1.どういう解法?
Empty Rectangle の舞台は、1列と1ブロック。
列とブロックの連携もさることながら、ブロック内部に大きな特徴のある解法です。
その特徴が1マスに綺麗に刺さります。
図1-1、青色ヨコ列とピンク色ブロックを見てみましょう。
それぞれにおいて数字1の入り得るマスを探したら、●○▲の場所しかなかったとします。
これらのマスには次の特徴があります。
- 青色ヨコ列において、数字1は●と○にしか入らない。
- ピンク色ブロックにおいて、数字1は▲の5カ所にしか入らない。
- ▲は十字型に並んでいる。
- タテに並んだ▲▲▲は●と同じタテ列に属している。
この十字型というのがポイント!
これが Empty Rectangle の最大の特徴です。
さて、前図1-1 からはどういう結論が得られるんでしょう?
こうなります。
- ○ ▲1 ▲2 の3マスと列を共有するマスが1つある。そのマスに数字1は入らない。
図1-2 だと×印のマスが該当します。
×印マスは○とタテ列を共有し、▲1 ▲2 とヨコ列を共有しています。
このマスに数字1は入らないというわけです。
なぜこういう結論になるんでしょう?
それは、○ ▲1 ▲2 のうち少なくとも1つに必ず数字1が入るからなんです。
それを解説しましょう。
さて、青色ヨコ列では●と○のどちらかにしか数字1を入れられません。
そこで、もし●に数字1が入った場合にどういうことが起きるんでしょう?
5つの▲のうち3つの▲に数字1を入れられなくなります。
残ったのは ▲1 ▲2 の2つだけ。
そのどちらかに数字1が入ることになりますね。
ただ、▲1 ▲2 の位置関係を見てみると……
- ▲1 も ▲2 も同じヨコ列に属している。
ここがミソなんです。
●と○のどちらかに必ず数字1が入ります。
しかし、どちらに入ろうとも 図4-1 ×印マスに数字1が入らないという結末になっていくんです。
検証してみましょう。
○に1が入った場合は簡単ですね。
青色矢印を見ればOK!
●に1が入った場合は 図1-3 の説明通りに話が進みます。
▲1 ▲2 のどちらかに1が入るため、ピンク色矢印により×印マスに数字1を入れられない。
というわけで、×印マスに数字1は入りません。
図1-2 の結論通りになりましたね😊
これが Empty Rectangle という解法です。
今までの説明は▲が十字型に並んだ場合でした。
ほかにはL字型やT字型に並んだ場合もあります。
その場合も 図1-3 の理屈が成り立ち、×印のマスに1は入りません(図1-5)。
▲の配置は全部で9種類あります。
L字型とT字型は4種類ずつ(図1-5)、十字型は1種類です(図1-1)。
これらには共通点があります。
- ▲がタテヨコ1列ずつのみ配置されている。
この配置でなければ Empty Rectangle を使うことができません。
注意が必要です。
上記では▲が5個ある場合で説明しましたが、5個より少なくてもかまいません。
前図1-5 で説明した▲がタテヨコ1列ずつのみ配置されているということが重要であり、それを満たしていれば▲の個数は関係ありません。
図1-6 の場合でも、×印のマスに1は入りません。
上記は、ヨコ列&ブロックによる Empty Rectangle でした。
もちろん、タテ列&ブロックの場合でも理屈は同じです。
それについては、次セクションで実例を挙げて解説しましょう。
2.実際に使ってみよう!
次は、実際の盤面で Empty Rectangle を使ってみましょう。
図2-1 では、とあるマスに数字が判明します。
それを Empty Rectangle で突き止めましょう。
ここでは数字5に注目して、5の入り得るマスを探してみます。
青色ヨコ列とピンク色ブロック、これが今回の Empty Rectangle の舞台です。
この2つを調べると、数字5はどちらも数カ所にしか入れられません。
青色の列では●と○の2つ。
ピンク色のブロックでは▲の4カ所。
図2-2 の通りです。
●○▲の位置関係を見ると……まさに配置がピッタリ!
▲はT字型!
そして、▲▲●がヨコ並び!
さぁ、舞台は整いました。
あとは Empty Rectangle を使うだけ!
では早速使ってみましょう。
こうなります。
- 図2-3、×印のマスに数字5は入らない。
理由を簡単に説明しましょう。
●と○のどちらかに必ず数字5が入ります。
○に入った場合は、青色矢印でOK。
●に入った場合は、必然的に2つの▲のどちらか(図2-3 左下の「5?」です)に5が入ることになりますね。
この場合はピンク色矢印でOK。
というわけで、上記の結論が成り立ちます。
×印のマスに数字5を入れられなくなりました。
うまく Empty Rectangle が使えましたね!
もぅちょっと解き進めてみましょう。
図2-3 の×印マスを含む列やブロック全域に目を通すと、×印マスには5と7しか入れられないことがわかります。
しかし、前図2-3 によって数字5も入らなくなりました。
というわけで、そのマスに数字7が確定しちゃいました😄
3.Dual Empty Rectangle
さて、ここからは Empty Rectangle の派生形を2つ紹介しましょう。
このセクションで紹介するのは、列が1つ増えた形のものです。
図3-1 を見てみましょう。
青色ヨコ列、赤色タテ列、ピンク色ブロックがありますね。
それぞれにおいて数字1の入り得るマスを探したら、こんな状況だったとします。
- 青色ヨコ列において、数字1は★と○にしか入らない。
- 赤色タテ列において、数字1は★と◇にしか入らない。
- ピンク色ブロックにおいて、数字1は▲にしか入らない。
- ★は青色&赤色2列の交差箇所にある。
- ▲は十字型に並んでいる。
- タテに並んだ▲3個は○と同じタテ列に属している。
- ヨコに並んだ▲3個は◇と同じヨコ列に属している。
上記では「十字型」と書きましたが、もちろんL字型やT字型でもOKです。
従来の Empty Rectangle に赤色タテ列が増えました。
これが Dual Empty Rectangle と呼ばれる形です。
さて、前図3-1 からはどういう結論が得られるんでしょう?
こういう結論になるんです。
- ★マスに数字1が確定する。
さらに、2マス○◇に数字1が入らないこともわかる。
2列に直接影響が出るんですね。
数字まで確定しよった!
なぜ、こういう結論になるんでしょう?
それは、○と◇の少なくとも一方に1を入れられなくなるからなんです。
それを解説しましょう。
ピンク色ブロックの▲マスをA〜Eとしてみました。
キーとなるのは、このピンク色ブロックです。
A〜Eの5マスにしか数字1は入りませんが、どこに1が入るかによって2マス○◇のどちらかに影響が出るんです。
3マスA, C, Eのどれかに1が入った場合は、○に1は入りません。
3マスB, C, Dのどれかに1が入った場合は、◇に1は入りません。
というわけで、次のことが成り立つんです。
- ○と◇の少なくとも一方には数字1は入らない。
○に数字1が入らなかった場合、青色ヨコ列を見れば★に1が確定します。
そのあと、続けて赤色タテ列を見ると◇に1は入らないこともわかります。
◇に数字1が入らなかった場合、赤色タテ列を見れば★に1が確定します。
さらに、続けて青色ヨコ列を見ると○に1は入らないこともわかります。
どちらにしても、★に数字1が確定するんですね。
そして、○にも◇にも数字1は入らないことになるんです。
図3-2 の結論通りになりました😊
4.Double Empty Rectangle
Empty Rectangle の派生形をもうひとつ紹介します。
今度は、ブロックが2つあるパターンです。
1列&ブロック2個がうまく連動して話が進んでいきます。
図4-1、青色ヨコ列、ピンク色&オレンジ色ブロックを見てみましょう。
それぞれにおいて数字1の入り得るマスを探したら、こんな状況だったとします。
- 青色ヨコ列において、数字1は△と◇にしか入らない。
- ピンク色ブロックにおいて、数字1は▲にしか入らない。
- オレンジ色ブロックにおいて、数字1は◆にしか入らない。
- ▲と◆は十字型・T字型・L字型に並んでいる。
- タテに並んだ▲3個は△と同じタテ列に属している。
- タテに並んだ◆3個は◇と同じタテ列に属している。
- ▲と◆がヨコ1列に6個並んでいる箇所がある。
特に、最後の「ヨコ1列に6個並ぶ」というのが最大の特徴です。
従来の Empty Rectangle にブロックがもう1個が増えました。
これが Double Empty Rectangle と呼ばれる形です。
さて、前図4-1 からはどういう結論が得られるんでしょう?
こういう結論になるんです。
- ▲◆が6個並んでいるヨコ列において、▲1 ▲2 ◆1 ◆2 以外の5マスに数字1は入らない。
図4-2 だと、×印の5マスが該当します。
このマスに数字1は入らないというわけです。
なぜ、こういう結論になるんでしょう?
それは、▲1 ▲2 ◆1 ◆2 のどれかに必ず数字1が入るからなんです。
それを解説しましょう。
青色ヨコ列では△と◇のどちらかに必ず数字1が入りますね。
それぞれ話を進めてみましょう。
まず、△に数字1が入った場合はどうなるか。
ピンク色ブロックではタテ並びの▲に1は入らず、▲1 ▲2 のどちらかに必ず1が入ることになります(図4-3)。
次に、◇に数字1が入った場合はどうなるか。
今度はオレンジ色ブロックではタテ並びの◆に1は入らず、◆1 ◆2 のどちらかに必ず1が入ることになりますね。
というわけで、次のどちらかが必ず成り立ちます。
- ▲1 ▲2 の片方に数字1が入る。
- ◆1 ◆2 の片方に数字1が入る。
……ですが、実は、これはもっと簡単に書けたりする。
こうなるんです。
- ▲1 ▲2 ◆1 ◆2 のどれかに数字1が入る。
そうなると、数字1を入れられないマスが生じます。
図4-4、×印の5マスです。
▲1 ▲2 ◆1 ◆2 の4マスはすべてヨコ1列に属しています。
そして、その4マスのどれかに必ず数字1が入る。
となると、残りの5マスに数字1の入る可能性はなくなるんですね。
図4-2 の結論通りになりました😊
5.Empty って何? Rectangle はどこ?
ここからは余談です。
このページで紹介した解法、名前は Empty Rectangle です。
empty は「空っぽ」ですね。rectangle は「矩形」です。
つまり、空っぽの矩形です。
でも、今までの解説に「空っぽの矩形」らしき物って……あったっけ?
このセクションでは、本来の「Empty Rectangle」の概要を説明しようと思います。
Empty Rectangle については、『The New Sudoku Players' Forum』の The Empty Rectangle (ER) というトピックで概要が述べられています。
それを基に解説していきます。
元々、「Empty Rectangle」は次の状況のことを言うんです。
- 数字nの入らない4マスがブロック内部にあり、それらが矩形状に並んでいる。この時、その4マスを empty rectangle と呼ぶ。
図1-1 の盤面をもう一度(図5-1)。
図1-1 では「ピンク色ブロックにおいて数字1は▲の5カ所にしか入らない」と状況説明しました。
言い換えると、これは「▲以外の4マスに数字1は入らない」となりますね。
そして、その4マスは矩形状に並んでいます。
この4マスが empty rectangle なんです。
empty rectangle の例をいくつか挙げましょう。
数字1の入り得るマスが 図5-2 の通りだったとします。
小さい「1」で示しています。
この時、各ブロックの empty rectangle は図の通りです。
わかりやすくカラフルに色付けしてみました😊
図を見てみると、「数字nが入らない」という意味では本当に空っぽな矩形状ばっかりですよね。
まさに「empty rectangle」です。
ここからは、empty rectangle を中心に考察しましょう。
図5-3 の黄色ブロックにおいて、▽の4カ所には数字1が入らないとします。
この時、▽以外の5マスに2本の直線を通すことができるんですね。
図5-3、タテヨコの2本です。
ここではその直線を ERL(empty rectangle line)と名付けておきましょう。
そして、この2本の ERL はブロック内部で必ず交差します。
交差箇所のマスを ERI(empty rectangle intersection)と名付けましょう。
こう定義することで、どの empty rectangle に対しても必ず ERI が存在することになりますね。
図5-2 の盤面をもう一度(図5-4)。
各ブロックの empty rectangle に対して、ERI を示します。
*印のマスが ERI です。
empty rectangle に対して ERI は斜めに位置しているような感じ?
そんなふうに見えますね。
さぁ、ここまで empty rectangle, ERL, ERI の3つを説明しました。
では、それらを使って解法 Empty Rectangle を軽くもう一度解説しましょう。
まずはセクション1で使った盤面(図5-5)。
ただし、図と表現を少し変えます。
- 青色ヨコ列において、数字1は●と○にしか入らない。
- ピンク色ブロックにおいて、数字1は▽の4カ所には入らない。つまり、▽の4マスは empty rectangle である。
- *は ERI であり、●はタテ線 ERL 上に存在する。つまり、●と*は同じタテ列に属している。
もちろん、図5-5 からの結論は 図1-2 で述べた結論と同じです。
が、これも表現を変えます。
- 2マス○, *と列を共有するマスが1つある。そのマスに数字1は入らない。
×印のマスに数字1は入らない、というわけですね。
理由はセクション1とまったく同じです。
参考・参照
- The New Sudoku Players' Forum, 『The Empty Rectangle (ER)』,
http://forum.enjoysudoku.com/the-empty-rectangle-er-t3251.html - HoDoKu, 『Single Digit Patterns』- Dual Empty Rectangle,
http://hodoku.sourceforge.net/en/tech_sdp.php#er3 - Sudopedia(ミラーサイト), 『Empty Rectangle』- DOUBLE EMPTY RECTANGLE,
http://sudopedia.enjoysudoku.com/Empty_Rectangle.html
更新履歴
- 2022. 2. 5.
- 新規公開。
- 2023. 3.31.
- ページ冒頭に難易度表記を追加。