暁星山岳部のあゆみ 年代
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吉野興一先生 遠西敬二先生
常陸悠介
日野淳
荒川陽彦 小野晃 山田創 江本哲朗 前中貴斗 石川知郷
井浪皓之 森川誉久 磯部紀之 坂口亮
●ルート
1日目 ―高尾―茅野―竜源橋―双子池泊
2日目 ―北横岳―麦草峠―高見石小屋―黒百合ヒュッテ泊
3日目 ―天狗岳―オーレン小屋―赤岳鉱泉泊
4日目 ―行者小屋―赤岳―行者小屋―赤岳鉱泉―美濃戸口―
●2001年3月 井浪晧之
私にとっては二度目の八ヶ岳だった。一度目は96年、私は中学三年生で、夏合宿では初の快晴となり、美しい八ヶ岳の景観は私の心を完全に魅了したのだった。二年が経って、我々は下の学年を率いる立場となり、後輩たちにもあの美しい景色を見てもらい、山の魅力を感じ取ってもらいたいと思っていた。また自分も再びあの美しい景色と出会えることを期待していた。
しかし、八ヶ岳の空は白く覆われていた。竜源橋から入山し、双子池で幕営する。夕食を終えそろそろ消灯というころ、雨が降り始めた。やむことを期待しテントの中で眠りにつく。翌朝、雨はしとしとと降り続いていた。まず北横岳に登り、五辻を通り麦草ヒュッテへと行き、昼食を取り、黒百合ヒュッテまで向かう。三日目、視界は白くぼやけたままだ。天狗岳を越え、美しいコマクサの群生地を過ぎオーレン小屋へ下っていく。オーレン小屋では、豊富な水を利用して昼食に冷やし中華を食べる。ここならではの贅沢だ。オーレン小屋からの急坂を登りきると、左に硫黄岳、正面に横岳・赤岳と見えるはずだった。だが、目の前には白いガスが広がるばかりだった。翌日、天候の悪化から硫黄岳、横岳、赤岳と一周するコースをあきらめ、赤岳へピストンすることに。霧状の雨の中、赤岳に登頂。達成感はあったが残念な気持ちのほうが強かった。そしてこのまま美しい景色に出会うことなく下山することとなった。
しかし、今までは分からなかった雨の山行の魅力に気づいた。晴れの山行の醍醐味である展望こそないが、森の中でのむせ返る木々やこけの匂いやしっとりとぬれたコマクサの花は、植物がより生き生きと活動していると感じられた。また岩場での白いガスの流れを見ると、不思議な気持ちになり、自然の神秘が感じられる。
我々の学年は雨が多く、晴れの山行は数少ない。だからこそ晴天の美しい展望はより美しく脳裏に焼きついているのである。

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