記憶の中の風景
子供の頃 「麦と王様」という本を読んだ
#1
昔本当の空色という本を読んだ
本当の空色は矢車草からとった青、その絵の具で空を描くと
本当の空が現れる
星のきれいな夜には 絵の中にも満天の星 」
澄んだ蒼弓
あお、 青、 蒼
青の時代、サーカスのピエロ、やせた母子の背負う悲壮な青
長い長い影を引きずる女性、
ムンクの青、寂しい北欧の夜
いつの頃から 私は青い色にこんなにも 引かれていったのだろうか
子供の頃の遠い記憶をたどると
私の本当の空色が待っていてくれるような気がして・・・それを探しだすために
蒼い絵を描き続けるのだろうか
#2
古代ギリシャの宮殿の名残り
今は異次元との架け橋になっている柱だけが
林立している
その背景にある青い空は
ひっそりと澄み渡り
妙にゆったりとした安心感と一抹の不安が溶け合い
かろうじて現実の一隅に
位置を占めている
「ちょうど壊れていると思ったオルゴールが 、
ふいにつつかれて、自分の歌を最後まで歌う様に・・・」
おひとよしのウイリーの語る大昔の記憶・・・
「ぼくがエジプトにいてまだ小さかった頃
ぼくは、 おとうさんの麦をまいた。
種まきが終わると、ぼくはいつも、畑を見張って、
みどりの芽の出てくるのを待った。
それから、日がたつうち、ムギの茎からは、穂が出てくる。
みどりの畑は黄金色に変わる。
毎年、畑がムギで金色になると、ぼくは思った、
ぼくのおとうさんは、エジプト中で一ばんのお金もちだと。・・・」
『エジプトの王は、ムギよりも金色に輝いておる!エジプトの王の命はムギよりも長いのじゃ』
といったラ王
権勢をる誇る ラ王が亡くなり、 お墓には 無数の黄金とともに
ウイリーの父親の麦畑から ほんの少しの黄金色の麦が 入れられた
「何百年も、 何千年も後のこと、 実は去年のことだが・・・ 」とウイリーが語る
つい最近、イギリス人がラ王の墓を見つけた ラ王の墓が発掘され、
黄金は日の光を浴びるともろく朽ちてしまったが
麦の粒はウイリーの畑にまかれ、ラ王の黄金より黄金色に秋の光を浴びて輝いていた
「エジプトの王様と麦と、どちらが命が長い?」
この物語を大人になってからも私はいったい何度読み返しただろうか