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電圧測定で問題点はグリッドにあることが分かったのですが,じつは,このアンプの配線は,目視でも問題点がわかります。

カソードへの配線

まず,カソードが真空管から遠く離れていること。
これも,なぜか佐久間アンプを製作してトラぶっている人に多く見られます。
たしかに,この「作り方」でも,真空管からカソード抵抗までの距離は長くてもよいと説明しています。佐久間さんの作例でもこういったケースがいくつかありまし,なぜか,MJ無線と実験は,こういった「イレギュラー」な写真ばかりをアップで掲載しています。
しかし,ものには限度があります。改造したアンプならともかく,カソード抵抗は真空管の近くに配置すべきです。ただ,配線はちょっとくらい長くなっても大丈夫ということです。長くなっても大丈夫ということは,他の線が近くにある場合は,その線の配線を優先させ,カソードの線は遠回りになってもいいので,避けるように配線してください,ということです。このアンプのように,長いカソード配線がほかの配線と重なったりしているのは問題です。

また,この製作者は線は直交させれば大丈夫,ということを意識して,最短で配線しているようですが,この「直交させれば大丈夫」も,どうしようもない場合には,直交させるしか仕方がない,ということです。
できれば,配線と配線は遠ざけるにこしたことはありません。
2本のカソード抵抗は,それぞれ真空管の近くへ移設することにします。

アース母線

信号系のアース母線は入力端子と出力端子を両端とします。信号系が並んでいるので,ルール通りの配置にすれば,カソード抵抗を足場にしてきれいに張ることができますが,このアンプはカソード抵抗が遠く離れているので,同じ真空管のグリッド抵抗とカソード抵抗が遠く離れていることもあり,アース母線が複雑な枝分かれをしてしまっています。これもカソード抵抗を移設すれば改善できます。
また,アースはできるだけアース母線を使用したいとの考えからか,アース母線を繋いで使用している箇所があります。(写真 青い円内)



また,カソードコンデンサーはアース母線を付けた後でハンダづけします。このアンプでは,カソード抵抗とアース母線のハンダづけに苦労された様子がみえるので,もしかするとカソードコンデンサーも熱せられて痛んでいるかもしれません。コンデンサーの足を短くしているのもハンダ付けのさいの放熱を考えると不安です。(写真 赤い円内) 大きなカソード抵抗へのハンダ付けは,カソードコンデンサーに熱が伝わりやすく注意が必要です。コンデンサーは熱に弱いので,佐久間さんの写真でも分かるように,コンデンサーの足は出来るだけ切らずに長いままハンダ付けします。そのさいも,足をラジオペンチでつまんで放熱させ,はんだの熱が少しでも伝わりにくように工夫します。

次の写真は佐久間さんの配線ですが,カソードからアース母線までは普通の配線コードで配線されています。
このように,すみずみまで,太い線で配線する必要はありません。
佐久間さんの作品では,カソードに直接アース母線をつけているアンプも多いですが,これはアース母線が垂れ下がるのを防ぐ効果と配線が便利だったためです。



なお,この写真のアース母線とカソードからの配線のハンダに注意してください。
このような箇所のハンダ付けは熱容量の小さなハンダごてを使用するとアース母線に熱が取られ,なかなかハンダが溶けずに,ついつい熱の加えすぎになります。
適切なハンダごてで,まずアース母線にハンダメッキをしてから,短時間でカソードからの配線をつけます。
この写真では,この箇所と左下のハンダづけでも,アース母線にハンダメッキをしてあることが分かります。また,ハンダが輝いており,適正な温度でハンダづけされたことがわかります。
ハンダ付けの後,ひっぱると取れてしまうのは,熱が不足。ハンダ付けしたハンダ表面が白くなって輝いていないのは,熱の加えすぎです。
さらに,カソードからの配線も十分にハンダメッキしてあります。佐久間さんの配線は,とにかくハンダづけするケーブルを十分にハンダメッキすることにあります。
カソードも長い足にして,ハンダ付けのさいに,すこしでもコンデンサーに熱を伝えないようにしてあります。
ハンダ付けさのさいには,ここをラジオペンチでつまんで,熱を逃がしながらハンダ付けをします。

ハンダ付けの不良

ハンダの熱し方が不十分な場合は,「いもはんだ」になります。いもはんだでもテスターでは導通が確認でき,問題ないように判断してしまいますが,ノイズの原因や,急に外れたりする危険なハンダづけです。

いもハンダになりやすいのは,直接アース母線をカソード抵抗にハンダづけする場合です。どちらも大きな部品ですので,はんだごての熱がどんどん吸い取られいもはんだになるか,熱しすぎて,劣化したハンダづけになってしまいます。 今述べたようにアース母線とカソード抵抗の間は普通の配線コードで配線しても問題ありません。
このアンプも一部のアース母線でいもはんだでは?と疑われるケースがありました。

カソード抵抗と同様にいもはんだになりやすいのは,ヒーターのDC点火回路に使用するダイオードのハンダづけです。



もともとダイオードは放熱するように作られており,こちらもいもはんだになりやすい部品です。十分な熱量のはんだごてで素早くはんだづけする必要があります。
ダイオードのはんだづけは,ダイオードをシャーシに取付内で行います。すべてのハンダ付のあと,シャーシに取り付けます。シャーシに取り付けてハンダ付けするとシャーシも放熱板になって,ますますはんだづけがしにくくなります。
このアンプでも,ダイオードのはんだづけがいもはんだになっており,配線のひきなおしのさい,ひっぱっただけでハンダがはずれてしまいました。
この形状のダイオードは配線を直接ハンダづけせずにいったん圧着端子へ付けてから,ダイオードへ付けたほうが無難です。また,長い足がついているダイオードはその部分も放熱に役立っており,短く切り取ってはいけません。


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