コンデンサー

コンデンサーの種類について

コンデンサーには,電解コンデンサー,オイルコンデンサー,フィルムコンデンサーなど,いくつかの種類があります。



しかし,ごくたまに回路図によっては,電解コンデンサーもオイルコンも同じ略号で記されていることがあります。
区別の仕方ですが,佐久間アンプの回路図の場合,20μFF以上の大きな値のものは電解コンデンサーと考えてください。 なお,『MJ無線と実験』掲載の佐久間アンプの回路図では,フィルムコンデンサーの場合は,必ず回路図記号の近くにフィルムと記入があるので迷うことはありません。佐久間アンプではフィルムコンデンサーは使用しません。

それぞれに特徴を持っていますが,佐久間アンプで使用する場合は,音色の関係から,できればオイルコンデンサーを使用したいところです。しかし,オイルコンデンサーはサイズが大きくなること,それと,大きな容量のものが無いので,やむを得ず電解コンデンサーを使用していることもあります。
佐久間さんは電源部には,オイルコンデンサーを使用していますが,スペースが無い場合には,電解コンデンサーを使用する場合もあります。また,作例によっては,フィルムコンデンサーを使用しているアンプもあります。

電解コンデンサーの極性

電解コンデンサーには,極性があります。
極性というのは「+(プラス)」と「-(マイナス)」のことです。
電解コンデンサーには,こちら側をプラスにつなぎなさい。こちら側をマイナスにつなぎなさい,という指示があるのです。
実物にも普通は,マイナス側(アース側)「つまり,こちら側をマイナスにつないでください」という表示があります。
ほとんどの電解コンデンサーは,表面にマイナスの印が帯状にプリントされています。そちらがわの足がマイナスです。足の長さは,長いほうがプラスです。(訂正2018年10月16日 誤:マイナスが長くなっています)

回路図では,上の方が「+」となるように書かれますので,ハンダ付けをする時に,回路図と実物の極性(プラスとマイナス)をよく確認しなくてはいけません。
また,真空管のカソードに付くコンデンサーですが,ほとんどの回路図では,下図のAのような描きかたになっていますが,たまに,Bのように描かれている場合があります。



この場合はAを横倒しにしただけなので,コンデンサーの右側がプラスになります。分かりにくいときは,コンデンサーの片方をたどっていきアース記号に繋がっている方がマイナスです
なお,極性をまちがえてハンダ付けすると,コンデンサーが壊れるので,くれぐれも気を付けてください。
佐久間アンプで使用する他の部品で,極性があるのは電解コンデンサーとダイオードだけです。
トランスには,巻きはじめと巻き終わりの表示がありますが,タムラトランスの場合,配線するときには無視して配線しても問題はありません。

電解コンデンサーの形状

電解コンデンサーには,チューブラー型とブロック型のふたつのタイプがあります。形が違うだけで,働きは同じです。 佐久間アンプではおもにチューブラー型を使います。
たいていのパーツショップでは,どちらが欲しいのかたずねれらますが,サン・オーディオなら通販でも佐久間アンプにあったものを送ってくれます。
ブロック型は複数のコンデンサーがおなじパッケージに入っているタイプもあります。

コンデンサーの取り付け金具

チューブラー型の電解コンデンサーはハンダ付けすれば,OKですが,ブロック型の電解コンデンサーは取り付け金具でシャーシに固定します。ブロック型電解コンデンサーの取り付け間具はコンデンサーに取り付けられて販売されています。
オイルコンにも取り付け金具が必要です。
サン・オーディオで扱っているオイルコンは音色もよく,金具もいっしょに販売されているのでお勧めです。ただし,取り付けネジはついていませんので,3〜4ミリ(長さ20〜25ミリ)のネジとワッシャとナットを自分で用意しなくてはいけません。
他のオイルコンデンサーの場合は,取り付け金具が付いていない場合もあるので注意してください。

コンデンサーの容量と耐圧

コンデンサーの記号をみると,下図のようにコンデンサーの記号の左側に,「100μF 100V(Vまたは,WV)」と書かれています。



「100μF」は100マイクロと読みます。
コンデンサーの容量を表わす単位です。オイルコンでも電解コンデンサーでも,このμFFを使います。
μFFはマイクロファラッド読みます。回路図では「μF」マイクロと略している場合がほとんどです。
次に表示の「100V」ですが,これは耐圧です。
何ボルトまで使用可能,という表示です。
10μFでも耐圧によって,16V,25V,100Vなどさまざまです。
ですから,回路図に100μF 100Vとあれば,指定の物,もしくは指定耐電圧より大きなものを買ってください。
16Vと指定のある個所に,25V,100Vの耐圧のものを付けても問題ありませんが,100V指定の時に,16V,25V耐圧の物を付けると,電圧に耐えられずにコンデンサーが壊れ,非常に危険です。
耐圧の大きいコンデンサーは,値段の高くなりますが,よい音がします。
佐久間さんは回路図に耐圧100Vの電解コンデンサーと書いていても,実際は500V耐圧の電解コンデンサーを使用している場合があります。また,最近では,5691のカソードには,100μF。その他の真空管には100μFではなく47μFを使用しています。以前に発表されたアンプを製作する場合は,カソードのコンデンサーの容量と耐圧を変更してもよいかもしれません。
ただし,耐圧の大きい物はサイズも大きくなるので,5691のカソードにサイズの大きな電解コンデンサーを付けるのは難しく,また,必要以上にサイズが大きな部品は,配線も難しいの注意が必要です。しかし,ドライバー管や終段の真空管(出力管)に使用する場合は,耐圧の高い電解コンデンサーに換えても良いでしょう。

耐圧が明記されていないとき

回路図によっては,耐圧が明記していない場合があります。
たとえば,下図のような場合です。



こういう時は,そのコンデンサーのすぐ上を見てください。 25Vと書いてあります。 これは,この部分の電圧は25Vになりますという表示です。 完成後,ここにテスターを当てると25Vの表示が出る,ということです。
ですので,コンデンサーも25Vの電圧に耐えられる物,つまり最低,25Vは必要ということです。 普通は,大きい目のものを付けますので,耐圧100Vで十分でしょう。
なお,付ける,ことを「入れる」といったりします。
ここへは47μFを入れてください,ということは47μFを付けてください,ということです。
なお,カソード電圧の近くには,7.2Vなどの電圧も書かれています。これは真空管のヒーター電圧です。
真空管のヒーターの電圧は,ほとんどの傍熱管は6.3V。直熱管は7.5V,845や211は 10Vですので,カソード電圧と間違えることはないでしょう。

目的の耐圧のコンデンサーが入手できない場合

目的の耐圧のコンデンサーが入手できない場合があります。
とくに600V以上の物は,入手が困難かもしれません。
このような場合は,2個のコンデンサーを直列につないで使用します。
たとえば,耐圧360Vのコンデンサーを2個「直列」に接続することで(後述)720Vまで耐えられるようになります。 ただし,この時の容量(μF)は半分になってしまいます。
もちろん,何個でも重ねられますが,シャーシのなかでかさばりますので,実用的ではありません。他にも問題がでてきますので,初心者の方は,重ねるときは同じ値の物を,2個までとしてください。
また,電解コンデンサーの場合は極性の「+」と「-」にも注意してください。

なお,最近では真空管ブームで550Vでも耐えられる電解コンデンサーもスポット的に発売されていますので,サン・オーディオなどにと問い合わせてみてください。
電解コンデンサーは製造会社や製品によって音色がずいぶん変化します。また,高圧の電解コンデンサーは高額ですが,安全のため,また,ノイズなどの問題から,可能な限り,十分な耐圧をもった1個の電解コンデンサーを使うようにしてください。佐久間さんは,ニッケミやニチコン製の電解コンデンサーを使用していますが,550Vの電解コンデンサーは手に入らないため,エルナーのオーディオ用などの電解コンデンサーなどを使用しています。電解コンデンサーは音色より安全重視で選択してください。

電解コンデンサーの接続の仕方

コンデンサーや抵抗などの電子部品の接続の仕方には,直列接続と並列接続があります。
下に回路図を示しておきます。なお,前にも述べましたが,電解コンデンサーには極性があり,回路図では上にプラスが来るように描かれています。



直列接続と並列接続ですが,乾電池のつなぎ方を学んだと思いますが,それと同じです。乾電池を電解コンデンサーや抵抗に置き換えただけです。
なお。直列接続を「シリーズにする」と言ったり,また並列接続を「パラにする」,「パラる」とも言います。

直列接続・並列接続での値の変化

同じ値のコンデンサーを直列に繋ぐと,容量が半分になります。
たとえば,220μF 360Vのコンデンサーを直列につなぐと,容量110μF,耐圧720Vのコンデンサーと同じになります。
並列に接続すると,容量は2倍になります。
220μF 360Vを並列につなぐと,440μF 360Vのコンデンサーと同じになります。

佐久間アンプでは電解コンデンサーを直列に接続することは,ほとんどありません。
デカップリングコンデンサーに使用する電解コンデンサーに,希望の耐圧の物が入手できない場合に,やむを得ず2個のコンデンサーを直列接続することがあります。
たとえば100μF 550Vのコンデンサーが入手できない場合は220μ 耐圧360Vのコンデンサーを2個直列に繋いで代用とします。



電解コンデンサーに並列に接続されている2本の抵抗は,ほとんどの回路図からは,自明のものとして省略されています。
この抵抗は,コンデンサーにかかる電圧を等しくするためのもので安全の為に挿入しますが,つけなくてもかまいません。
この抵抗は,150KΩ〜200KΩの抵抗値で,2W〜3Wの抵抗(酸化被膜抵抗)を使用してください。

下図は並列接続の場合です。佐久間アンプでは,例としてあげたヒーター回路などでよくコンデンサーの並列接続をおこないます。



なお,先にも述べましたが,コンデンサーは並列に繋ぐと,容量が足し算されます。
この例では,容量10000μF,耐圧25Vの電解コンデンサーを2本繋ぐことによって,容量20000μF,耐圧25Vのコンデンサーとおなじよう働きとなっています。しかし,佐久間アンプでコンデンサーが並列接続されている場合は,まとめてひとつのコンデンサーにしたりせずに,回路図どおりの値の物を複数を整列接続してください。
なお,ここで説明のためにあげた直列と並列接続の図ですが,実際のコンデンサーを繋ぐ配線はラグ板等を用いてハンダ付けします。また,コンデンサーについている線も,このように短くすることはありません。詳しくは後の章で説明します。

コンデンサーの働き

回路図には,いくつかのコンデンサーが使われていますが,簡単にそれぞれの役割などを説明しておきます。 回路図5-4をご覧ください。



まず,コンデンサー1ですが,これらは真空管のカソードにつけるものです。
カソードのコンデンサーの値を変化させると再生音が変化します。
容量を増やすと,再生音の低域が増えます。
容量を減らすと,再生音の低域がへり,高域が出てくるようになります。
ただし,変化させる容量は,22μF,33μF,47μF,100μFのなどです。最初は回路図指定の物を使用して,聞きながら変化させてください。
なお,5691のカソードコンデンサーは回路図によっては220μFのものもありますが,100μFで固定してください。

コンデンサー2と3は,真空管のプレートに供給する直流を作るためのものです。
電源トランスから供給される400Vの交流を,整流管,コンデンサー2と3,それとチョークトランスA-4004を使って直流に変化させています。
佐久間アンプのかなめともいうべきところです。
この50ドライブ50アンプは,佐久間さんがありあわせのシャーシを使った関係から,A-4004は1個だけしか使用していませんが,もし,製作されるのでしたが,奥澤の01シャーシを使って,42ドライブ801AのようにのようにA-4004を2個使った,二段チョークにしてください。

整流管に83などの水銀入りの整流管を使った場合には,整流管に接続するオイルコンデンサー(図では2のコンデンサー)の容量は,8μF以下,できれば,6μFくらいにしておいてください。ちなみに,電源トランスの400Vタップの間,整流管のすぐ隣に挿入されているスイッチも水銀整流管の場合に必要です。このスイッチはB電源のスイッチと呼ばれます。まず,電源スイッチをオンにして,3分くらいすると,水銀入り整流管の中の水銀が蒸発してきます。さらにその水銀蒸気が見えなくなってから,このB電源のスイッチをオンにすると,801Aなどのプレートに電気が流れます。
5R4などの整流管は直熱管ですが,水銀が入っていないので,このスイッチは不要です。また,2のコンデンサーも10μFや22μFでかまいません。

コンデンサー4はデカップリングコンデンサーと呼びます。それぞれ近くに付いている抵抗といっしょに電圧を調整しています。
終段への電流を,ドライバーや初段に供給する場合には,抵抗を挿入して電圧を下げ,その後で,デカップリングコンデンサーを挿入します。終段とドライバーが同じアンプの場合は(50ドライブ50パワーアンプなど)は,ドライバーの電圧をあまり下げたくないので,抵抗の代わりにチョークトランスを挿入し,デカップリングコンデンサーを挿入します。
アンプの音色も,抵抗とチョークトランスでは,チョークトランスのほうが優れています。
佐久間さんの作例では,終段とドライバー段の間に,チョークトランスとデカップリングコンデンサーが挿入されず直接接続されているアンプもあります。1623ドライブ50シングルアンプ等ですが,トラブルの原因ですので,チョークトランスとデカップリングコンデンサーを,必ず!挿入してください。
デカップリングコンデンサーはたいてい100μFですが,47μFのほうが音が良いようです。ただ,5691へのデカップリングコンデンサーは100μFを使用してください。

コンデンサー5は,5691のプレートに接続している抵抗といっしょになって音声信号を伝えるための仕事をしています。
5691のプレートに抵抗を繋ぐ,つまり抵抗を負荷しています。5691からの信号をさらに42で増幅するのですが,この場合,42のグリッドへは,交流のみを入力する必要があります。コンデンサー5は,5691からの出力のうち,交流のみを42のグリッドへながす働きをしています。
また,この抵抗とコンデンサーは,1個のトランスに置き換えることが可能です。
コンデンサーと抵抗を使用した場合は,「CR結合」と呼びます。また,トランスの場合は「トランス結合」と呼びます。 CRはCapacitor(コンデンサー)と Resistor(抵抗)の略です。
なお,コンデンサー2,3は電流を安定させるために使用され,コンデンサー5は交流のみを流すために使用しています。
コンデンサー6は,点線でかこったイコライザー素子の一部です。このオイルコンデンサーの値を変更することはできません。


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