1.役に立たない Finned X-Wing?
まずは、Finned X-Wing の話をしましょう。
基本的な Finned X-Wing をご存じの方々は 図1-2 から読み始めてくださ~い😊
図1-1 は解法としての Finned X-Wing です。
状況はこんな感じでしたね。
- 青色ヨコ2列において、数字1の入り得るマスは★のみだった。
- そして、その★マスを黄色タテ2列で覆ってみた。
- すると、★マスが2個漏れてしまった。
漏れた2マスを fin と呼びました。
カバーセットに属している★マスAとすべての fin がブロックに同居している、というのも特徴です。
この Finned X-Wing からは、こういう結論が得られましたね。
- カバーセット内部の★以外のマスのうち、すべての fin と同じブロックに属しているマスがある。そのマスに数字1は入らない。
図1-1 の Finned X-Wing は何らかの結論をもたらす。
これはれっきとした有用な Finned X-Wing なんですね。
さて、もうひとつ Finned X-Wing を紹介しましょう。
図1-2 です。
これも状況は同じです。
- 青色タテ2列において、数字1の入り得るマスは★のみだった。
- そして、その★マスを黄色ヨコ2列で覆ってみた。
- すると、★マスが1個漏れてしまった。
漏れた1個の★マスが fin ですね。
図1-2 も立派な Finned X-Wing です。
しかし!
これは今までのとは違います。
前図1-1 とは違って、カバーセットに属している★マスはどれも fin とブロックに同居していません。
果たして、この Finned X-Wing からはどんな結論が出るんでしょうか?
実は、この Finned X-Wing からは有効な論理展開ができません。
というわけで、結論は何ひとつ出ません。
つまり、この Finned X-Wing はただ存在しているだけ😓
ひどい言い方すると……
何の役にも立たない Finned X-Wing なんです。
ただの置物。
ああぁ、「何でそんなモン紹介したんだw」ってツッコまれそう😅
まぁまぁまぁまぁ、みなさん落ち着いてください😅
もちろん、ちゃんと理由はあります。
実は、この形から fin 付近に手を加えていって Kraken Fish という立派な解法になっていくんです。
それは次セクションで解説していきましょう。
2.どういう解法?
このセクションでは、ナンプレ解説サイトでよく見かける形の Kraken Fish を解説します。
Kraken Fish の詳細についてはセクション4をご覧ください。
図2-1、★の5マスで Finned X-Wing ができています。
そして、fin のすぐそばにピンク色のヨコ列がありますね。
詳しい状況は次の通りです。
- 青色タテ2列において、数字1の入り得るマスは★のみだった。
- その★マスを黄色ヨコ2列で覆って Finned X-Wing ができた。漏れた★マス1個は fin。
- さらに、ピンク色ヨコ列において数字1の入り得るマスは▲の2マスのみ。
- 片方の▲と fin は同じブロックに属している。
前セクションでは「役に立たない」と言われた Finned X-Wing ですが、それにピンク色ヨコ列が加わりました。
まるで fin が右側の▲にまで伸びたような感じですね。
さて、前図2-1 からはどういう結論が得られるんでしょう?
こうなります。
- カバーセット内部の★以外のマスのうち、fin とは無関係の▲マスと列を共有しているマスがある。そのマスに数字1は入らない。
図2-2 だと×印の2マスが該当します。
この2マスはカバーセット内部にあり、右側の▲マスとタテ列を共有しています。
この2マスに数字1を入れられなくなるんです。
なぜこういう結論になるんでしょう?
それを解説しましょう。
とりあえず言えるのは、次のどちらかが必ず成り立つということです。
- fin に数字1が入る。
- fin に数字1は入らない。
この両者についてそれぞれ論理展開していきましょう。
まずは前者。
この場合、fin とブロックを共有している▲マスに数字1は入れられません。
そのおかげで、ピンク色列では右側の▲マスに数字1が確定します。
というわけで、×印マスに数字1は入りません(図2-3)。
次に後者。
この場合は、fin がすべてなくなります。
つまり、Finned X-Wing はただの X-Wing に様変わり!
ということは、★以外のすべての黄色マスに数字1が入らなくなります。
★以外の黄色マス、全滅!(図2-4 ×印)
図2-3 と 図2-4、両者のうち片方が成り立ちます。
2つの図を見比べてみると……共通して×印のついているマスがありますね!
そのマスに数字1は入らないということが言えるんです。
具体的には 図2-5 の2マスです。
図2-2 の結論通りになりましたね😊
これが Kraken Fish です。
上記では、わかりやすいように1個の fin で説明しました。
実は、fin はブロック内部に2個あってもかまいません。
また、fin と同じブロックに▲マスが2個あってもOKです(図2-6)。
この場合の結論も同じです。
次のどちらかが成り立つので、両者をそれぞれ論理展開していけば同じ結論にたどり着きます。
- fin のどちらかに数字1が入る。
- どの fin にも数字1は入らない。
3.実際に使ってみよう!
次は、実際の盤面で Kraken Fish を使ってみましょう。
図3-1 では、とあるマスに数字が判明します。
それを Kraken Fish で突き止めてみます。
ここでは数字9に注目して、9の入り得るマスを探してみます。
青色&ピンク色の3列に注目しましょう。
こういう状況になっています。
- 青色ヨコ2列において、数字9の入り得るマスは★のみだった。
- その★マスを黄色タテ2列で覆って Finned X-Wing ができた。漏れた★マス1個は fin。
- さらに、ピンク色タテ列において数字9の入り得るマスは▲の2マスのみ。
- 片方の▲と fin は同じブロックに属している。
この状況だと Kraken Fish が使えますね!
早速使いましょう!
前セクションでの結論を適用すると、こうなります。
- ×印の2マスに数字9は入らない。
×印の2マスはカバーセット内部にあり、fin とは無関係の▲マスとヨコ列を共有しています。
その2マスに9は入らないということです。
fin に数字9が入った場合、下の▲には9は入らず、上の▲に9が入ります。
fin に数字9が入らなかった場合、Finned X-Wing はただの X-Wing に変化し、すべての黄色マスに9が入らなくなります。
どちらにしろ、×印の2マスに数字9は入らないんですね。
うまく Kraken Fish が使えましたね!
もぅちょっと解き進めてみましょう。
×印の2マスのうち、右側の方に注目しましょう。
そのマスを含んでいる列やブロック全域に目を通すと、そのマスの候補数字は8と9しかないことがわかります。
そして、×印マスに9が入らないことも既に判明しています。
というわけで、8が確定しちゃいました😄
4.本当の Kraken Fish
多くのナンプレ解説サイトでは、セクション2のような形を Kraken Fish として紹介しています。
しかし、あの形だけが Kraken Fish だというわけではありません。
実は Kraken Fish の形は多岐に渡ります。
これまで説明はしませんでしたが、Kraken X-Wing や Kraken Swordfish などの具体名も存在します。
さて、どういったものが Kraken Fish になるんでしょう?
何を以て「Kraken Fish」を名乗れるのか。
それを解説していきましょう。
4-1.これが Kraken Fish です
一言で言うと、Kraken Fish は「fin 付き Fish に何かが付随した物」です。
fin 付き Fish とは言っても、Finned X-Wing や Finned Swordfish などとは別物と考えた方がいいでしょう。
セクション1で挙げたように Fish 単体ではおそらく役に立ちません。しかし、他のマス・タテ列・ヨコ列・ブロックなどさまざまな物が付随して役に立つようになるんです。
セクション2で使った Kraken Fish をもう一度(図4-1)。
元々、青色&黄色の Finned X-Wing において、fin(青色の★)と×印マスは半分しか関わりがありませんでした。
次の関係しかなかったんです。
- fin に数字1が入らないならば ×印マスに数字1は入らない。
ところが、fin にピンク列が付随し、▲が2個置かれた。
そうしたら、次の関係も持つようになったんです。
- fin に数字1が入っても ×印マスに数字1は入らない。
見た目で言うと、fin からピンク列に沿って触手が伸びたような感じ?
イカの足のようにニョキっと(Kraken だけに?)。
その触手の先端が×印マスの真下に届き、fin と×印マスが残り半分の関係も持つようになったんですね。
んで、「×印マスに1は入らない」という最終結論にたどり着いたんです。
別の見方をしてみましょう。
セクション2では、「fin に数字1が入る/入らない」の2つに場合分けして論理展開しましたね。
どちらの場合も「赤色×印のマスに数字1は入らない」というまったく同じ結論を得ることができたわけです。
まったく同じ結論を得た。
ここが大事です!
数字nで構成される Finned Fish において、fin に数字nが入ろうが入るまいがまったく同じ結論に至る。
Kraken Fish にはこういう性質があるんです。
Finned Fish に何かが付随する。
そのおかげで、fin の真偽にかかわらず同じ結論が得られる。
これが Kraken Fish なんです。
4-2.いろんな形があるよ!
Kraken Fish は実に数多くのパターンがあります。
ここでは、実際の盤面を2つ挙げて解説していきます。
まずは1つめの例です。
図4-3 は数字6の Kraken Swordfish です。
青色ヨコ3列がベースセット、黄色タテ3列がカバーセットです。
fin はA, Bの2個ありますが、この位置関係では Finned Swordfish は使えません。
この Fish、実は結論が1つ得られます。
- マスXに数字6は入らない。
なぜかと言うと、fin に数字6が入ろうが入るまいが、必ずこの結論に至るからなんです。
ちょっと検証してみましょう。
まず、どの fin にも6が入らなかった場合、この Kraken Swordfish はただの Swordfish に変わります。カバーセットの黄色マス全部に6が入らなくなるから、上記の結論が成り立ちますね。
次に、マスBに6が入った場合は上記の結論は明らかです。
あとは、マスAに6が入った場合はどうなるか。
実は、マスAに6が入った場合も簡単です。
中央ブロックでは6が確定するため、マスXに6は入りません。
どれかの fin に数字6が入っても、マスXに6は入らない。
すべての fin に数字6が入らなくても、マスXに6は入らない。
まったく同じ結果になった!
よって、「マスXに6は入らない」という結論になるんです。
図4-3 の結論通りになりましたね😊
この例では、Finned Swordfish に中央ブロックが付随して Kraken Swordfish になったと言えますね。
例をもうひとつ。
図4-5 は数字7の Kraken X-Wing です。
青色ヨコ2列がベースセット、黄色タテ2列がカバーセットです。
fin はA, B, Cの3個。ずいぶん多い!
こんなにも fin が散らばってちゃぁ、解法 Finned X-Wing なんて使えるわけがありません😅
実は、この Fish も結論が1つ得られます。
fin に数字7が入ろうが入るまいが、必ず次の結論に至るんです。
- マスXに数字3は入らない。
ちょっと検証してみましょう。
次の3つに分けて検証してみます。
- マスAかBに数字7が入った場合。
- マスCに数字7が入った場合。
- どの fin にも数字7が入らなかった場合。
まずは、マスAかBに数字7が入った場合。
この場合、上辺付近の2マスに数字が確定します。
最上段に1が確定。続いてその下に3が確定。
数字3が確定したおかげで、マスXに3は入りません。
次に、マスCに数字7が入った場合。
この場合、なんと、Pの2マスで2国同盟(Naked)が発生!
そのあおりを受けてマスQには数字5を入れられなくなりました。
というわけで、Qに数字3が確定します。
あら、この場合もマスXに3は入らなくなっちゃった。
前図4-6 と同じ結果です。
最後は、どの fin にも数字7が入らなかった場合。
この場合、Finned X-Wing はただの X-Wing に様変わり!
X-Wing の性質により、2マスP, Qのどちらかに7が入ることになります。
ただ、P, Qどちらであっても、中央ブロックでは7が確定しますね。
そのおかげで、上辺付近で数字1, 3と立て続けに確定します。
おぉ、この場合もマスXに3は入らない!
なんと、全部が全部、同じ結果になった!
結局、どれかの fin に数字7が入っても、すべての fin に数字7が入らなくても、「マスXに3は入らない」というまったく同じ結論に至ったわけです。
図4-5 の結論通りになりましたね😊
この例では、上辺2マス, 中央ブロック, ALS が Finned X-Wing に付随して Kraken X-Wing となりました。
最初の例では、Kraken Fish の数字6に対する結論で、しかもカバーセット内部に生じました。
ま、これは Fish 系の結論としてはごく普通です。
ところが、2つめの例では Kraken Fish とは無関係な数字3に対する結論であり、しかも Fish とは無関係な場所に生じました。
Kraken Fish ではこういうことも起こり得るんです。
また、説明はしませんでしたが、fin 付きの Franken Fish/Mutant Fish に対しても Kraken は存在します。
Kraken Franken Swordfish とか Kraken Mutant Jellyfish なんてのがあったりする。
もはや名前がワケわからん😅
他の Fish 系とは比べ物にならないほどパターンが豊富にあるんです。
さすが "Kraken" ですね。スケールが違いすぎる。
参考・参照
- The New Sudoku Players' Forum, 『Kraken Fish』,
http://forum.enjoysudoku.com/kraken-fish-t5143.html
更新履歴
- 2022. 2. 5.
- 新規公開。
- 2023. 3.31.
- ページ冒頭に難易度表記を追加。