シュトルムの作品の中に”湖”という小説がある

ドイツの湖と日本のそれとは言葉から受ける印象がずいぶん違うが

その小説が好きで子供の頃何度も読んだ覚えがある

初恋のほろ苦い思いを描いた小作品だったけれど

私にとって”湖”という言葉を聞いてまず思い浮かぶのはあの作品

ドイツの人はなんてロマンチストなのだろうと思いながら読んだ

私の想い出は湖とともにある

湖の側で育った私にとって

湖という言葉を聞いただけでいろんな記憶がよみがえってくる

湖で泳ぐ

湖を船で行く

ヨットのある風景

窓から見える水上スキーをしている沖合い

桟橋

釣り

湖のほとりの散歩

湖を眺めながら語らう

和船

櫓をゆっくりこぎながらお年寄りが和船で漁に出る

子供も器用に櫓が漕げる

山と湖

自然に恵まれた世界

湖は日々表情が変わる

空を反映して。。。

気持ちを反映して。。。

ある人を好きでたまらなくって

その思いを伝えられなくて

湖のほとりを

黙って歩く

二人でいても言葉がなかなか出てこなくて

歩きつづける

おとなになった今

湖は遠くなってしまったけれど

人になかなか思いを伝えられない自分だけが

残ってる



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2000/5