【コラム】ナンプレの作り方

 世にナンプレパズルがあふれているということは、当然、ナンプレの問題がたくさん作られてきたということです。
 そのナンプレ達は一体どのように作られるのか?
 さらに難易度調整について、私見も交えて解説します。
 (難易度:★★)

1.2種類の作り方がある

 雑誌やスマホアプリ、果ては個人サイトなど、巷にはナンプレパズルがあふれかえっていますね。
 このページをご覧の皆さんは、それはもぅ山のようにナンプレを楽しんできたことでしょう。

 さて、ナンプレの問題がこの世に存在するということは、当然、何らかの方法でそれらが作られてきたわけですよね。
 このナンプレ達、どうやって作られたんでしょう?
 今回はその話をしてみます。

 ナンプレの作り方は2種類あります。
 ひとつは完成図から直接作る方法。もうひとつは解く手順を盛り込む方法。
 それぞれ解説していきましょう。

1-1.完成図から直接作る

 まずは、1つめの方法です。
 完成図からナンプレ問題を直接作ってみましょう!
 最初に完成図を作り、そこから数字を必要な分だけ選ぶ。こういう手順で作ります。

図 1-1

 ちょいと1問、作ってみました。
 図1-1 です。
 完成図(左側)を作った後、数字を何個か選び、他のマスの数字をすべて消す。
 26個選んでできあがったのが右の問題図です。

 この方法のメリットは、何と言っても「作るのが簡単!」というところ。
 テキトーに数字を選んで問題図を作っちゃえばいいんです。
 もちろん、その問題に別解がないことを確認しなきゃいけないけれど、もし別解が生じてもさらに数字を多く選んで別解をなくせばいい。
 別解の確認だって、今はナンプレ製作ソフトで済む時代です。
 苦もなく作れるんですね。

 ただ、パズル作家が実際にナンプレを作る時、この方法を使うことはあまりないでしょう。
 作家にとって面白味のない欠点が多いからです。
 例えば……

  • 見た目美しい問題図を作りにくい。
  • 数字配置に意味を持たせたり、解く流れを仕込んだりなど、作者の意図を盛り込めない。
  • 2国同盟X-Wing など上級解法を使わせるような高難度問題を作れない。
  • バラエティナンプレだと、追加ルールを仕込んだ問題図を作れない。

 なんとも作り甲斐のない方法なんですね。

 とは言っても、「手軽に作れる」という点は大きな長所ではある。
 コンピュータで大量生産が可能ですもんね。
 初級〜中級問題を低コストでたくさん作りたいなら、この方法はアリかもしれません。

1-2.解く手順を盛り込む

 続いて、2つめの方法です。
 解く手順を盛り込みながらナンプレ問題を作ってみましょう!
 空っぽの盤面からスタートして、マスをどんどん埋めていきます。

図 1-2

 まず、まっさらな盤面を用意します。
 そして、問題図とする数字配置の形を決めましょう。
 どうせなら対称形にしたい。図1-2 の形にしましょうか。

 この★マスにヒント数字を置いて問題図を作っていきます。
 その際、ナンプレ解法も適用して、同時に白色マスにも数字を入れていきます。

 まぁ、文章だけだとピンと来ないですよね😅
 実際に作ってみましょうか。

図 1-3

 3つの★マスに数字6を入れて、ちょいとレーザーを飛ばしてみます。
 すると、中央ブロックにはレーザーの通っていない白色マスが1つだけありますね。
 マスAです。
 この時、ある1つの考えが生まれるんです。

  • 「中央ブロックの★マスにヒント数字6を置かない」という前提なら、マスAに数字6が確定できるじゃん!

 3つのヒント数字から1マスに数字6が決まる。
 こういうふうに、数字を確定させる手続きを盤面に盛り込んでいくんです。

図 1-4

 数字6が確定しましたね。
 じゃぁ、これを利用して新たな展開を作ってみましょう!

 数字3を 図1-4 のように配置して、「マスBに3が確定する」を仕込んでみる。
 こうして「数字6→数字3」という流れを作るわけです。

図 1-5

 もう1つ仕込んでみましょう。
 今度は、6つの★マスに一挙にヒント数字を置いて、「マスCには数字7しか入らない」ようにしてみました。
 これは『このマスはアナタだけよ〜』のページで解説した解法を使っています。
 レーザーを使わない方法も盛り込めるんですね😃

 このようにして、いろんな手筋をどんどん盛り込みながら、★マスに数字を設定していきます。
 81マスすべてが埋まるよう、少しずつ盤面を作り上げていくわけです。

図 1-6

 完成形は 図1-6(左側)です。
 あとは、すべての白色マスから数字を消せば、問題図(右側)のできあがり!
 プログラマーや数学好きなど「2のn乗」が大好物な方々向けに 65536 と 32768 を仕込んでみましたよ😃

 この方法は、パズル作家がナンプレを作る時の一般的な方法です。
 1マスずつ地道に作るから非常に手間がかかるけど、仕込む箇所は完全に作家の自由であり、非常に作り甲斐がある。
 例えば……

  • 突飛な数字配置にする。完成図の1ブロックを魔方陣にする。
  • n国同盟などを遥かに超える難解な手筋を仕込む。
  • 解き手のエンピツを上下左右に激しく動かすような解き筋を盛り込む。
  • バラエティナンプレだと、追加ルールの面白さをどう表現しようかと頭を悩ませたり。

 もぅもぅもぅ腕が鳴るというモンです!

 ナンプレは解くのも楽しいけれど、実は作るのも面白かったりする。
 個性たっぷりな問題を作るという遊び方も知ると、ナンプレを何倍も楽しめるようになりますね😄

 ここまでが、ナンプレの作り方の話です。
 が、実は、ナンプレ製作をする上で非常に重要な要素が1つあります。
 それは「難易度」です。
 次セクションからは、難易度に関する話をしていきましょう。

2.ナンプレには「解きやすさ」というものがある

 前セクションでは、ナンプレの作り方を説明しました。
 それを理解すればナンプレの問題を作れるようになるでしょう。
 しかし、専門誌などで難易度表記があるように、「問題の解きやすさ」というのもナンプレ製作では大事な要素。
 そこで、その「解きやすさ/解きにくさ」について、経験上の私見をちょいと披露してみようかなと思います。

 おそらく、解きやすさのカギを握るのは次の2つかな?

  1. 3つの初歩的解法には使用難易度の差がある。
  2. 数字の判明するマス数は重要である。

 この2つを順番に解説していきましょう。
 b. は次セクションに譲るとして、まずは a. から。

 初級〜中級ナンプレを解く時、皆さんはおそらく3つの解き方を駆使していることでしょう。

 この3つ、使いやすさが全然違うというのはお気付きだったでしょうか?
 今一度、この3つの解き方を説明しましょう。

図 2-1

 まずは、ブロックに着目する解き方。
 図2-1、ブロックの外側からレーザーを飛ばして、マスAに数字1が確定したという図です。

 実は、この解き方は最も簡単です。
 まず、ブロックは小さい正方形ですね。
 領域がこぢんまりとしているから、一目で数字や空きマスを把握しやすい。

 そして、ブロックの外側にある数字から直線レーザーを飛ばすだけでいい。

  1. 赤色ブロックには数字1がない。
  2. じゃぁ、ブロック外側の数字1から上下左右にレーザーを飛ばそう!
  3. おぉ、マスAに数字1が決まったぞ!

 たったこれだけの作業で済むんですね。

図 2-2

 対して、タテ列やヨコ列に着目する解き方はどうか?
 これは結構手間がかかるんです。
 まず、領域が細長い。一目では把握しにくく、視線を動かさなきゃいけない。
 そして、ルール【C】が必要になることも多く、図2-2 のように座布団レーザーも意識しておかなきゃいけない。

ルール
どのタテ一列にも同じ数字は入らない。
どのヨコ一列にも同じ数字は入らない。
どの3×3ブロックにも同じ数字は入らない。

 しかも、座布団レーザーは列に無関係なマスから発射するから、使いどころがイマイチわかりづらい。
 ナンプレに慣れている方々でも、マスBを発見するのは大変なんですね。

 領域が一瞥で認識できず、レーザーは2種類も必要。
 ブロックに着目するよりもハードルがかなり高いんですね。

図 2-3

 最後に、1マスに着目する解き方はどうか?
 これはとんでもなく手間がかかるんです。

  1. 空きマスの中から1マスを選ぶ(Cとしておきます)。
  2. マスCの属するタテ列・ヨコ列・ブロックを見回し、8種類の数字が入っていることを確認する。
  3. マスCに9種類目の数字を確定させる。

 もぅもぅもぅ、2. が本当にシンドいのさ!
 「2列+ブロック」を見回すのが面倒くさいし、数字が何種類あるのかを数えるのも面倒くさい。
 なのに、運良く数字が8種類揃うことなんて滅多にない。
 まさに「骨折り損」の連続で、苦行としか言いようがないんですね😞

 それに、盤面を一目見ただけではマスCのようなマスにはなかなか気付きません。
 これもシンドさに拍車をかける。
 この解き方は格段にハードルが高いんです。

 ちょいとおさらいしましょうか。
 3つの解き方を使いやすい順に並べるとこうなります。

 この3つは初歩的解法でありながら、使いやすさに明確な差があるんですね。
 この差は結構重要で、ナンプレ製作に関して1つの指針を与えてくれるんです。

 このことを知っておくと、いろんな難易度のナンプレを作りやすくなるでしょう😃

3.もうひとつの視点・マスの埋まりやすさ

 前セクションに引き続き、今度は b. について解説しましょう!
 あ、解きやすさのカギとなる2つのポイントをもう一度挙げておきます。

  1. 3つの初歩的解法には使用難易度の差がある。
  2. 数字の判明するマス数は重要である。

 さて。
 皆さんは何百問となくナンプレを解いてきたことと思います。
 が、ナンプレを解いている最中、おそらく皆さんはたった1種類の行為しかしてこなかったはず。
 その行為とは何でしょう?

数字の判明するマスをひたすら探している。

 たったこれだけ。
 とにかく「どれかの空きマスに数字が確定しないか?」と血眼になって探しているんです。
 皆さんの覚えた数々のナンプレ解法は、そのための道具にすぎません。

 となると、「数字の判明するマスを見つけやすいか否か」という視点がナンプレの難易度に関わってくるわけですね。
 2つの問題図を対比させて説明しましょう。

図 3-1

 まずは1つめ。
 図3-1 です。

  • 問題図からは、23個のマスに数字が判明する。

 青色マスに数字が判明します。
 最初からこんなにも突破口がいっぱいあるんですね。

図 3-2

 しかも、それだけではない。

  • 青色23マスに数字を確定させると、別の20マスに新たに数字が判明する。

 最初の23マスの後には新たな20マス(赤色)が控えてる。
 ということは、青色マスのいくつかが数字で埋まれば、赤色の突破口のうち何個かが新しく開かれることになる。
 さらに、赤色マスが多少埋まればそこからまた新たな突破口が開かれる。
 こういうふうに、解く流れがどんどん連鎖する。
 どこから解き始めても数字がポンポン埋まるような設計になっているんです。

 まるでマジックカットのようだ。
 「こちら側のどこからでも解けます」みたいな😅

図 3-3

 対して、2つめ。
 図3-3 です。

  • 問題図からは青色3マスにしか数字が判明しない。
  • その3マスに数字を確定させても、次は赤色2マスしか数字が判明しない。
  • 以降も、数字の判明するマスはあまり多くならない。

 もぅ 図3-1 とは大違い!
 56個も空きマスがありながら、正解はたった3個しかないんです。

 まぁ、たった3マスでも中級者ならすぐに見つけられるでしょう。
 しかし、初心者はそうではありません。
 解き方を覚えたばっかりの方々にとって、3/56 という狭い突破口を見つけるのは非常に難しい。
 何十回ものたどたどしい試行錯誤を初心者に強いるのは酷というものです。

 だから、図3-3 は初心者には優しくない。
 これを初級問題だと言い張ってはいけないんですね。

 図3-1 と 図3-3、どちらが易しい問題なのかは言うまでもありません。
 マス数についてはこうなりますね。

 この視点でも、ナンプレ製作に関して指針を与えてくれますね。

 ただ、判明マス数に関しては話はそう単純ではありません。
 解く流れの中でマス数は変化するからです。
 最初は判明マスが多いけど、途中で3マス程度に激減する。ところが、そのマスを埋めたらまた判明マスが急増する。……というふうに、個数に波があることは珍しくありません。
 でも、逆に言えば、それはそれで流れにメリハリが生じていると考えられる。
 解き手のペンを長時間止めるはたらきをするかもしれない。
 中級問題として面白く仕上がる可能性を秘めている、と言えるでしょう。

4.あとは組み合わせればいい

 ……というわけで、難易度を考慮する際の視点を2つ紹介しました。
 その結果をもう一度。

 この2種類を組み合わせるという形で、難易度調整ができそうですね!
 例えば、初級問題を作りたいなら【易+易】を意識して作ればいいわけです。

図 4-1

 前セクションの 図3-1 で説明しましょう。
 あの問題図からは23マスに数字が判明したわけだけど、実は、ブロックにだけ着目しても多くのマスが判明します。

  • 問題図からは緑色15マスに数字が判明する。
  • その15マスに数字を確定させると、次は9マスに数字が判明する。
  • 以降、11マス→8マス→5マス という流れで完成に至る。

 ブロックに注目するだけで解ける。
 そして、判明するマス数も常に10マス程度で多い。
 まさに【易】同士の組み合わせでできた初級問題なんですね。

 このような【易+易】の形。
 これが、ナンプレを製作する上で私の理想とする初級問題です。

 他の難易度でも、この2種類を組み合わせて作ります。
 易しめの中級なら【易+中】【中+易】で。
 普通の中級なら【中+中】で。
 上級寄りにしたいなら【難+中】で。

 もぅ少し詳しく説明しましょう。
 要領はこんな感じ。

 私がナンプレを作る時、こういったことを心掛けています。

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