1.もうひとつの「双対」
解法 3D Medusa の解説に先駆けて、もうひとつの「双対」について説明していきます。
まずは、解法 Simple Colors や Multi-Colors における双対を軽くおさらいしましょう。
ある列やブロックには、数字1の入り得るマスが2カ所しかない。
この時、「その2マスは数字1について双対である」と述べました。
そして、双対をなす2マスに対して、次の2つが同時に成り立っていたわけですね。
- 一方のマスに数字1が入る。
- 他方のマスに数字1は入らない。
そこで、双対であるマスに色づけをして「数字1が入る/入らない」を区別できるよう可視化させた。
それが 図1-1 なんですね。
詳しくは Simple Colors のページで解説しています。
この双対のことを、このページでは 2マス間の双対 と呼ぶことにしましょう。
実は、わざわざ「2マス間の」と冠を付けたのには理由がありまして。
もうひとつの双対があるんです。
3D Medusa ではそれも必要になるので、ここで紹介しましょう。
図1-2、マスAに注目します。
そのマスには候補数字が2つしかありません。
ということは、マスAについて次の2つが同時に成り立つわけです。
- 一方の数字がマスAに入る。
- 他方の数字はマスAには入らない。
あれ? なんだか2マス間の双対と似てますね!
そこで、あるマスに候補数字がa, bの2つしかない時、そのマスではaとbは双対である と言うことにします。
この双対は マス内部の双対 と呼ぶことにしましょう。
双対が2種類できたので、ここからはマスの色付けを廃止しましょう。
マスではなく、候補数字自身に色づけをします。
次のルールに従って2色を割り当てましょう。
- 双対である候補数字には異なる色を割り当てる。
- ある候補数字nが複数の候補数字と同時に双対である場合、nの相手すべてに同じ色を割り当てる。
a. の例としては、マスAの4と8です。双対なので異なる色が割り当てられています。
b. の例としては、マスBの4です。3つの候補数字344と同時に双対になっているのがわかるでしょうか。
2色を割り当てた結果が 図1-3 です。
いろんな候補数字に色がつきましたね。
これは、マスAの候補数字4からスタートして、双対の関係を持つ他の候補数字に次々と色をつけてできた結果です。
できる限り色付けを波及させました。
ここで、双対である候補数字同士を線で結んでみます。
すると、図1-4 のようにひとつながりの形ができあがりました。
ここでは、これを クラスター と呼ぶことにしましょう。
図1-4 では、青色&水色・全20個の候補数字からなるクラスターができました。
なんだか路線図みたいだ☺️
ちなみに、クラスターには「房」「群れ」といった意味があります。
海外のサイトでも cluster という用語を使ったりしています。
さて、図1-4 で作ったクラスター、何のために作ったのか?
こういう結論を得るためです。
- 青色と水色、どちらか一方の数字全部が当該マスに入る。
具体的に言うと、次のどちらかが必ず成り立つということです。
- 青色の数字が一挙に各マスに入る。
- 水色の数字が一挙に各マスに入る。
なぜ「一挙に」なのかというと、青色数字と水色数字のペアは双対の関係にあるからです。
クラスター上のある数字がマスに入るか否か判明した時、双対の関係によって他のすべての数字も入るか否かが次々と波及していきます。
そして、ものの見事に色分けした通りに「数字が入る/入らない」に二分されるという結果になるんです。
マスに入るのは青色全部? それとも水色全部?
この2択に帰着できる。
これが色付けの大きな意味なんです。
2.クラスターの作り方
前セクションでは、もう1種類の双対を説明し、さらに詳しいクラスターを紹介しました。
当セクションでは、そのクラスターを実際に作ってみます。
前セクションの盤面をそのまま流用しちゃいましょう。
手抜きとか言わないで😅
どうせクラスターを作るなら、なるべくデカい物を作る方が解きやすいというもの。
双対が多そうな候補数字に注目するのがベストかなと思います。
タテ列・ヨコ列・ブロックを見て、2マスにしか入らない数字をいろいろ見つける。2マス間の双対を見込んで。
または、候補数字を2個しか持たないマスを重視するのも手です。
マス内部の双対が見込めますもんね!
今回は、候補数字の少ない右側3分の1に着目します。
候補数字6に注目して、マスAの6から始めてみましょう。
まずは土台として、マスAからスタートして候補数字6だけのクラスターを作りましょう。
まずはAの属するタテ列とブロックで双対が見つかります。
極小のクラスターができました。
そうしたら、拡張した先でさらに双対を見つけて、クラスターをさらに拡張します。
さらに双対を見つけ、さらにクラスターを拡張し……。
これを繰り返してクラスターをどんどん大きくしていきましょう。
とりあえず、図2-2 まで広がりました。
ここから先、2マス間の双対はもぅ見つかりそうにない。
じゃぁ、今度はマス内部の双対に目を向けましょう!
2マスA, Bを見ると、双対がありますね。
またさらにクラスターを拡張できました。
さぁ、マスAでは6から4へと候補数字が切り替わりました。
今度は候補数字4について2マス間の双対を探してみます。
さて、双対はあるでしょうか?
ありました!
タテ列に候補数字4の双対が。
クラスターが少し上に伸びました。
一方、マスBの4は……?
残念ながら双対は見つからず😓
こういうふうに、2マス間/マス内部、両方の双対を駆使してどんどんクラスターを拡張させていくんです。
できる限り大きくしていきましょう!
んで、最終形はどうなったかというと…… 図2-4 です。
ここまで大きくなりました😊
3.こういう手筋があるよ!
クラスターができあがると、いよいよ解法 3D Medusa が使えるようになります。
実は、3D Medusa は結論が多岐に渡るのでボリュームいっぱいの解法です。
そこで、セクション34で6種類を紹介します。
3-1.Color Trap と同じ手筋
これは Simple Colors のページで紹介した解法 Color Trap と理屈はまったく同じです。
既にご存じの方々は読む必要ありませんが、一応このページでも解説していきます。
前セクションの盤面をまた流用しましょう。
「え〜また流用かよw」とか言わないで😅
図3-1 からはこういう結論になります。
- 青色・水色両方の候補数字nと列やブロックを共有している候補数字nがある場合、それを除去できる。
図3-1 だと、赤色の2マスが該当します。
その2マスから候補数字4を除去できるというわけです。
これは、セクション1で示した結論のおかげです。
次のどちらかが必ず成り立つからですね。
- 青色の数字が一挙に各マスに入る。
- 水色の数字が一挙に各マスに入る。
黄色3マスには4と4の両方がありますね。
そして、マスAは4とヨコ列を共有し、4とタテ列を共有している。
ということは、マスAに数字4を入れられなくなるんです。
なぜなら、44どちらかのマスに必ず数字4が入るからです。
マスBも同様です。
マスBは4とタテ列を共有し、4とヨコ列を共有しています。
マスBに数字4を入れられません。
というわけで、候補数字4を2個除去できました😊
3-2.2色が列やブロックに同居した!
では、2つめの手筋です。
前セクションの盤面をまたまた流用します。
「何回流用すんのw」とか言わないで😅
図3-3 からはこういう結論が得られます。
- 青色・水色両方の候補数字nを持つ列やブロックでは、他のマスの候補数字nをすべて除去できる。
図3-3 だと、赤色の2マスが該当します。
赤色マスの属するタテ列には、6も6もありますね。
だから、赤色マスから候補数字6を除去できるんです。
理由は3-1と同じです。
次のどちらかが必ず成り立つからですね。
- 青色の数字が一挙に各マスに入る。
- 水色の数字が一挙に各マスに入る。
黄色マスのどちらかに必ず数字6が入るから、ということです。
3-3.2色がマスに同居した!
3つめの手筋です。
今度は新しい盤面です。
図3-4 からはこういう結論が得られます。
- 青色・水色両方の候補数字を持つマスでは、残りの候補数字をすべて除去できる。
図3-3 だと、赤色マスが該当します。
このマスには37両方がありますね。
だから、この2つ以外の候補数字をすべて除去できるんです。
何度も述べますが、理由は3-1と同じです。
次のどちらかが必ず成り立つからですね。
- 青色の数字が一挙に各マスに入る。
- 水色の数字が一挙に各マスに入る。
数字3, 7のどちらかが必ず赤色マスに入るから、ということです。
3-4.こんなパターンもある!
最後は、複雑なパターンを紹介します。
パッと見ではわかりにくく、ちょびっと混乱するかも。
図3-5、クラスターができあがっています。
このクラスターで注目して欲しいところは、黄色ヨコ列です。
この列では、あるマスに青色数字がありますね。2です。
そして、別のマスに水色数字があります。9ですね。
こういう状況です。
あっ、そうそう。
両者の数字が異なっていることにも注意してください。
これ大事!
こういうふうに、青色・水色の数字が同じ列(または同じブロック)に存在している。
この時、こういう結論が得られるんです。
- 青色・水色の候補数字を持つ2マスからは、互いに相手の候補数字を除去できる。
文字だとわかりづらい😓
図でビジュアル的に理解するといいかも。
マスAには2がある。だから、マスBから候補数字2を除去できる。
マスBには9がある。だから、マスAから候補数字9を除去できる。
こういうことです。
なぜこういう結論になるんでしょう?
もぅ耳タコかっていうくらいにしつこく言いますが、理由は次のどちらかが必ず成り立つからなんですね。
- 青色の数字が一挙に各マスに入る。
- 水色の数字が一挙に各マスに入る。
前者の場合、マスAに2が確定する。
後者の場合、黄色列のマスBに9が入るからマスAに9は入らない。
どちらにしても、マスAに9は入れられません。
また、こういう理屈も成り立ちます。
前者の場合、黄色列のマスAに2が入るからマスBに2は入らない。
後者の場合、マスBに9が確定する。
どちらにしても、マスBに2は入れられません。
というわけで、マスAの候補数字9が除去され、マスBの候補数字2も除去されるんですね。
4.こういう手筋があるよ!(矛盾編)
今度は、前セクションとは違うタイプの 3D Medusa を紹介しましょう。
「クラスターを作ったら片方の色で矛盾が起こっちゃった!」というパターンです。
4-1.Color Wrap と同じ手筋
これは Simple Colors のページで紹介した解法 Color Wrap と理屈はまったく同じです。
既にご存じの方々は読む必要ありませんが、一応このページでも解説していきます。
図4-1 はセクション3-3の盤面です。
そのクラスターをちょびっと拡張させました。
この図からはこういう結論が得られます。
- 青色の候補数字をすべて除去できる。
もぅもぅもぅ散々言いまくってますが、クラスターについては次のどちらかが必ず成り立ちます。
- 青色の数字が一挙に各マスに入る。
- 水色の数字が一挙に各マスに入る。
それを考えると、なにやら黄色ブロックに不穏な空気が……。
これ、青色の数字を採用すると大変なことが起きちゃいますね!
黄色ブロックに数字7がダブってしまって破綻する!
というわけで、青色は却下せざるを得ません。
青色の候補数字は軒並み除去されることになるんです。
青色が却下となると、当然、残るのは水色だけ。
水色の数字がすべて採用されて……。
なんと、クラスター上のマスに一挙に数字が確定してもぅた!
Simple Colors と同様、まさに一蓮托生。
数字の入る運命を共にする。
こういうふうに、スパッと一挙にキマるのはすごく楽しい!
3D Medusa の大きな魅力です。
4-2.同じ色がマスに同居した!
図4-3 の盤面。
今度はどういう結論になるんでしょう?
- 水色の候補数字をすべて除去できる。
もぅすっかり言い飽きてますが、クラスターについては次のどちらかが必ず成り立ちます。
- 青色の数字が一挙に各マスに入る。
- 水色の数字が一挙に各マスに入る。
それを考えた瞬間、なにやら黄色いマスが呼んでいる……。
「俺の水色を見ろ!」と呼んでいる。
たしかに、水色を採用したらマズいことになっちゃいますね。
黄色マスに数字2と9が同時に入ってしまう!
あぁ、水色は切り捨てねばなりません。
水色の候補数字は一掃されることになるんです。
水色は一掃されちゃいましたね。
となると、当然、もぅ青色しか残っていません。
青色の数字がすべて採用されて、クラスター上のマスに一挙に数字が確定してしまいました。
またしても一蓮托生。
数字の入る運命を共にする。
これも一挙にキマってすごく楽しい!
3D Medusa の大きな魅力です。
5.どこら辺が「3D」なの?
ここからは余談です。
このページで紹介した解法は 3D Medusa ですが、はて、「3D」って何でしょう?
それを解説していきます。
セクション1で使った盤面をもう一度紹介しましょう。
図5-1 です。
候補数字はすべて盤面上にありますね。
だから、クラスターも盤面上に乗る。
「マス内部の双対」という新しい概念も覚えて、クラスターはさらに発展できた。
路線図みたいになったね〜😊
……とまぁ、こんな感じで話は進んでいきました。
だけど、そこには 3D のスの字もないわけです。
なんで「3D Medusa」なんて名前が付いたんだろう?
ちょいとこんなことを考えてみます。
盤面を候補数字ごとに分けてみる。
候補数字1のみ抽出した盤面を1枚。
候補数字2のみ抽出した盤面を1枚。
候補数字3のみ抽出した盤面を1枚。
(中略)
候補数字9のみ抽出した盤面を1枚。
ヒント数字のみ抽出した盤面を1枚。
合計10枚用意して、図5-2 のように重ねてみましょう。
Photoshop などのソフトを使っている方々なら、容易く想像できるかもしれませんね。
画像などの編集ソフトでは当たり前のように使われている、あの「レイヤー」です!
地層のように積み重なったレイヤー達。
これらを真上から見ると、元のナンプレ盤面になる。
そういうイメージです。
2マス間の双対では、同じ候補数字を結びます。
ということは、その線は1枚のレイヤー上に乗りますね。
レイヤーを xy平面のようにたとえると、「x方向とy方向に線が伸びる」と言えるでしょう(図5-3 緑色矢印)。
それに対して、マス内部の双対の場合、2つの候補数字は2枚のレイヤーに分かれちゃってますね。
だから、レイヤーからレイヤーへと線で結ぶことになる。
つまり、z方向に線が伸びるんです(図5-3 赤色矢印)。
となると、クラスターは3次元の立体のような形になる。
これが "3D" Medusa たる所以です。
一方、「Medusa」が何なのかはアタシにはわかりませんでした。
ゴメンなさ~い😓
ギリシャ神話のメデューサ(Medusa)かと思ったけど、他にはクラゲ(medusa)という意味もあるらしい!
正解はわからんけど、ひとつ勉強になりました。
あ、そういや、「3d medusa」で検索したらヴェルサーチ関連のサイトがやたらと並んでました。
腕時計とかスニーカーとか、3Dメデューサモデルのブランド品をいろいろ作ってたんですね〜。スマホケースなんてのもあった。
立体的なメデューサがそれはそれは圧倒的な存在感を示してました。
更新履歴
- 2022. 2. 5.
- 新規公開。
- 2023. 3.31.
- ページ冒頭に難易度表記を追加。
- 2024. 3.13.
- 解法 Simple Colors の内容修正に伴い、セクション1の 図1-1 を差し替え。
また、解説文も一部修正(話の本筋に変更はありません)。
- 解法 Simple Colors の内容修正に伴い、セクション1の 図1-1 を差し替え。
- 2024. 3.23.
- マス内部の双対を表していない赤線があったため、7つの図から赤線の一部を削除。
該当の図は 1-4, 1-5, 2-4, 3-1, 3-2, 3-3, 5-1 の7つ。
- マス内部の双対を表していない赤線があったため、7つの図から赤線の一部を削除。