面白い整数 142857 と愉快な仲間たち

 142857 という数はパズル界ではよく知られた整数です。
 だけど、実は、その整数と同じ特徴を持つ仲間は他にもあった!
 142857 の特徴とその仲間たちについて考察してみました。

1.まず 142857 の特徴って何だ?

 今から整数 142857 とその仲間たちの話をしていきますが、その前に「まず 142857 の特徴って何だ?」という話ですよね。
 まずは、その話をしましょう。
 まぁ、よく知られたあの話をするだけなので、既にご存じの方々はセクションに進んじゃってください😊

 この 142857 という数、実は、2倍, 3倍, 4倍, ……していくと面白い特徴が現れるんです。
 こんなふうに。

 いや〜すごい!
 142857 の1倍〜6倍を適当に並べると、数字が1桁ずつローテーションする。
 綺麗な斜めのストライプ。これが整数 142857 の特徴の1つです。

 さらに、7倍しても面白い特徴が現れます。

 最後は数字6個全員が9に化けよった😅
 1倍, 2倍, 3倍, ……で綺麗なストライプ。最後は7倍の9並びで〆る。
 142857 はこういう面白い数なんですね。

 あ、そうそう。
 この 142857 という数、実は、とある簡単な分数と関係があります。

 なんと、循環小数に繰り返し現れる!
 ちなみに、この繰り返される数字列を 循環節 と呼びます。
 分数 1/7 を小数で表現すると、142857 は循環節になるんですね。
 循環節がらみの話はセクションでしているので、頭の片隅に入れておくのも良いでしょう😊

2.142857 には16桁の仲間がいる

 さて、前セクションでは整数 142857 の特徴を紹介しましたね。
 ストライプに9並び、挙げ句には循環節にまでなっちゃった。
 こんな個性的な数は他には無さそうに見えますよね。

 ところが、実は、これは 142857 に限った話ではないんです。
 同じ個性を持つ数は他にもある。
 1つ紹介しましょう。

 整数 588235294117647。
 実は、これも同じ個性を持っています。
 この数は15桁ですが、頭に0を付けて 0588235294117647 と16桁としても扱うことにしましょう。
 まぁ、その意図はすぐにわかります😊

 この数を1倍〜16倍して、適当に並べてみましょうか。
 すると、こ〜んな感じになりました。

 うぉ〜!
 なんという圧巻のストライプ!

 綺麗に斜めに整列した数字たち。
 もはや美しさすら感じさせてくれます🥰

 次に、この数を17倍してみましょうか。

 全員9に化けよった😅
 1倍, 2倍, 3倍, ……で綺麗なストライプ。最後は17倍の9並びで〆たわけですね。

 そして、分数でも面白いことが起こります。

 0588235294117647 は分数 1/17 の循環節だった!

 いやはや、142857 と同じ性質を持った数がこの世にあったんですね。
 142857 には仲間がいた!
 桁数が離れているから、さながら 588235294117647 は歳の離れた先輩のようにも見えますね。

 なんとも不思議なモンです。
 142857 にしろ 588235294117647 にしろ、何でこんな面白い個性を持っているのか?
 次セクションでは、その理由にちょいと迫ってみたいと思います。

3.ローテーションの秘密は割り算の中にあった

 なぜ 142857 の倍数は数字をローテーションした物になるのか?
 実は、分数 1/7、つまり割り算 1÷7 にその理由があるんです。

図 3-1

 142857 は 1/7 の循環節だということは既にセクションで述べました。
 が、そもそも、なぜ 1/7 は循環小数になるんでしょう?
 まずはそこから説明しましょう。

 1÷7 の筆算をしてみます。
 ある程度まで筆算を続けると 図3-1 のようになりました。
 ここで、青色の部分に注目しましょう。
 「10」から筆算を進めていったら……再び「10」が現れた。
 これは何を意味するんでしょう?

新しく現れた「10」から筆算を続けると、青色部分と同じ展開が再び起こる。

 こういうことなんです。
 なぜなら、行う作業はまったく同じだから。
 0を下ろし、商を1桁書き足し、引き算した後新しい余りを書く。
 この繰り返しですもんね。
 特に、下ろしてくる数字は毎回「0」だから、本当に作業が同じなんです。

 当然ですが、同じ作業を繰り返せば、同じ結果が繰り返し起きます。
 というわけで、青色部分の作業が何度も繰り返されることにより、商の記述欄には「142857」が何度も繰り返し並ぶことになるんです。
 つまり、循環小数のできあがり😃

図 3-2

 「10」から作業を行うと、また「10」に戻ってきます。
 その過程で出現した余りを見てみましょう。
 図3-2 の青色数字です。

 よ〜く見ると、1〜6すべて現れている!
 7で割り算すれば余りの記述欄には1〜6しか出現できませんが、その6個すべてが出現しているんですね。

 この6個を見ると、分数 2/7 の小数表現にも法則が見えてくる。
 実は、こんなことが言えるんです。

  • 2÷7 の筆算は、Cの位置から 1÷7 の筆算を始めることと同じである。

 これは 図3-2 を見れば明らかです。
 2÷7 の筆算は「20」から始まって、それ以降は 1÷7 とまったく同じ筆算が続く。
 当然ですが、筆算の流れが同じなら、商の数字列も同じです。ただし、142857 をローテーションさせた「285714」が商の欄に繰り返し並びます。

 2/7 は 1/7 の2倍です。
 2÷7 と 1÷7 の商を比較することでも 142857×2=285714 がわかるんだけれど、図3-2 のおかげで「142857 のローテーションだけで2倍を表現できる」こともわかるんですね。

 他の場合も同様です。
 図3-2 を見ると、こういうことが言えます。

 結局、どの割り算も 1÷7 に帰着して、142857 の2倍~6倍はローテーションだけで表現できるわけなんです。

 588235294117647 も理由は同じです。
 1÷17 の筆算をすると、「10」から「10」へ行く過程で余り1〜16がすべて出現する。
 だから、2÷17 も 3÷17 も 4÷17 も…… どれも 1÷17 と筆算の流れが同じ。
 0588235294117647 のローテーションだけで2倍〜16倍を表現できるんです。

 あ、ついでに、142857×7=999999 の秘密も話しましょう。
 これは割り算 7÷7 で説明ができますね。
 ただし、7ではなく「6.999……÷7」として割り算をします。
 これの筆算をすると、商の欄には見事に 0.999999…… と9ばかりが並びます。
 分数 7/7 は 1/7 の7倍だから、商を比較することでも 142857×7=999999 が成り立つんですね。

4.他にも仲間はいるのかな?

 これまで 142857 とその仲間 588235294117647 について解説してきました。
 実は、これらの数には名前がついています。巡回数 と呼びます。
 ダイヤル数 とも言いますね。

 仲間が1人見つかると、やっぱりこれを考えたくなりますよね。

他にも仲間は存在するんだろうか……?

 果たして巡回数は他にも存在するのか?
 これを考察してみたいと思います。
 ちょいと仲間探しをしてみたい。

 そういや、巡回数 142857 は6桁の数で、1/7 の循環節でしたよね。
 そして、0588235294117647 は16桁の数で、1/17 の循環節でした。
 6と7、16と17。
 なんとな〜く分母と循環節の間に法則がありそうな気がするなぁ……。

 実は、巡回数を探すためのアプローチがあるんです。

 こういう自然数nが見つかると良さそうですね!
 当セクションでは、話を簡単にするためにnを素数(2と5は除く)に限定しましょう。
 そして、次の考察をしてみます。

 もし循環節の桁数が p-1 だったらシメたもの。
 じゃぁ、身近な素数で調べてみましょうか。

素数p1/p の循環節桁数
331
71428576
11092
130769236
17058823529411764716
1905263157894736842118
23043478260869565217391322
29034482758620689655172413793128
3103225806451612915
370273
41024395
4302325581395348837209321

 おぉ〜!
 あるある!
 新しく3つも見つかりましたね! p=19, 23, 29 の箇所です。
 表にはないけど p=47, 59, 61, 97 の場合も循環節は (p-1) 桁になります。
 142857 の仲間達はまだまだいっぱい見つかりそうですね😃

 実は、巡回数についてこれが成り立ちます。

 そういや、セクションでは綺麗な斜めストライプを描きましたっけ。
 p=29 の欄を見ると 344827586206896551724137931 は巡回数だから、この数でも斜めストライプができるはず!
 というわけで、試しにやってみた。

 うゎ〜😅
 声も出ない😅

 ただただ「美しい」としか言いようがない🥰
 これだけ大きいと、少し遠目に見ればストライプが際立つかもしれませんね。
 あるいは数字に色を施してみるとより美しく見えるかな?

 ちなみに、29倍すると綺麗に 9999999999999999999999999999 と28個並びます。
 最後は29倍の9並びで〆る。
 こういうところもさすがは巡回数😃

 ただ、表を見ると、pが素数だからといって必ずしも循環節が (p-1) 桁になるわけじゃぁないんですね。
 Webページ『循環小数もおもしろい』によると、循環節の桁数についてはどうやら法則はまだ発見されていないっぽい。
 となると、巡回数の効率的な探し方はどうやらなさそうです。
 あぁ残念😞
 桁数がpの式で表されていたりすれば、巡回数を探すのがだいぶラクなのにね😞

 でも、巡回数を探す方法はとりあえず存在した。
 となると、まだまだ仲間はたくさん見つかりそうな気がします。
 仲間に会うために、1/p の循環節を1つ1つ調べる。
 そういう地道な旅もまた面白いかもしれませんね。

 最後に余談をひとつ。
 p=13 に対応する循環節 076923 は巡回数ではありませんでした。
 巡回数でない場合、ストライプはできないんだろうか?
 ちょっと試してみましょう。

 あら、2つできちゃった!
 規模は小さいものの、その分、複数のストライプができあがるんですね。
 これは、p=13 に対応する循環節が12桁ではなく半分の6桁だったことが原因です。
 076923 の1〜12倍がキッチリ6個ずつに分かれて、2種類のストライプを形成したんですね。
 巡回数じゃない時はストライプは分裂する!

 ちなみに、p=41 に対応する循環節は 02439 で、5桁です。
 ということは、02439 の1〜40倍がキッチリ5個ずつに分かれて、8種類のストライプを形成するわけです。
 40桁の巨大サイズ1個ではなく、8個のミニサイズに分かれちゃう。
 なんだかキングスライムがただのスライム8匹に分裂しちゃった感じ?😅

な なんと スライムたちが…!
スライムたちが どんどん ぶんれつしていく!

 最後に。
 両者をそれぞれ13倍, 41倍してみましょう。

 こぢんまりながらも、やっぱり最後は9並びで〆る。
 循環節はどれもこれもストライプと9並びがデフォ装備なんですね。
 いやはや、142857 の周りは面白い奴らばっかりだ😃

参考・参照

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