【コラム】数字パターンでジグソーパズル

 このページでは、解法 Pattern Overlay Method の考え方を利用します。
 各数字のパターンを洗い出し、それらをピースのように扱ってジグソーパズルっぽく盤面にはめていく。こういう解き方をします。
 このページの内容はもぅめっちゃくちゃ難しい!
 「私はこのページを読む運命を背負っている!」そういう星の下に生まれた方々だけご覧ください。
 (難易度:★★★★★★)

1.飛び地だらけのピースたち

 このページでは、ナンプレをジグソーパズルの視点で解いていきます。
 ジグソーパズルと言うからにはピースが必要なわけですが、はて、ナンプレのピースとは何ぞや?
 まずは、それを説明しましょう。

図 1-1

 図1-1、飛び飛びの9マスに数字1が書かれていますね。
 これがピースです。

 あっ。
 これ、「数字1と書かれた9枚のピース」ではありません!
 9つの「1」が書かれた1枚のピースなんです。

 どう見ても1枚に見えませんよね。飛び地だらけだし😅
 でも、これで「1枚」なんです。

図 1-2

 もちろん、数字1以外にもピースは作れます。
 他の数字でもピースを作ってみました。
 数字1から9まで、全部で9枚のピースがありますね。

 この9枚を盤面にハメてみたいと思います。
 さぁどうなるでしょう……?

図 1-3

 こうなりました(図1-3)。

 おぉ!
 ピッタリ!
 ナンプレが完成しよった!

 なんだかオモチャのようですね☺️
 LEGOブロックとかをカチャッカチャッとハメて遊ぶような、そんな感じ。
 子供の頃は私もよく LEGOブロックとかで遊んでいました。

 こんな感じで、数字をピースに見立ててナンプレを考察していく。
 こういう趣旨でナンプレを語ってみようと思います。

2.ピースを作ってみよう!

 ここからは、実際の盤面で考察していきましょう。
 実は、ジグソーパズル視点からのアプローチは Digit patterns and jigsaw puzzles というページで既に示されています。
 そのページの内容を私なりの解釈で解説していこうと思います。

 さて。
 ジグソーパズル的にナンプレを考察すると言っても、ジグソーパズルならピースを用意しないと話になりません。
 じゃぁ、どうやってピースを調達するんでしょう?
 そこで出てくるのが Pattern Overlay Method という解法なんです。
 数字の入り方のパターンを探せばそれでOK! 見つかったパターンがそのままピースになるんです。

図 2-1

 図2-1 の盤面で解説していきます。
 初期状態からマスを埋めるだけ埋めた図です。

 この状態から各数字のパターンを探しましょう!

図 2-2

 例として、数字6のパターンを探してみます。

 数字6の入り得る場所は 図2-2 の★マスですね。
 試しに数字6を★マスにアレコレ入れてみて、数字6の入り方を全パターン洗い出しましょう。

図 2-3

 数字6のパターンは全部で4通りありました。
 図2-3 です。
 つまり、数字6のピースは4枚見つかった。

 ここで、あることに気付きます。
 完成図に現れる数字6のパターンって、たった1通りしかないですよね。
 なのに、図2-3 にはピースが4枚もある。
 ということは、もしかして……

ピース3枚はフェイクなの?

 そうです。
 ピースをたくさん拾えても、その中に正しいピースはたった1枚しかないんです。
 もちろん、他の数字も同じです。正解のピースはただ1つ。

 解法 Pattern Overlay Method を使えば、ジグソーのピースに困ることはありません。
 可能なピースをすべて集められる。
 しかし、今度はその集めた中から正解のピースを各数字1枚ずつ見つけなきゃいけない。
 その作業が待っているんです。

3.ピース名を盤面に書こう!

図 3-1

 図3-1 の状態で、各数字のパターン数は次の通りです。

【数字1】
7パターン。
【数字2】
6パターン。
【数字4】
7パターン。
【数字5】
2パターン。
【数字6】
4パターン。
【数字7】
2パターン。
【数字9】
10パターン。

 数字3と8は既に全部入っているので、1パターンしかありません。
 考慮からはずしましょう。
 上記の7種類の数字を考察していきます。

 図3-1 のパターン数を合計すると、全部で 38個あります。
 ピースは 38枚。その中から正解を7枚見つけなければいけません。

 もちろん、シラミ潰しに探したってかまいません。できなくはない。
 ただ、やっぱり 38分の7はキツイかな。
 ナンプレは数理系のパズルですから、数理系らしくここは正解のピースを論理的に突き止めてみましょう!

 まずは、このセクションで下準備をします。

図 3-2

 まず、各ピースに名前を付けましょう。
 例えば、数字1はピース7枚あるので、1a, 1b, ……, 1g とします。
 他も同様に名付けます。

【数字1】
1a, 1b, 1c, ……, 1f, 1g
【数字2】
2a, 2b, 2c, ……, 2f
【数字4】
4a, 4b, 4c, ……, 4f, 4g
【数字5】
5a, 5b
【数字6】
6a, 6b, 6c, 6d
【数字7】
7a, 7b
【数字9】
9a, 9b, 9c, ……, 9h, 9i, 9j

 数字6のピースは前セクションの 図2-3 で具体的に挙げてますね。
 それぞれ 6a, 6b, 6c, 6d と名付けています。

 図3-2 は数字9のピースですが、これには「9e」という名前が付いています。

図 3-3

 さて、すべてのピースに名前が付きました。
 今度は、盤面の空きマスにピース名を書き込んでいきます。

 各ピースにおいて数字の入っているマスを見て、それと同じ位置の空きマスにピース名を書きます。
 例えば、前図3-2 のピース 9e には数字9が9カ所ありますね。
 その9カ所と同じ位置の空きマス(黄色)に「9e」と書き込むわけです。

 1a から 9j まですべて書き込んだら 図3-3 の通りになりました。
 表記短縮化のため、数字ごとにまとめています。ご注意ください。

 ……いやぁすっごいゴッチャゴチャ😅
 まぁ 38ピースもあるんだし、しゃーないか。

 さぁ、これでスタートラインに立ちました!
 ピース探しの旅がいよいよ始まります。

4.パターンが消える!

 このセクションからは、正解のピースを見つけていきます。
 具体的には、論理を駆使して不正解のピースを見つけ、そのピースをどんどん破棄していきます。
 最終的に残った物が正解! そういう要領です。
 残り物には福がある。

 まずは、簡単な作業でピースを3枚破棄できます。
 本格的な作業は次セクションにて。

図 4-1

 図4-1、緑色2マスを見てみましょう。
 特に、数字2に注目します。
 数字2のパターンは全部で6個ありますが、2a〜2f すべて登場しているんですね。

 すると、こういうことが言えるんです。

  • 緑色2マスのどちらかに必ず数字2が入る。

 これは何を意味するんでしょう?

図 4-2

 緑色マスのどちらかに必ず数字2が入る。
 言い換えると、「緑色マス全部を数字9で埋め尽くす」ことは不可能になりました。
 そうなると、数字9についてこういうことが判明するんです。

  • パターン 9c, 9g は却下される。

 なぜか?
 パターン 9c, 9g は緑色マス全部を数字9で埋め尽くす形をしているからです。
 9c も 9g も数字2とは整合性を取れず、矛盾を起こしてしまう。
 だから、2つとも正解になり得ないんです。

 ピース 9c と 9g を破棄しましょう。

図 4-3

 今度は黄色2マスを見てみましょう。
 数字5にも注目します。
 数字5のパターンは全部で2個ありますが、5a, 5b すべて登場していますね。

 というわけで、こうなります。

  • 黄色2マスのどちらかに必ず数字5が入る。
図 4-4

 となると、不可能なパターンが新しく見つかるんです。

  • パターン 9i は却下される。

 理由は同じです。
 パターン 9i は黄色マス全部を数字9で埋め尽くす形をしているからですね。

 ピース 9i も不正解になりました。

図 4-5

 というわけで、9c, 9g, 9i の3つが破棄されることになります。
 盤面からも消去してしまいましょう!
 図4-5 のようになりました。

 とりあえず、少しだけピースを破棄できましたね!
 今のところ、残りのピースは 35枚。
 次のセクションでは、ここからピースをゴッソリ破棄していきます。

5.そして舞台は論理学へ……

 もぅもぅもぅ、白状します。
 今までのセクションは単なる前座です。
 このセクションがこのページの最大のメインなんです。

 そして、ストーリーは急展開を迎えます。
 舞台はジグソーパズルから論理学へと移るのです!

 ここからは話の難易度が何倍にも跳ね上がります。
 しかもウンザリするほど長いです。
 本当に、本当にご自身の気力や体調と相談の上、ご覧ください。
 理解できなくてもどうかどうか怒らないでね😅

 では、話を戻して。
 いよいよ、このセクションで正解のピースが明らかになります。
 空きマスに書き込んでいた文字列がキーとなり、ピースが見つかっていくんです。

5-1.38個の命題たち

 ピース探しの前に、大事な下準備が3つあります。
 定義を2つ、定理を1つ紹介します。
 まず、最初の定義です。

  • 例えば「2b, 2e, 9f のうち1つだけが正解のピースである」という場合、2be9f が成り立つ と言う。
    あるいは簡単に 2be9f である と言う。
    当セクションでは、この「2be9f」のような文字列を命題と呼ぶことにする。

 ここで、大事な注意をひとつ。
 どれか1つだけが正解のピースである場合のみ、「2be9f が成り立つ」という言い方ができます。
 「1つだけ」です。
 正解ゼロや複数正解ではダメ。
 ご注意ください。

図 5-1

 ところで、なぜ 2be9f みたいな表記を定義したんでしょう?
 それは、空きマスに書き込んだ文字列がそのまま命題として扱えるからです。
 例えば、左上隅のマスには「4ab 6a」と書かれていますね。
 これは「命題 4ab6a が成り立つ」ということと同じなんです。

 理由を説明しましょう。
 現在は全35枚のピースがありますが、左上隅マスに数字の入っているピースは 4a, 4b, 6a の3つしかありません。
 ということは、ピースをハメてナンプレを完成させるためには、4a, 4b, 6a のどれか1つだけが正解のピースでないとダメなんですね。

 4a, 4b, 6a のうち1つだけが正解のピースである。
 これは、まさしく 4ab6a なんです。

 盤面には空きマスが 31個あるから、この時点で 31個の命題が存在します。
 ということは、この 31個を満たすピースを見つければナンプレは完成できそう。
 しかし、実は、それだけでは不十分。
 他にも大事な命題が7個あるんです。

 例えば、数字1のピースは7つありますが、このうち1つだけが正解でなければいけません。
 つまり、命題 1abcdefg も成り立たなきゃいけないんです。
 同様に、2abcdef, 4abcdefg, 5ab, 6abcd, 7ab, 9abdefhj も必要です。

 命題は全部で 38個存在するわけですね。
 ちょいと挙げてみましょう。

4ab6a
1ab4cd9abdefh
4efg6bc
5a9j
1cde7a
1fg5b6d7b
1c2ab6bd
1defg2cdef
1ab6ac
4efg6c9j
4abcd6ad
2acd9abd
2bef6b9efh
1adf5b9ae
1bceg9bf
4acef9hj
4bdg5a9d
2ce4cde5a
2ab4abfg
2df5b
2df6c9j
6abd9dh
2be7b9ef
2ac7a9ab
1beg4fg9bdfh
1adf4abcd9ae
1c4e9j
1c4e9j
2abce9abdefh
1abfg2f4bdg
1de2d4acf
1abcdefg
2abcdef
4abcdefg
5ab
6abcd
7ab
9abdefhj

 ナンプレが完成するためには、この 38個すべてが成り立たなければいけません。
 というわけで、正解ピース探し問題は次の問題に帰着するんです。

この 38個の命題すべてを成り立たせる。
そういうピース7枚……見つけることができますか??

 ここからは、この命題たちを相手に新たな闘いが始まります。

5-2.命題の超同値

 もうひとつ定義をしましょう。
 今度は「超同値」という概念を導入します。

  • 2つの命題P, Qにおいて次の a. b. を両方とも満たす時、PとQは超同値である と言う。
    また、その関係を P=Q で表す。
    1. 命題Pが成り立つならば命題Qも成り立つ。逆も成り立つ。
    2. 命題Pに正解ピースが存在しないならば命題Qにも正解ピースは存在しない。逆も成り立つ。

 一方の命題が正解ピースを1個持つなら他方も正解1個だ。一方の命題が正解ゼロなら他方も正解ゼロだ。
 この両方が成り立つ時、2つの命題は超同値だと言うわけです。

 例を2つ挙げましょう。
 式 1a=2b は「1a, 2b の一方が正解なら他方も正解。一方が不正解なら他方も不正解」という意味です。
 式 4cd=5a9ef は「4cd, 5a9ef の一方が正解1個なら他方も正解1個。一方が正解ゼロなら他方も正解ゼロ」という意味ですね。

 「超同値」なんて新しいワードが出てきましたね。ちなみに当ページ独自のワードです。
 実は、超同値は同値よりも強い概念です。
 2つの命題P, Qが条件 a. を満たした時点で、PとQは同値の関係にあります。
 その上で、さらに条件 b. も満たすと超同値の関係になるんですね。
 超同値は同値の上位互換……と言えるかな?

 なんかもぅ、話がややこしくってすんませんすんません😅
 なぜ「超同値」なんていう新概念を導入したのか?
 その理由は「命題の部分的な置き換え」ができるようにするためなんです。
 例えば 2ab=4fg9h が成り立っているとして、命題 2abcd の 2ab を 4fg9h に置き換えて新たな命題 4fg9h2cd を作ってみる。
 この時、2ab=4fg9h ならば 2abcd と 4fg9h2cd の真偽は必ず一致するんです。
 つまり、2abcd と 4fg9h2cd は同値になる。2abcd を 4fg9h2cd に置き換えて論理展開できるようになるんです。

 「2abcd ならば 4fg9h2cd」「4fg9h2cd ならば 2abcd」の2つを証明すればOKです。
 前者だけ証明します。同様なため後者は証明略。
 今、2abcd が成り立つとしましょう。
 すると、正解ピースは 2ab, 2cd の片方に1個だけ存在します。

  • 2ab に存在する場合
     2cd に正解ピースはありません。
     そして 2ab=4fg9h だから 4fg9h に正解ピースは1個あります。
     ということは、4fg9h2cd は正解ピースを1個だけ持つ。
     よって、4fg9h2cd も成り立ちます。
  • 2cd に存在する場合
     2ab に正解ピースはありません。
     そして 2ab=4fg9h だから 4fg9h にも正解ピースはありません。
     2cd に正解ピースは1個あるから、4fg9h2cd は正解ピースを1個だけ持つ。
     よって、4fg9h2cd も成り立ちます。

 まぁ、とにかく「イコールで結ばれたら部分置き換えが利く」と簡単に解釈しちゃってください😊

 余談ですが、超同値でなければ部分的な置き換えは利きません。ただの同値では不十分です。
 理由は以下の通りです。

 例えば、2ab と 4fg9h がただの同値だとする。
 すると「2ab でないならば 4fg9h でない」が成り立ちます。
 ただ、この時、両者の正解ピース数が異なる可能性がありますね。例えば、前者は0個、後者は2個(例:4f と 9h)。
 その上で 2c が正解だった時、2abcd は真だけど 4fg9h2cd は偽です。
 2abcd, 4fg9h2cd の真偽が一致しない可能性があるんです。

5-3.部分命題定理

 さて。
 超同値を定義したところで、今度は定理をひとつ紹介します。
 部分命題定理 と名付けておきます。これも当ページ独自のワードです。

  • 共通部分を持つ2つの命題P, Qが成り立っているとする。
    この時、その共通部分を取り除いてできた新命題P', Q' に対して P'=Q' が成り立つ。

 例えば、1abc6d, 1ab4fg の2命題が成り立っているとしましょう。
 両者には 1ab が共通していますね。
 この時、共通部分 1ab を取り除いた残りの 1c6d と 4fg が超同値となる。
 こういうことなんです。

 1abc6d, 1ab4fg が成り立っているとして、次の2つを証明します。
  A. 「1c6d ならば 4fg である」
  B. 「1c6d の正解ピースが0個ならば 4fg の正解ピースも0個である」
 同様なため、A. B. とも「逆も成り立つ」の証明は省略します。

  • A. の証明
     1c6d が成り立つとしましょう。
     すると、1abc6d により 1a も 1b も不正解ピースです。
     それを踏まえて 1ab4fg を見ると、4f, 4g のどちらか片方が正解です。
     つまり 4fg が成り立つんです。
  • B. の証明
     1c6d の正解ピースが0個だとしましょう。
     すると、1abc6d により 1a, 1b のどちらかが正解ピースです。
     それを踏まえて 1ab4fg を見ると、4f も 4g も不正解です。
     つまり、4fg の正解ピースは0個なんです。

 命題 1abc6d, 1ab4fg には 1ab が共通している。
 それを取り除くと 1c6d と 4fg が残る。
 この2つに対して 1c6d=4fg が成り立つ。
 「2つの真命題の共通部分を消すとイコールで結べる」という流れで解釈しちゃってください。

 さぁ、お待たせいたしました!
 いよいよ数多の命題を駆使して正解ピースを見つけます。
 長いので、ゆっくりじっくり過程をたどっていってください😊

5-4.いよいよ正解が判明する!

図 5-2

 先ほど 38個もの命題を列挙しましたが、以降の議論に必要な分だけ命題をピックアップします。
 図5-2 の通りです。

 この 21個で議論していきましょう。
 途中、部分命題定理によって超同値がたくさん現れます。
 必要な超同値式も図に加えていきます。

図 5-3

 まず、2つの命題 2abcdef と 2abce9abdefh を見てみましょう。
 すると、部分命題定理により 2df=9abdefh が成り立ちます。

 また、2df6c9j も成り立っていますね。
 2df を 9abdefh に置き換えて、6c9abdefhj も成り立ちます。

 さぁ、命題「6c9abdefhj」のラインナップに注目しましょう。
 ……なんと、9のピースが全部揃ってる!
 つまり、命題 6c9abdefhj において正解は必ず 9abdefhj の中にあるんです。

 というわけで、6c は不正解となりました。
 ピース 6c は破棄しちゃいましょう。

図 5-4

 6c が破棄されたので、6abcd は 6abd となりました。
 こういうふうに、命題たちはこれからスリムになっていきます。
 論理学ダイエット?(意味不明)

 さて、6abd に対して 6abd9dh もありますね。
 実は、6abd のおかげで 9d と 9h は不正解になるんです。
 6a, 6b, 6d のどれか1つが必ず正解になりますもんね。

 というわけで、9d も 9h も破棄されることになりました。

図 5-5

 2acd9ab がありますね。
 そして 2abcdef もあります。
 部分命題定理により、2acd を取り除いて 2bef=9ab が得られますね。
 これと 2df=9abef を見比べてみます。

  • 2bef=9ab
  • 2df=9abef

 右辺同士について「9ab ならば 9abef」は真です。
 なぜなら、数字9のピースに正解は1つしかないからです。
 9a, 9b どちらが正解であっても 9abef が成り立ちます。

 両辺は同値なので、右辺同士の関係は左辺同士にも引き継がれます。
 つまり「2bef ならば 2df」が真でなければいけません。
 これは、もし 2bef が真なら必ず 2df も真でなければダメということです。

 ということは……もし 2b や 2e が正解だとすると非常にマズい!
 2df が偽になって、矛盾が起きてしまう😣
 というわけで、2b も 2e も不正解となりました。
 両方とも破棄しましょう。

図 5-6

 7ab と 2ac7a9ab がありますね。
 部分命題定理により、7b=2ac9ab となります。
 また、2acdf と 2df5b から同様に 5b=2ac が得られます。

 さぁ、5b=2ac と 7b=2ac9ab の2つが得られました。
 ここで、1fg5b6d7b を見てみましょう。
 5b と 7b、両方ある!
 もちろん正解ピースは1個だけなのだから、少なくとも 5b, 7b の一方は不正解でなければいけません。
 もし 5b が不正解なら、2a, 2c も不正解。
 もし 7b が不正解なら、2a, 2c, 9a, 9b も不正解。
 どちらであろうと、2a, 2c の2つは確実に不正解になるんです。

 そうなると、5b=2ac がさらに活きてくる!
 なんと 5b も不正解になりました。

 おぉ、数字5の正解が判明した! 5a が正解だ!
 1枚目の正解ピース、ゲットできました😊
 ついでに、5a9j により 9j は不正解ですね。
 2a, 2c, 5b, 9j を破棄しましょう。

図 5-7

 ずいぶんとピースが破棄されてきましたね。
 数字4しかない命題が3つも現れました。
 4abfg, 4acef, 4efg です。

 さて、ここでクイズです。
 数字4の正解ピースは 4a〜4g のうちどれでしょう?
 3命題をよ〜く見ると答えが見えてくる……。

 正解は 4f です。
 3命題すべてに含まれているのは 4f しかないですもんね。
 5a に続いて正解ピース2枚目、ゲットできました😊
 4a, 4b, 4c, 4d, 4e, 4g は全部破棄しちゃいましょう!

 いや〜、正直、正解 4f が判明したのはすごく大きい!
 1beg4f9bf と 1de4f9ef を見ればわかります。
 1b, 1d, 1e, 1g, 9b, 9e, 9f を一挙に破棄できちゃうんだもの!

図 5-8

 命題たちがどんどんスリムになっていく……。
 なんと、正解のピースがモロに現れちゃいました。
 1c, 6a, 7b, 9a です。
 『ストラックアウト』顔負けの4枚抜き!

 残るは数字2のピースだけですね。
 これは簡単です。
 1af2f がありますが、1a も 1f もさっき不正解になったばかり。
 2f が正解のピースです。

図 5-9

 さぁ、これで正解ピースが全部出揃いました!
 紹介します。
 1c, 2f, 4f, 5a, 6a, 7b, 9a です。
 数字3と8は最初からピースが決まっています。

 実際のピースは 図5-9 の通り。
 さぁ、この9枚をナンプレ盤面にハメて完成できるでしょうか……?

 果たして、結果や……如何に !?

図 5-10

 あぁ……、完璧だ……。
 もぅ何も言うことはありません。
 長い長い道のりでしたが、それを経てゴールテープを切る瞬間というのは最高の気分になれます。

 当たり前ですが、このやり方はまったく現実的ではありません。
 が、こういう大がかりなアプローチもナンプレ界には潜んでいたんですね。

 しっかしまぁ……。
 ジグソーパズルの世界で暮らしていたかと思いきや、まさか論理学の世界へ転生してしまうとは。

『異世界転生したら論理学にフルボッコされた件』
(原作:E坂もるむ, 漫画:E坂もるむ)

 ナンプレって、すげぇ世界だわ。

5-5.最後にちょいと検証

 21個の命題を駆使して正解のピースを見つけて、ナンプレも綺麗に完成しましたね。
 ただ、疑問が1つ残る。

そのピースたち、残り17個の命題をちゃんと満たすの?

 正解のピースは 1c, 2f, 4f, 5a, 6a, 7b, 9a でしたね。
 それらが 38個の命題をすべて満たすかどうか検証してみましょう。

4ab 6a
1ab 4cd 9abdefh
4efg 6bc
5a 9j
1cde 7a
1fg 5b 6d 7b
1c 2ab 6bd
1defg 2cdef
1ab 6ac
4efg 6c 9j
4abcd 6ad
2acd 9abd
2bef 6b 9efh
1adf 5b 9ae
1bceg 9bf
4acef 9hj
4bdg 5a 9d
2ce 4cde 5a
2ab 4abfg
2df 5b
2df 6c 9j
6abd 9dh
2be 7b 9ef
2ac 7a 9ab
1beg 4fg 9bdfh
1adf 4abcd 9ae
1c 4e 9j
1c 4e 9j
2abce 9abdefh
1abfg 2f 4bdg
1de 2d 4acf
1abcdefg
2abcdef
4abcdefg
5ab
6abcd
7ab
9abdefhj

 すごい!
 全部満たしている!

 正解ピース達は正真正銘の正解だったというわけですね😊

参考・参照

更新履歴