懐かしい音色




4月のうららかな日だというのに

私は気重なことに心がとらわれていて少し自分をもてあまし気味でした。

ぶらっと下北沢へウィンドウショッピングに出かける気になり・・・

井の頭線で出かけてみました。

下北沢はすごい人人(@_@;)

行く前は雑踏の中にいるとよけいに自分の屈託が増してくる気もしたけれど、

案外そうでもなくいろんなお店を一つまた一つと立ち止まりながらブラブラと歩きました。

下北沢には質屋さんやアンティークショップが結構あります。

アンティークなものってとても惹かれます。

昔の香りがして、ついつい西洋骨董店にふらっと入りました。

せまい店内には少し違う空気が漂っています。

入り口の近くにあった蓄音機が目に入り、じっと眺めていたら・・・

お店のご主人が暗い奥から

「蓄音機、かけてあげましょうか?聞いてみますか?」

と声をかけてくださいました。

「どんな曲が聞きたいですか?」

と、言われたので、

昔父がよく聞いていたドボルザークの”新世界”が聞きたいと言うと、

それは無かったらしく、

「3曲! バイオリンと、歌声、ピアノをかけましょう」と、言って下さいました。

私が店頭で見ていたものではなく、奥にあるもっと大きな蓄音機で聞かせてくださいました。

気がついて見渡せば結構たくさんの大小さまざまの蓄音機が置いてありました。

レコードも年数が経っているらしく、丁寧に扱われています。

私の知っているレコードと違い

持ち重りのするレコード!

最初のバイオリン曲、聞いたことのある曲なのに題名が思い出されませんでした。

後からある方に「こんな曲を聴いたのだけれど」とハミングで口ずさんだら、

「それはメンデルスゾーンの協奏曲」と教えてもらえました。

私は蓄音機から流れ出るやわらかい音質に魅了されました。

「懐かしい・・・」そんな感じを受けました。

少女の頃、お友達の家に遊びに伺って

古いけれど立派なおうちで

応接間に蓄音機がおいてありました

お父様がいらっしゃったから、たぶん日曜日だったのでしょう?

その応接間においてある蓄音機から流れてくる音色を

応接間の椅子に深々と座り

目を閉じながら聞いていらっしゃった

あれは誰のおうちだったっけ・・・?

次は女性の歌声。イタリア語のような気がしたのですが(・・?

店のご主人が「声は竹の針がいいんですよ」と、わざわざ竹の針に交換してかけてくださいました。

素晴らしい歌声でうっとりしました。

まるで映画『ディーバ』に出てくる歌声のようでした。

最後はまた金属針に変えてピアノ曲”子犬のワルツ”(このレコードはかなり雑音が入っていて聞きづらい感じもありましたが)

やはり蓄音機特有のやわらかさがあり、それぞれの曲をとても楽しめました。

「蓄音機の針って、今でも売っているんですか?」と聞くと

「もちろん!英国では製造だってしていますよ」と言われました。

たまたま下北沢に行って、そのお店を覗き、しばし優雅なひと時を過ごせてささやかな幸せを感じました。

ささやかな幸せってどこにころがっているかわかりませんね(笑)

ちょっとお散歩をしたり、日常の家事の中にだったり・・・

ちょっとそんなことを感じて帰ってきたのでした。

メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲!

それ以来私はこの曲が特別好きになりました。

私の中の屈託はもうかすかな名残だけになっていました。。。




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2001/5