互換の偶奇性の証明

 巡回置換の互換表現において、互換の個数が奇数個であるか偶数個であるかは必ず決まります。
 その証明です。

証明はこんな感じ

 巡回置換が互換で表現された時、互換の個数が奇数個であるか偶数個であるかは必ず決まる。
 それはなぜなのか?
 その証明です。

 前準備として、式 \(P\) を用意します。

\begin{align} P = (x_1-x_2)(x_1-x_3)(x_1-x_4) \cdots (x_1-x_{15})(x_1-x_{16})& \\ \times (x_2-x_3)(x_2-x_4) \cdots (x_2-x_{15})(x_2-x_{16})& \\ \times (x_3-x_4) \cdots (x_3-x_{15})(x_3-x_{16})& \\ \cdots\cdots \qquad\qquad& \\ \times (x_{14}-x_{15})(x_{14}-x_{16})& \\ \times (x_{15}-x_{16})& \end{align}

 そして、添え字番号 \(1, 2, \cdots, 16\) に互換を施すことを考えます。
 なお、\(x_1,\ x_2, \cdots,\ x_{16}\) はどんな数値でもOKです。特に、同じ値が1つもないと考えても差し支えない。
 というわけで、最初から \(P \neq 0\) という前提で話を進めましょう。

 実は、この \(P\) はどの互換を施しても \(-P\) となるようにできています。
 そして、もう一度互換を施すと \(P\) に戻ります。
 要は、互換を施すたびに \(P\) の符号は マイナス→プラス→マイナス→ …… と切り替わるということです。
 (補足説明として後述します)

 さて、任意の巡回置換を \(T\) としましょう。
 そして、式 \(P\) に \(T\) を施すことで、互換の個数に関する性質を調べてみる。

 まず、\(T\) が \(n\) 個の互換で表現されていたとします。
 この場合は \(P\) の符号が \(n\) 回切り替わるから、\(P\) は \((-1)^nP\) に変化します。

 一方、\(T\) が \(k\) 個の互換でも表現されていたとします。
 この場合も同様に \(P\) は \((-1)^kP\) に変化します。

 2通りの結果を得ましたが、どちらも同じ \(T\) による結果です。
 だから、次の式が成り立ちますね。

\[ (-1)^nP=(-1)^kP \tag{1} \]

 ここで、\((1)\) は \(P \neq 0\) でも成り立つのでした。
 \((1)\) の両辺を \(P\) で割っても良い。

\[ (-1)^n=(-1)^k \tag{2} \]

 この \((2)\) により、\(n\) が奇数なら \(k\) も奇数、\(n\) が偶数なら \(k\) も偶数となるわけです。
 つまり、互換の個数の偶奇は決まっているんですね。

補足説明

 互換を施すとなぜ \(P\) の符号が反転するのか?
 それをもう少し詳しく解説しましょう。

 \(P\) はこういう式でした。

\begin{align} (x_1-x_2)(x_1-x_3)(x_1-x_4)(x_1-x_5) \cdots (x_1-x_{15})(x_1-x_{16})& \\ \times (x_2-x_3)(x_2-x_4)(x_2-x_5) \cdots (x_2-x_{15})(x_2-x_{16})& \\ \times (x_3-x_4)(x_3-x_5) \cdots (x_3-x_{15})(x_3-x_{16})& \\ \times(x_4-x_5) \cdots (x_4-x_{15})(x_4-x_{16})& \\ \cdots\cdots \qquad\qquad& \\ \times (x_{14}-x_{15})(x_{14}-x_{16})& \\ \times (x_{15}-x_{16})& \end{align}

 この \(P\) に例えば互換 \((1, 4)\) を施してみましょう。
 施した後、\(P\) は次の式に変化します。

\begin{align} {\color{blue}(x_4-x_2)(x_4-x_3)(x_4-x_1)}{\color{green}(x_4-x_5) \cdots (x_4-x_{15})(x_4-x_{16})}& \\ \times (x_2-x_3){\color{blue}(x_2-x_1)}(x_2-x_5) \cdots (x_2-x_{15})(x_2-x_{16})& \\ {\color{blue}\times (x_3-x_1)}(x_3-x_5) \cdots (x_3-x_{15})(x_3-x_{16})& \\ {\color{green}\times(x_1-x_5) \cdots (x_1-x_{15})(x_1-x_{16})}& \\ \cdots\cdots \qquad\qquad& \\ \times (x_{14}-x_{15})(x_{14}-x_{16})& \\ \times (x_{15}-x_{16})& \end{align}

 当然ですが、\(x_1\) と \(x_4\) を含んでいる因数にだけ変化が起こります。
 青色部分では \((x_1-x_2)\) から \(\color{blue}(x_2-x_1)\) へといったふうに引き算の順序が変わり、掛け算位置も移動した。
 緑色の2行は上下そっくり入れ替わる形で場所移動した。
 要は、掛け算の順序がゴソッと変わり、青色因数の符号が反転したわけです。

 掛け算は交換法則が成り立つから、緑色部分は \(P\) の値に影響を与えません。
 問題は青色部分。
 青色の因数は何個あるか?
 実は、青色部分はL字を描きます。そこに着目すれば、青色因数は奇数個だとわかる。
 だから、式全体として符号は奇数回反転し、\(P\) が \(-P\) になるんですね。

 他の互換に対しても理屈は同じです。
 互換を施すたびに \(P\) の符号が切り替わります。

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