4 部品レイアウト例

佐久間アンプの場合,前から見て,電源トランスをシャーシの右後ろ,その横にオイルコン,その横にヒーターチョーク,出力トランスとレイアウトし,信号系を前の方まとめ,信号が左から右へ流れるようにすれば大丈夫ですが,変形の部品レイアウトもいくつかを示しておきます。

図7-2は,終段がプッシュプルの例です。



ドライバートランスの2次側は真空管のグリッドに近づけるという鉄則からすると,図Aのほうが好ましいのですが,図Aの配置にすると,シャーシの隅に配線するのが鉄則であり,ノイズ発生源でもあるヒーター配線がシャーシの内部にまで配線されることになります。また,そのさい,信号のラインとも交わる可能性もあります。真空管の放熱などの点,また,信号部と電源部を離すという点から考えると,図Bの真空管レイアウトが佐久間アンプでは一般的です。

図7-3は,出力トランスのレイアウトです。



パワーアンプの例ですが,図Aのほうが信号の流れに合っています。しかし,終段のプレートの線は,長くても大丈夫ですので,図Bの場合でもさしつかえありません。むしろ,図Aの場合,整流管がトランスの陰になり,風通しが悪くなる影響の方を懸念しなくてはいけません。
すでに説明したとおり,出力トランスの2次側からスピーカー端子(プリアンプでは出力端子)への配線は,さほど通り道に気を使う必要がないので,図Bが一般的です。スピーカー端子(出力端子)は,シャーシのどこへつけても大丈夫です。

図7-4は,ドライバートランスのレイアウトです。



ドライバーもプッシュプルの場合は,ドライバートランスと真空管のグリッド端子を一番近づけるにはどうしたらよいか?が一番のポイントになります。
実際に配線してみると図Aの場合は,ドライバートランスから遠いほうの真空管へのグリッド配線が長くなってしまいます。 配線をしやすくするには図Bのレイアウトを採用し,ドライバートランスの設置方向を工夫します。

ドライバートランスの向きは,図Aでは信号の流れどおり,シャーシの左側にドライバートランスの1次側,右側に2次側が来るように設置します。
一方,図Bのレイアウトは,ドライバートランスの1次側をアンプの奥(電源部)に,2次側をシャーシの手前になるように設置すれば,グリッド配線を短くできます。真空管のプレートからドライバートランスへの配線は長くなってしまいますが,グリッド配線を長くするよりは,はるかによい方法です。
なお,ドライバートランス1は,形状的に1次側をシャーシの後ろへ向けると,設置スペースが横へ広くなってしまいますので,スペース的なことも考えて,どの方向に設置するか検討してください。

ドライバートランスへ電源を供給する電源チョークの端子も,ドライバートランスへの配線が短くなるように,端子をどちらに向けるのか検討してください。場合によっては,トランスに描かれている巻き線図が横を向いたり,見えなくなるかもしれませんが,見た目より配線重視でお願いします。

このように部品レイアウトでは,あちらが立てばこちらがたたずのケースが多くなります。しかし,ここで十分部品レイアウトを考えておくと,アンプは完成したも同然です。

5 実際の部品レイアウト作業

シャーシの大きさを書いた紙やシャーシそのものに,実物をならべて並べて,検討してください。 検討がすんだら,シャーシに穴を開ける位置などの印を付けていきます。 奥澤のシャーシはアルミの保護のために丈夫なビニールが貼ってあり,この上から,鉛筆やフェルトペンなどで,直接線が描けます。アルミなどに直接書けるボールペンも市販されています。 私はAdobe社のイラストレーターというソフトで部品レイアウトを考え,穴あけ位置をプリントアウトしたものをシャーシに貼り付けています。

電源トランス,出力トランス,チョークなどは裏の化粧パネルなどを利用して,マジックなどで型をとると便利です。 穴の位置だけでなく,化粧板のまわりもなぞって大きさがイメージできるようにしておいてください。さもないと,どれが何の穴か分からなくなる場合がありますし,トランスがぶつかることもあります。

TKS-27や真空管ソケットはそれぞれ,中心点の位置だけを印してください。 オイルコンデンサーの取り付け位置も,オイルコンデンサーの端子穴だけを開けて,実際にオイルコンデンサーをシャーシに置いて,取付金具の穴を現物あわせで決めたほうが無難です。 取り付け穴も同時に開けるとずれた場合修正が困難です。詳しいことは次章のシャーシ加工で説明します。

ホーロー抵抗(カソード抵抗)はたいてい,トランスの止めネジを利用して止められますが,カソード抵抗用の取付け穴をあけたほうが綺麗な配線になります。

部品をレイアウトすると,奥澤01シャーシよりも一回り小さなシャーシで製作可能と思われる場合もあるかと思います。しかし,真空管アンプのシャーシは,「中でゴキブリが運動会するような」大きな物のほうがトラブルが回避できますので,01シャーシの使用がベストです。


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