に★は1つもない。
つまり、どの★マスもただ1つの house に属している。
図2-6 だと2カ所で交差していますが、そのマスに★はありません。
複数のベース house に属している★マスは1つもないんですね。
もし交差箇所に★が存在してしまうと、Fish の性質が根本的に変わります。
このセクションで述べた理屈は一切通用しなくなり、まったく異なる結論に至るんです。
ちなみに、ベースセットの交差箇所に★がある場合、その★マスのことを endofin と呼びます。
詳細については Endofin のページをご覧ください。
実は、カバーセットに対しても 前図2-6 と同じことが言えます。
カバーセットにおいて house 同士が交わることがあります。
その場合、満たさなければいけない条件が1つあります。
それは次の条件です。
- 交差箇所に★は1つもない。
つまり、どの★マスもただ1つの house に属している。
カバーセットに交差箇所がある場合は注意を払わないといけませんが、幸いにも 図2-7 のようにカバーセットには交差箇所が1つもなく何の心配もありません。
2-2.実際に使ってみよう!
次は、実際の盤面で Mutant Swordfish を使ってみましょう。
図2-8 では、とあるマスに数字が判明します。
それを Mutant Swordfish で突き止めてみます。
ここでは数字7に注目して、7の入り得るマスを探してみます。
3個の青色 house(タテ列・ヨコ列・ブロック各1個)に注目しましょう!
各 house において★にしか数字7は入りません。
さて、すべての★マスを覆い尽くせるカバーセットはあるでしょうか……?
ありました!
黄色のタテ1列・ヨコ1列・ブロック1個がすべての★マスを含んでいますね。
というわけで、前図2-9 からはこういう状況になりました。
- 3個の青色 house において、数字7の入り得るマスは★だけだった。
- そして、その★マスすべてを3個の黄色 house で覆い尽くせた!
ベースセットは青色タテ列・ヨコ列・ブロック各1個です。
カバーセットは黄色タテ列・ヨコ列・ブロック各1個です。
さぁ、カバーセットが見つかりました。
セクション2-1で説明した結論を適用してみましょう。
- カバーセットにおいて、★以外のマスに数字7は入らない。
つまり、★以外のすべての黄色マスに数字7は入らない。
図2-11 だと×印のマスに数字7は入りません。
いろんなマスにバツがつきました。
7の入れられないマスが大量発生しましたね!
うまく Mutant Swordfish が使えましたね!
もぅちょっと解き進めてみましょう。
図2-11 で×印のついたマスのうち、1つのマスに数字が判明します。
図2-11 の灰色エリア全域に目を向けると、7と8以外の数字が既に入っています。
そして、図2-11 での結果によって×印のマスに7は入れられません。
それを総合すると、8が確定するマスがあるんです。
3.Mutant Jellyfish
次は、Mutant Jellyfish を解説していきましょう!
本質的には Mutant Swordfish と変わりないので、理解はそれほど難しくはありません。
3-1.どういう解法?
図3-1、4個の青色 house(ヨコ2列&ブロック2個)を見てみましょう。
それぞれ数字1の入り得るマスを探したら、★の14カ所しかなかったとします。
もちろん、これらの★マスはすべて青色 house 内部に存在しています。
実は、この14個のマスにはもうひとつ特徴があるんです。
どんな特徴でしょう?
実は、4個の house が14個の★マスをすべて含んでいるんです。
タテ3列とヨコ1列で見事スッポリ!
というわけで、前図3-1 からはこういう状況になりました。
- 4個の青色 house において、数字1は★マスにしか入らない。
- そして、その★マスすべてを4個の黄色 house で覆い尽くせた!
元々、14個の★マスはすべて青色 house に属しています。
しかし、それと同時に黄色 house にも属している。
こういうわけです。
青色と黄色、2つのセットが出てきましたね。
この2つがキーとなって、論理展開が繰り広げられていくことになります。
ここで、ベースセットとカバーセットの説明をしましょう。
図3-2 の状況になった時、最初の青色 house を全部まとめて ベースセット と呼びます。
そして、★マスを覆い尽くした黄色 house を全部まとめて カバーセット と呼びます。
図3-2 ではベースセットもカバーセットも4個の house で構成されていますが、実は、これはすごく重要です。
ベースセットとカバーセット、両者の house の個数は必ず同じでなければいけません。
一方が4個なら他方も4個です。
さて、図3-2 からはどういう結論が得られるんでしょう?
こういう結論になるんです。
- カバーセットにおいて、★以外のマスに数字1は入らない。
つまり、★以外のすべての黄色マスに数字1は入らない。
図3-3 だと×印のマスが該当します。
この場合もカバーセット全域にバツが入っちゃう。★以外の黄色マス、全滅!
なぜ、こういう結論になっちゃうんでしょう?
それを解説しましょう。
今、カバーセット(黄色 house)を一旦忘れて、4個の青色 house に試しに数字1を1個ずつ入れてみることにします。
さて、1の入れ方は何通りあるでしょう?
答えは16通りです。
全パターンをこのページに挙げてみました。図3-4 はその一例です。
実は、この16通りには大きな共通点があるんです。
- どの黄色 house を見ても、数字1は必ず★マスに入っている。
なんと!
★以外の黄色マスに数字1が入っていない!
青色 house に数字1を入れていっただけなのに、どうしても黄色 house はこの状態になってしまいます。
そのため、カバーセットにおいて★以外の黄色マスに1が入る可能性はありません。
図3-3 の結論通りになりましたね😄
これが Mutant Jellyfish です。
上記の例では14個の★マスが青色 house 内部に並んでいました。
しかし、本当は★が少なくてもかまいません。
それでも 前図3-4 と同じ論理展開ができます。
大事なのは、ベースセット内部にあるすべての★マスがカバーセット内部にも存在するということです。
それさえ満たしていれば、★の個数は関係ありません。
図2-6 でも説明しましたが、Mutant Jellyfish においても同じことが言えます。
Mutant Fish においてベース house が交差している場合、次の条件を満たさなければいけません。
- ベースセットにおいて、どの★マスもただ1つの house に属する。
図3-1 のベースセットもこの条件を満たす必要があります。
ただ、幸運にもベースセットには交差箇所が1つもないので(図3-6)、ここでは上記の条件を考慮する必要はありません。
図2-7 でも説明しましたが、Mutant Jellyfish においても同じことが言えます。
Mutant Fish においてカバー house が交差している場合、次の条件を満たさなければいけません。
- カバーセットにおいて、どの★マスもただ1つの house に属する。
図3-7 だと3カ所で交差していますが、そのマスに★はありません。
複数のカバー house に属している★マスは1つもないんですね。
ちなみに、カバーセットの交差箇所に★がある Fish のことを Cannibalistic Fish と呼びます。
詳細については Cannibalism のページをご覧ください。
3-2.実際に使ってみよう!
次は、実際の盤面で Mutant Swordfish を使ってみましょう。
図3-8 では、とあるマスに数字が判明します。
それを Mutant Jellyfish で突き止めてみます。
ここでは数字8に注目して、8の入り得るマスを探してみます。
青色のタテ2列とヨコ2列に注目しましょう!(図3-9)
数字8の入り得るマスはそれぞれ★のみです。
さぁ、すべての★マスを覆い尽くせるカバーセットはあるでしょうか……?
ありました!
図3-10、4個の黄色ブロックがすべての★マスを含んでいますね。
というわけで、前図3-9 からはこういう状況になりました。
- 4個の青色 house において、数字8の入り得るマスは★だけだった。
- そして、その★マスすべてを4個の黄色 house で覆い尽くせた!
ベースセットは青色タテ2列&ヨコ2列です。
カバーセットは黄色ブロック4個です。
さぁ、カバーセットが見つかりました。
セクション3-1で説明した結論を適用してみましょう。
- カバーセットにおいて、★以外のマスに数字8は入らない。
つまり、★以外のすべての黄色マスに数字8は入らない。
さぁ、図3-11 もバツだらけになりました。
数字8の入れられないマスがめっちゃ多い!
うまく Mutant Swordfish が使えましたね!
もぅちょっと解き進めてみましょう。
図3-11 で×印のついたマスのうち、1つのマスに数字が判明します。
図3-12 の灰色エリア全域に目を向けると、7と8以外の数字が既に入っている。
そして、図3-12 で示した結論によって×印のマスに8は入れられない。
それを総合すると、7が確定するマスがあるんです。
4.こんな Mutant Fish、見つけられる?
ここからは余談です。
これまで、Mutant Swordfish と Mutant Jellyfish を紹介しました。
このセクションでは、もっと巨大な Mutant Fish を1つ紹介します。
図4-1 の盤面。
実は、この中に Mutant Fish のベースセットがあるんです。
どこにあるかわかりますか?
目を凝らして見ても見当がつかないと思います。
「候補数字5に注目してベースセットを見つけてくださ〜い」と言われたらどうでしょうか。
それでも見つけるのは至難の業です。
該当のベースセットは 図4-2 の通りです。
うっわ、すっごく青々しい!
タテ1列+ヨコ3列+ブロック2個。
なんと、6つの house でできたベースセットなんです。
もちろん、Mutant Fish が成立するためには、6つの house からなるカバーセットも必要です。
今度はカバーセットを探してみましょう!
……とは言っても、これも見つけるのは結構大変。
こんなにも散らばった5をうまく6個の house で覆い尽くしてみましょう!
ある意味、これもパズルですね😊
該当のカバーセットは 図4-3 です。
これもまた凄まじい黄色っぷり!
タテ4列+ヨコ2列のカバーセットです。
この場合でも、今まで述べた結論が成り立ちます。
カバーセットから候補数字5をことごとく除去できるんです。
図4-3 の×印です。
5以外の黄色マス、全滅!
house が6つあるので、この解法は Mutant Whale と呼ばれます。
ホエール! Whale ですってよ奥さん!
こんな解法を使うのは一生に一度あるかないか。
文字通り「突然変異したクジラ」のような、まさに稀有な存在と言えるでしょう。
実際にこんな解法を使って自力で超上級ナンプレを解いた人がいたとしたら、その人はもぅ一生ドヤ顔で自慢していいと思う。
更新履歴
- 2022. 2. 5.
- 新規公開。
- 2023. 3.31.
- ページ冒頭に難易度表記を追加。