2000.02.19から

歌の伴奏をする者にとって見やすい、弾きやすい楽譜とは何か?
その1として、まず楽譜の書き方以前・以後のお願いしたい事柄を並べてみました。
ゆくゆくは、その2として楽譜の書き方について述べる予定です。


まず、お名前を

 楽譜の曲名の真上に氏・名を書いて下さい。複数の人が出演する場合、紛れることもあります。同姓の方もいらっしゃいます。
 楽譜の下の方などに書かれていると、最初にパッと目がいきませんし、楽譜の裏にいくら大きく書かれていても、ピアニストは開いた面しか見ていません。

キーをはっきりと

 スタンダードな曲の場合なら、楽譜と違うキーでも、大抵のピアニストは弾けますし、学習中でキーが最終決定してない事も多いでしょう。
 ですが、今日、今から何のキーで弾けばよいのかをはっきりと記して下さい。
必ずしも「A」とか「Cm」のように書かなくても、『この歌い出しの「ミ」を「ソ」に』のような指示でも構わないのです。「この曲」が何のキーであるか、の判断は、実は難しいです。下手な指示を書かれるより、実際に声を出して「このぐらい」と伝えていただく方が良かったりします。
 また、キー変更の指示がたくさん書いてあったりします。もちろんその場で確認はしますけど、できれば事前に、どれか一つにはっきりと大きな○でも付けて頂くと助かります。
 また、楽譜のままのキーで良い場合も「Abのまま」あるいは「そのまま」と記して頂けると、大変安心です。

テンポ(速さ)

 ほとんどの方が気にしてらっしゃらないのですが、テンポを正確に伝えるには、例えば  のようにメトロノームの数字を示して書くしか有りません。これが書かれていない楽譜は、実はどのぐらいのテンポで弾けば良いのかはわかりません。ピアニストが適当に判断しているだけですから、「早かった」とか「遅かった」ということは起こって当たり前。どんなテンポでも構わない、という人は少ないはずです。適当で良い場合でも、例えば♪=75〜85などと書けるはずです。
 僕は BOSSという楽器会社のDB-12(Dr.Beat)という電子メトロノームを愛用していますが、これはテンポが測れるので重宝します。
 よく「モデラートModerato」などの表示が楽譜に書かれてありますが、これは「中ぐらいの速さ」といった極めてあいまいな意味ですので、あまり役に立ちません。(他にAllegro,Largoなど、あるいは英語で Slow,Fastなども同様)

構成

 時々楽譜に書かれているくり返しの回数や間奏の有る無しと、実際の歌の寸法が違う人がいます。市販されている楽譜が、必ずしもよく歌われている寸法で書かれているとは限りません。(例えばサントワマミー、バラ色の人生など)
 ましてや、どこぞでもらってきた手書きのコピー、あるいは最近はやりのコンピュータで作った楽譜のコピーなど、元々持ってらっしゃった方の都合で大幅に変更がなされていたり、たまに書き間違っていたりします。
 今一度よく確認して下さい。分からなければ歌詞カードに「ここで間奏」などと書いて、楽譜に添えて下さっても良いのです。

コードネーム

 ご提出下さる楽譜にコードネームがついているかどうか、今一度ご確認下さい。
コードネームとは、五線紙の段の上に書かれている(例えばG7、Dm7などの)アルファベットと数字を組み合わせた記号です。
 これがついていないとポピュラー系のピアニストは弾けません。極端に言うと、コードネーム以外は無くても構わない。市販の楽譜でも、シャンソンアルバムなど曲によってはコードがついていないものがあり、注意が必要です。

セロテープ

 楽譜が何枚にもわたる場合、たいていセロテープでつないでいらっしゃいますが、このセロテープ、なかなかやっかいです。
 まず、折りぐせがつく。見づらいので手でしごいている内に、紙がぼろぼろになってくる。数年保存していると、はらり、と、とれてしまう。そのくせ糊だけ残ってべたべたひっつく、など、良いことが一つもありません。
 いわゆるメンディングテープをお使いになる方もいるが、これはもっと始末が悪く、力を加えるとすぐに裂けてしまいます。
 そこで、僕が諸先輩方の楽譜を観察している内に発見したのが、マスキングテープです。
 これは主に塗装用に使われるテープで、日曜大工のお店なんかに置いてあります。和紙で出来ていて手でちぎり易いが、折り曲げには強く、折り癖がつくこともありません。
 セロテープに比べるとやぶけやすいですが、裏まで折り返して貼っておけば大丈夫。

コピー

 繰り返しのスタート・終了その他、楽譜を読み進めるために大変重要な記号は、五線紙の端に記されていることがしばしばあります。一方、大判の本(例えばシャンソンコレクション)や五線紙の用紙は、コピー機で使用するA4(1ページ分。見開き2ページならA3)サイズの紙より少しだけ大きいものが多い。何も考えずにコピーを取ると、この重要な端の部分が切れてしまいがちです。「だいたい入ったからまあいいか」というわけにはいきません。

大きさ・厚さ

 大きいものは縮小し、小さいものは拡大してA4(1ページ分。見開き2ページならA3)サイズにそろえていただきたいです。また曲にもよりますが、できるだけ4ページまでにまとめていただけると助かります。5ページ以上になるとピアノの譜面立てからはみ出します。
 やや厚い紙でできているに越したことはないのですが、普通紙で結構です。たくさんの楽譜を持ち歩く方の場合、重さの差がばかになりませんし、画用紙やらボール紙その他の台紙に貼りつけてくる方がいらっしゃいますが、かさばるのでたくさんの楽譜を譜面立てに乗せなければならない時など、かえって迷惑します。
 僕自身はいろいろ試行錯誤の末、印刷所に専用の用紙を注文していますが、せっかくそれを渡しても、お家に大事に保存して実際の演奏時にはコピーを持ってこられたりするので....。

(横に)折らない。綴じたらだめ

 1ページより小さく折らないで頂きたい。特に、横折りにされると、譜面立てにのせた時おじぎしてしまうのです。
 ごくまれに、パンフレットのように綴じてこられたり、本のまま出される方がいますが、一人で両手を使って弾いているのですから、めくることができません。必ず見開きになるようにお願いします。

書き込みを消さないで

 私は、訂正や要注意事項を楽譜に鉛筆で書き込むことがあります。これを消してしまわれたり、別のコピーを持ってこられたりすると、再び同じ曲を伴奏する時に元の木阿弥になってしまいます。できるだけ消さないで下さい。吉田 幸生専用にコピーを用意して頂くのも良い方法かもしれません(「吉田の書き込みはきたない!見にくい!邪魔!」と他のピアニストの方々から定評があるので...。)。

以上